「積水にない技術教える」中国企業、情報漏洩の元社員に

 
産経WEST
 
 
 
 
 
 大手化学メーカー「積水化学工業」(大阪市北区)のスマートフォン関連技術が中国企業に漏洩(ろうえい)した事件で、大阪府警に不正競争防止法違反(営業秘密侵害)容疑で書類送検された同市淀川区の男性元社員(45)=懲戒解雇=が、「中国企業から積水化学が持っていない技術情報と交換すると持ちかけられた」という趣旨の供述をしていることが14日、捜査関係者への取材で分かった。
 
 実際には中国企業から情報提供はなく、積水化学の情報を一方的に取られる形となった。
 
 
 
 関係者によると、中国企業は、広東省に本社を置く通信機器部品メーカー「潮州三環グループ」。元社員の書類送検容疑は平成30年8月上旬~昨年1月下旬、積水化学の営業秘密で、スマートフォンのタッチパネルなどに使われる電子材料「導電性微粒子」の製造工程に関する電子ファイルや画像などの技術情報を、潮社の社員に2回にわたってメールで送るなどしたとしている。
 
 元社員は当時、技術開発部門に所属し、営業秘密を管理する義務があった。潮社の社員から技術情報の交換という名目で営業秘密を教えるよう求められたとみられ、これまでの調べに、「積水化学が持っていない技術情報を交換で教えるといわれ、いけないこととは分かっていたが、社内での研究者としての地位が高まると思った」などと供述しているという。
 
 ただ、潮社側からの情報提供はなく、社内での待遇に不満を感じていた元社員の心理につけこまれ、一方的に情報をだまし取られる形となった。
 
 潮社の社員は、ビジネスに特化したSNS「LinkedIn(リンクトイン)」を通じて元社員に接触。当初は積水化学の取引先で、中国にある別の電気製品関連会社の関係者を装って連絡を取り始め、中国に招いた後に潮社の社員であることを明かしていた。
 
 リンクトインは世界で6億件を超える登録があり、利用者は会社名や役職、学歴などを公開して仕事に有益な情報を交換。元社員も登録し、自身が導電性微粒子の研究に携わっていることを明らかにしていた。
 
 積水化学は昭和22年に設立され、東証1部上場。住宅関連とともに電子工学関連が事業の柱で、導電性微粒子の製造でも高い技術を有しており、世界トップクラスのシェアを誇る。