ダイヤモンド半導体、世界初の電子回路開発 佐賀大学・嘉数誠教授 長時間動作可能に、実用化早める成果

 

https://www.saga-s.co.jp/articles/-/1021966

 

2023/04/17 20:38

 

 

 

会見でダイヤモンドのパワー半導体の電子回路を手にする嘉数誠教授=佐賀市の佐賀大本庄キャンパス(撮影・中島克彦)

 

 

ダイヤモンドのパワー半導体を使った電子回路

 

 

 

 佐賀大学理工学部の嘉数(かすう)誠教授(62)=半導体工学=は17日、ダイヤモンドのパワー半導体を使い、世界で初めて電子回路を開発したと発表した。

 

 半導体の基本動作であるオンとオフを高速で繰り返すスイッチングができ、190時間の長時間連続動作でも劣化が見られなかった。実用化を早める成果という。

 

 

 ダイヤモンド半導体は性能や耐久性に優れ、「究極の半導体」と呼ばれている。佐賀大は、作製したパワー半導体がダイヤモンド半導体としては世界最高の出力電力を記録したことなど、関連の研究成果を相次ぎ公表してきた。

 

 

 半導体はスイッチングで、出力電力をコントロールしている。今回開発した電子回路は、1億分の1秒を切る時間で切り替えができた。

 

 他の半導体と比べても高速の動作で、オンとオフを切り替える際に生じるエネルギー損失が低く、効率が高いことを実証した。オンの状況を続けた長時間連続動作でも劣化がないことを示した。

 

 

 佐賀大がこれまでダイヤモンド半導体で研究成果を出す一方、他の研究機関から「長時間動かすと劣化が激しく、実用化は容易ではない」とする論文が出ていた。昨年12月、嘉数教授が米マサチューセッツ工科大(MIT)を訪ねた際、同様の趣旨で研究を断念したと告げられたという。

 

 

 今回の成果はこうした指摘に応える内容で、嘉数教授は「ダイヤモンドと金属の相性の悪さを乗り越える技術など、佐賀大オリジナルの技術の積み重ねで開発できた」と説明した。

 

 「メーカーはこうした電子回路で動かし、試験する。実用化に向けた研究開発のスピードを速められる」と社会的意義を語った。

 

 

 米国電気電子学会の学術論文誌にオンライン上で論文が掲載された。

 

 

(宮﨑勝)