【LGBT】女子大5校、「性自認は女性」に入学資格、なりすまし懸念も | birdland






    戸籍上は男性でも女性だと自認しているトランスジェンダー学生に関して、全国の4年制女子大のうち少なくとも5校が入学資格を認めていることが3日、産経新聞が行ったアンケートなどで分かった。

    今後入学を認める方針を固めた女子大が3校に上ることも判明。

    トランスジェンダーを含む性的少数者に対する社会の変化の一端を示す一方で、在学生や保護者の理解に加え、「なりすまし」の見極めの難しさを懸念する声も出ている。


    共学化や募集停止を表明したケースを除く全国計69の女子大に7月末、アンケートへの協力を依頼。40校から回答があり、6校からは回答を見送りたいとする意思表示があった。残りの23校は回答がなかった。


    回答があった40校のうち、すでにトランスジェンダー学生の入学資格を認めているとしたのは、国立のお茶の水女子大(東京都文京区)と奈良女子大(奈良市)、私立では宮城学院女子大(仙台市)、千里金蘭大(大阪府吹田市)の4校。お茶の水大と奈良女子大は令和2年度から、宮城学院女子大は3年度から認めた。千里金蘭大は「(認めることに)切り替えた明確なタイミングはない」と回答した。




     実際の入学実績について千里金蘭大は「ない」と回答。ほかの3校は実績の有無を含めて「公表していない」とした。


    回答のなかったノートルダム清心女子大(岡山市)が5年度からの受け入れを表明しており、アンケートと合わせるとトランスジェンダー学生の受け入れを認めている女子大は全国で少なくとも5校となる。

    また、日本女子大(東京都文京区)は6年度から入学資格を認めることを決め、広島女学院大(広島市)が8年度から認める方向で調整中と回答。回答を見送った津田塾大(東京都小平市)は7年度から認める方針をすでに公表している。12校は「認めていない」、14校は現在は認めていないが「今後の対応を検討中」と回答。残り8校は「その他」としたが、いずれも基本的には認めていないとみられる。


    一方、最高裁大法廷は10月25日、性同一性障害の人が戸籍上の性別を変更する際に生殖能力をなくす手術を必要とする性同一性障害特例法の規定の合憲性が争われた家事審判の特別抗告審で、規定を「違憲、無効」とする決定を出した。国は規定を見直すことになるが、その過程での議論が女子大の考え方に一定の影響を与える可能性もある。






    トランス女性の女子大入学、「なりすまし見分けられる?」疑問も…欠かせぬ学生らの理解






     戸籍上は男性でも女性だと自認するトランスジェンダー学生の入学資格を認めている女子大が全国に5校あることが産経新聞のアンケートなどで明らかになった。
     「多様性」を重視し、時代に合わせた女子大の在り方を模索している事情が浮かぶ。ただ、在学生や保護者らの理解は必須で、検討に時間を要するケースも少なくない。受け入れを認めない女子大の中には、若年での性自認に不確定な要素があることや、長年培ってきた「女子単学」の必要性を指摘する声もあった。(大泉晋之助)



    入学資格を認めているお茶の水女子大はアンケートで、「『学ぶ意欲のあるすべての女性にとって、真摯(しんし)な夢の実現の場として存在する』という本学のミッションに基づき、判断した」と説明。宮城学院女子大は「流動的な意味も含む女性すべてを守り、それぞれが自分らしく生きられるよう背中を押すことが、女子大学の使命のひとつであると考えている」と意義を強調する。

    各女子大とも、受け入れ決定前に在学生や保護者の意見を聞くなど、時間をかけて決断に至ったという。



    お茶の水女子大、奈良女子大、千里金蘭大の3校はそれぞれ、事前に希望者と面談を行ったり、医師の診断書などの提出を求めたりするなど、何らかの形で大学として性自認が女性であることを確認した上で受験資格を認めている。

    宮城学院女子大は「他の入学者と同様に、本人が合理的配慮などを望まない限りは申告を義務としない」とした。ガイドラインには「なりすまし」が発覚した場合は退学処分にすると明記。一方、在学途中で性自認が変わる「揺らぎ」が起き、性自認が男性に戻ったとしても、それを理由に退学させないとしている。



    また、入学資格を認めた各大学は、性の多様性に関する教職員や学生向けの研修を随時実施。学内に、男女の区別なく使用が可能なトイレや更衣室を設置するなどの対応をしている。


    一方で、対応を決めあぐねているケースがある。中部地方の女子大は検討中とし、「ジェンダー平等社会への取組として受け入れは大きな課題と考えている。一方、現在の在校生やその保護者の考え方・意向確認も不可欠」と回答した。


    入学資格を認めていないとした女子大の中には、

    「人間の精神が成長とともに変化することについて、この問題(性自認)についてのみ高校生段階で確定されていると言い切れるものなのか」(関東地方)との問題提起や、

    「女子単学の高等教育の有為性を貫いてきている」(近畿地方)といった考え方を明記したケースがあった。



    「女子大離れ」も

    近年、女性の進路の多様化などで「女子大離れ」が進んでいるとの指摘は多い。今年に入り恵泉女学園大(東京都多摩市)、神戸海星女子学院大(神戸市)が相次いで募集停止を発表。学習院女子大(東京都新宿区)が学習院大との統合を決めるなど、経営環境の厳しさが改めて浮き彫りとなっている。

    戦前の女性向けの高等教育機関だった女子専門学校がルーツとなり、戦後、多くの女子大が誕生。女性の高等教育に寄与してきた。ただ、学部が人文系や家政系に偏りがちなことなど、徐々に時代遅れとなってきた側面は否めない。


    予備校関係者などによると、現在多くの女子大が定員割れを起こしているとみられるという。女性の進路や働き方の変化に対応し切れていない現状が浮かぶ。

    今回のアンケートでも女子大を取り巻く環境の厳しさをうかがわせる回答があった。近畿地方の女子大はトランスジェンダーに関して検討に至っていないとした上で、その理由を「女子大としてさまざまな課題を抱えている」と指摘した。


    新たな動きに賛否

    トランスジェンダー女性(戸籍上は男性、性自認は女性)に、女子大への入学資格を認めることに現状、どんな問題点があるのか。

    女性の権利保護を目指す民間団体「女性スペースを守る会」のメンバーは、女子大の役割として「男性からの性犯罪やいじめ被害などにトラウマを持つ女性の高等教育の受け皿にもなっている」と指摘。性別適合手術をしていない「トランス女性」を受け入れる女子大に対し、「そうした女性への配慮はあるのか」と疑問を呈する。


     同会事務局の滝本太郎弁護士は、そもそも「トランス女性」の定義が確定していないとして、「受験資格を事前審査する教授陣らがトランス女性の『なりすまし』や『性自認の揺らぎのある人』を見分けられるのだろうか」とみる。


     時代の要請の中で、女子高・男子高から共学化を進めた自治体もある。滝本氏は「女子大も、性の多様性を反映するために共学化するなら理解できる。だが、トランス女性に限定して認めるのは混乱を起こすだけで、生き残り戦略にも役立つはずがない」としている。