ガーナ人男性への生活保護の支給認めない判決 千葉地裁

 

 

 

 

千葉市に住むガーナ人の男性が、働くことができず収入がないのに生活保護の申請が却下されたのは不当だなどと訴えた裁判で、千葉地方裁判所は、「生活保護法の対象に外国人は含まれておらず、自治体の裁量で行う保護に準じた支給についてもすべての外国人が対象となるものではない」として訴えを退ける判決を言い渡しました。

 



千葉市に住むガーナ人のシアウ・ジョンソン・クワクさん(33)は就労などのため来日した3年後の2018年に体調を崩して働けなくなり、在留資格が病気の治療を受けるためとして就労できない条件に切りかわったため、収入はなく支援者からの援助で生計を立てています。

 


男性は、3年前千葉市に生活保護を申請しましたが外国人であることなどを理由として却下され、この決定は不当だとして訴えを起こしました。

 


16日の判決で、千葉地方裁判所の岡山忠広裁判長は、「生活保護法が保護の対象とする『国民』は日本国民であり、外国人は含まれないものと解釈できる」と指摘しました。


その上で、「生活が困窮する外国人については永住者などの資格を持つ人を対象に自治体の裁量で生活保護に準じた支給を行うと定められているが、原告は永住者などに該当しない。生活保護に準じた支給も予算措置を伴うものであり、すべての外国人が対象となるものではなく、自治体の承諾なくして成立しない」として男性の訴えを退けました。

 



判決のあとの記者会見で原告側の及川智志弁護士は、「外国人とともに生きていく社会を作るきっかけになる判決になるのではと期待していたが、実際には今までのしがらみにとらわれた判決で、見るべきところはない。未来に向けた希望のある判決、社会を変えていく判決を求め、訴えを続けていきたい」と話し、控訴する方針を示しました。


また、原告のジョンソンさんは、「この裁判は、自分だけではなく、同じように病気に悩むほかの外国人のためにもなる裁判だ。絶対に諦めません」と話しました。

 



判決について、被告の千葉市は「市の主張が認められたものと理解しております」とコメントしています。

 



生活が困窮した外国人への保護費の支給については、厚生労働省は1954年に出された旧厚生省の通達に基づき、「永住者」や「定住者」の資格を持つ人など就労に制限のない外国人や難民認定された人などを対象に人道上の観点から自治体の裁量で生活保護に準ずる「行政措置」を行うとしています。

 

 


外国人が法的に生活保護の対象となるかどうかこれまでも裁判が行われ、2014年に最高裁判所は「法律が保護の対象とする『国民』に外国人は含まれない」として「自治体の裁量による事実上の保護の対象にとどまる」という判断を示しています。