労働基準監督署から呼び出しの連絡があった。

 

複数の従業員が会社の問題点を指摘していると会社に対しての是正勧告

 

スタッフとの話し合いの場を持つがオレに対する不信感は到底埋められなかった。

 

スタッフの意識が離れていけば会社の状態もより厳しくなっていく。

 

苦しんでいる最中に内容証明郵便が届いた。

 

従業員からの団体交渉の依頼だった。

サポートには一人でも入れる労働組合が付いているようだった。

 

「残業代の未払い賃金を払え!」

 

未払い賃金はないと自覚していたので驚く。

事業をある程度任せており給与は売上連動型にしていたので残業は全く管理していなかった。

 

団体交渉、簡易裁判、本裁判

 

何人かの弁護士に相談したが「絶対に勝てない」「あなたが悪い」と

 

相手は弁護士と労働組合が数名付いていたけどオレはいつもひとりでその場に立ち続けた。

金銭的に余裕がないことと自分の代弁をする人はいないことを理解していた。

 

弁護士、労働組合、申し立てたスタッフからの罵声、嘲笑を浴び続ける。

 

信頼していたと勝手に思っていたスタッフの厳しい言葉の数々に胸が痛む。

精神的にボロボロだった。

地獄だと思った。

 

だけどまだ会社は存続していて自分を未だ信頼して働いてくれているスタッフもたくさんいる。

 

なんとかしなくてはという思いともう無理だという思いが錯綜する。

 

そして初めて妻に現状を伝えた。

それまで家族には何も話していなかった。

 

会社が大変な状態であること、従業員から訴えられていること、オレ自身も相当に追い詰められていることを

 

近くでオレの様子を見ていてずっと心配していたと

 

「裁判には負けるけどそれを払うお金もないし払う意思もない」ことを伝えた。

 

「払わなかったらどうなるの?」

 

「弁護士が言うには懲役6か月という例があるって」

 

「懲役行ったらいいんじゃないの アンタらしいよ!」

 

「え!!!」

 

そこでふたりで大笑いして我に返ったような気がした。

 

そしてオレは決めた。

会社を自らの手でやめると

 

労働債権は申し立てられているけど幸いにその他には未払い賃金はない。

業者への支払いの滞りもない。

 

銀行融資はたっぷり残っていたけどそれはオレが背負うしかない。

 

会社の良い部分は本人が望めば信頼してくれたスタッフに譲ろうと思った。

 

そしてオレは模索しながら会社をやめる道を歩み出した。

 

しかしそれも修羅の道だった。

 

でも心は晴れ晴れとしていたんだ。

 

「やっと自由になれる」と