パラリンピック “おじぎ”のマラソン選手「東京に喜びを」

 

 

 

 

 

 

東京パラリンピック最終日の5日に行われた男子マラソンで、1人の選手がレース中に突然立ち止まって周りに頭を下げました。

ゴールへと急ぐ足を止めたのは、感謝の気持ちを少しでも示したいという思いからでした。

 

 

ハーバード・バートゥンハマル選手(45)は右ひじから先がなく、北大西洋にあるデンマークの自治領、フェロー諸島から今大会ただ1人の代表として、東京都心で行われた男子マラソンの腕に障害があるクラスに出場しました。

もともとはトライアスロンの選手でマラソンの経験は浅く、先頭から大きく離されるレース展開となりましたが、沿道の人たちからの声援に手を挙げて応えたり、笑顔を見せたりしていました。

そして、15キロ付近の浅草の雷門前を曲がるときに突然立ち止まり、沿道に向かって頭を深々と下げると、どよめきと大きな拍手が起きました。

バートゥンハマル選手はこのあとも声援に応えながら完走を果たし、自己ベストを更新する2時間58分27秒のタイムで10位でした。

 

 

 

レース中の「おじぎ」について、バートゥンハマル選手はみずからのツイッターに

「東京の人たちに少しでも喜びをもたらすことができたなら、うれしいです」

と書き込み、開催地への感謝の気持ちを示すためだったと明らかにしました。

バートゥンハマル選手は夜の閉会式でもフェロー諸島の旗を振りながらくるくる回ったり、カメラに向かって親指を立てたりするなど、大会を最後まで楽しんでいる様子でした。

今回のパラリンピックは新型コロナウイルスの感染拡大が続く難しい状況での開催となりましたが、競技中に足を止めてまで日本へのメッセージを送ったバートゥンハマル選手の姿は、大会を象徴するシーンの1つとして多くの人の心に刻まれそうです。