エリザベス女王の国葬で韓国メディアが垂れ流した合成画像の衝撃

尹錫悦大統領にほほえむ天皇陛下の映像も、実際にそんな場面はない

 

https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/71927

 

2022.9.21(水)羽田 真代

 

 

 

エリザベス女王の国葬で弔問者芳名録にサインする尹錫悦大統領(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

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(羽田 真代:在韓ビジネスライター)

 

 

 

 2022年9月19日(日本時間20日)、英女王エリザベス2世の国葬が執り行われた。ロンドン中心部にあるウェストミンスター寺院には、各国から要人など2000人以上が参列。参列者たちは70年間英国を率いた偉大な女王に別れを告げた。

 日本からは天皇皇后両陛下が参列された。

 韓国からは尹錫悦(ユン・ソンニョル)韓国大統領と、その妻である金建希(キム・ゴンヒ)氏が参列した。

 日本の報道では岸田首相ではなく天皇陛下が参列されたこともあってか、「各国の要人たちと外交を」など、海外の要人との積極的な交流を促す報道はほとんどなかった。

 

 

 一方で、韓国の報道は尹大統領が英国に発つ前から「歴代級の弔問外交だ」「先取り、経済外交の展望は?」「日本からはナルヒト日王夫婦が出席する」と、要人らとの交流を期待する声が多かった。

 韓国国民は保守・左派にかかわらず、自国民が海外で名を高めることを喜ぶ。だから、支持率の低い尹大統領であっても、世界の要人らと肩を並べることを国民は歓迎している雰囲気だった。

 国葬の席順が分かった時も、「バイデンと並んで14列目…尹大統領、英女王の葬儀“弔問外交”(聯合ニュース)」と、メディアは伝えた。米国の大統領と同等扱いなら、まあ合格といったところだろう。

 余談だが、ポーランド・ドゥダ大統領は13列目、仏・マクロン夫妻は12列目、天皇皇后両陛下は6列目、そして天皇両陛下の隣にはマレーシア・アブドラ国王が着席していたと日韓両メディアの記事では報じられていた。写真を見る限り、天皇陛下の前にはヨルダン・アブドゥッラー2世も写っている。

 韓国メディアによるエリザベス2世の国葬記事を見ていて思ったが、聯合ニュースの報道内容がひどかった。どうひどいのかと言うと、主要人物と尹大統領が一緒に写っているかのような合成写真・映像を掲載しているのだ。

 

 

 

  天皇陛下が笑顔で尹大統領に話しかける?

 

 筆者が気になった映像は二つある。

 

 まず一つ目。天皇陛下と尹大統領が並んで立っているかのような写真を作ったことだ。

 

聯合ニュースのYouTubeチャンネル冒頭場面の画像キャプチャ。天皇陛下が尹大統領に話しかけているように見える(出所:https://www.youtube.com/watch?v=3yDMAGR3I9s、以下同)

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実際の映像を見ると、尹錫悦大統領は金建希夫人と歩いているだけ(夫人は大統領の影で見えない)

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一方、天皇陛下がほほえみかけている相手は二人の女性である

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 元写真の天皇陛下の左隣には女性が2名、尹大統領の右隣には金夫人が写っていた。しかし、聯合ニュースはその女性たちを削除し、天皇陛下と尹大統領が並んで立っている写真を作成。正面を向いた尹大統領に、天皇陛下が笑顔で話しかけられているかのような写真。初めて見た時は衝撃だった。


 二つ目は、チャールズ3世と尹大統領が対面で会話しているかのように作った映像だ。

 

 

 

こちらはチャールズ3世と尹大統領が対面出会っているように加工した画像。背景が違うのでさすがに分かるが……

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 チャールズ3世と尹大統領がそれぞれ別の人物と会話している映像を聯合ニュースは編集して、あたかも二人が向かい合って会話しているように作り上げた。

 

 実際の写真はチャールズ3世がカナダ・トルドー首相と、尹大統領は在韓英国大使代理と撮られたものだった。尹大統領の方は、撮影地が英国ですらなかった。

 

 

 

  天皇陛下を「日王」と呼ぶ無礼

 

 聯合ニュースが合成した映像は、在韓英国大使代理の頭部がチラリと写り込んでいるから、注意深く見れば編集したものだと誰でも分かる。

 

 だが、天皇陛下との写真はどうだろう。合成写真が使用されたのは、インターネット上に配信する動画のサムネイルだけのようだ。動画内には編集前の本当の映像しか出てこない。

 ニュースでは、ウェストミンスター寺院で尹大統領が“日王と遭遇”したことが伝えられているから、合成写真のような場面が本当にあったのだと誤解する人が少なからずいるだろう。写真の加工で許されるレベルを超えているように思う。

 聯合ニュースの名誉のために一つ弁明しておくと、尹大統領はチャールズ3世に会えなかったわけではない。バッキンガム宮殿で尹夫妻共にチャールズ3世と握手を交わしている。しかし、その様子を写した写真は尹夫妻の顔がはっきりと見えていなかった。だから、聯合ニュースは合成写真を作成したのではないだろうか。

 

 

 筆者が気になったことは合成写真以外にもある。

 これは聯合ニュースに限った話ではないが、韓国メディアは天皇陛下のことを「日王」「ナルヒト日王」と呼ぶ。メディアがわざと格下げしてこのように呼ぶのはいかがなものだろう。

 ついでに述べておくと、大韓民国大統領秘書室に所属する金恩慧(キム・ウンヘ)広報首席秘書官も「ナルヒト日王」と、天皇陛下のことを呼んでいた。

 尹大統領は日本との関係改善を切望しているようだが、日本に対する配慮に欠ける。こういった小さな配慮を積み重ねていくことが日本人の心を掴むことにつながるということを、彼は分かっていないようだ。

 

 

 

  以前にもやらかしている聯合ニュース

 

 聯合ニュースの合成写真問題は過去にもあった。

 

 2013年5月、当時の朴槿恵(パク・クネ)大統領と、米国・オバマ大統領が握手を交わしているような写真。これは全く別の場所で、異なる相手と握手した写真を同社が繋ぎ合わせていた(朴大統領は当時の国連事務総長である潘基文(パン・ギムン)氏と、オバマ大統領はホワイトハウスで誰かと握手)。

 二人の背景は全く違うし、写真をよく見ると手が4つもある。この写真は、韓国メディアだけでなく海外メディアも皮肉った。

 米国メディア「The Atlantic Wire」は、「オバマ“握手” 韓国のフォトショップの実力は北朝鮮より劣っていることを証明」と書いたくらいだ。

 

 

 この時の写真と比較すれば、今回の合成写真は上出来だろう。聯合ニュースの加工技術はこの10年でかなり向上したようだ。

 同社は国家の基幹通信会社として、政府から年350億ウォン(約36億円)を超える巨額の血税を支援金として受けている。それにもかかわらず、写真を捏造して報道していることが明らかになったのだから、同社に対する批判の声が国民から上がるのも当然だ。

 日本でも時々、捏造・歪曲報道が問題視されることがある。多くの人が目にするメディアのニュース。視聴率や購読者数稼ぎのために事実を捻じ曲げるようなことがあってはならない。血税を支援金として受けているならなおさらだ。今回、聯合ニュースは支援者を裏切る行為をとったと批判せざるを得ない。