本日のお題は先日書いた代用食の続きである。今回は実際の様々な代用食について、考えてみたいと思

う。

皆さんは代用食品(代用食)というと何を思い浮かべるだろうか。高齢の方なら、戦時中の芋や南京だろ

うか。がんもどきという方もいらっしゃると思う。その食品を食べることができないという状況には、そ

の食品が手に入らない、あるいは、高価だからというだけでなく、すぐそこにあるのだけれど、事情によ

って食べられない、食べてはいけないといった場合もある。がんもどきに代表される精進料理は、洗練を

極めた代用食であろう。あるいは、前者は消極的な代用食であり、後者は積極的な代用食であるとも言え

る。代用食品というとなにか後ろめたい印象があるが、必ずしもそればかりではない。

 筆者の場合、代用食品と聞いてまず最初に思い浮かぶのは安価な寿司屋で使っているネタの数々であ

る。最初は有名なイクラから。人造イクラが広く出回っているのは周知の事実である。水や湯につけても

白く濁らないとか、その一粒をつまんでテーブルの上に落とすと跳ねるのが人造で、つぶれるのが天然で

あるとかいう。と言っても、いままで意識したことはなかった。いい機会と思ったので、実際に試験して

みることにした。均一値段で提供している安価な回転寿司屋でイクラをオーダーし、湯に浸してみた。一

粒浸してみるが、透明のままである。すべて人造にしてしまうと道義上問題があるので、天然と人造を混

ぜているという情報もある。たまたま人造に当たっだけかとも思い、もう幾粒か試してみた。結果はすべ

て濁らなかった。あたりまえのことだが、やはり人造イクラは実際に使われていた。予想していたことと

は言え、少々ショックを受けてしまった。ただしこの人造イクラ。悪いことばかりではないようだ。例え

ば、時間が経過しても皮に皺がよらない。これは店側からしてみると、大きな利点であろう。そしてその

素材は、植物油と海草の成分からなる。本物のイクラは多量に摂取すると、どうしてもコレステロースが

気にかかるが、人口のイクラならその心配もいらない。こう考えて行くといいことづくめである。これか

らは回転寿司に行っても、胸を張ってイクラをオーダーしようではないか。

 お次のネタは鮪である。鮪の代用と言うと驚かれる方も多いと思うが、一昔前はアカマンボウという魚

がマグロの代用として出されていたこともあるようだ。現在はどうか調べてみたのだが、そのような事実

は確認できなかった。アカマンボウじたいが希少な魚で、鮪は養殖の技術が進ん為か、アカマンボウを代

用にする方がコストがかかってしまうのではないだろうか。

 次はエンガワ。通常寿司の世界ではエンガワと言えば平目を指す訳だが、ご存知のとおり、平目

は高級魚であり、縁側は希少価値も手伝い高価である。ということで、回転寿司のエンガワは当然平目の

縁側ではない。鰈やオヒョウと言われるカレイ目カレイ科の魚が使われることが多い。特にオヒョウはカ

レイ科の中では最大に成長する魚で、1メートルを優に超えると言われる。両方の縁側で何人前のエンガ

ワが採れるのであろうか。大変に便利な魚である。店側から言うと、エンガワとだけ言っているのである

からして、嘘をついている訳ではない。うまくしたものだと思う。

 キャビアはどうだろうか。最近はチョウザメの養殖もさかんなようだが、なかなか飼育はむずかしいら

しく、歩留まりは高くないとのこと。ということで、人造キャビアの登場である。いくらと同じく、海草

の成分からできており、黒い色はイカ墨から付ける。又、畑のキャビアとよばれるトンブリから作るもの

もあるようだ。こちらも、イカ墨で黒く色付けする。トンブリはキャビアと比べると、歯ごたえがありす

ぎるような気がするのだが、どのようにして克復しているのだろうか。ちなみに、チョウザメはワシント

ン条約にて漁獲指定されてしまっている。養殖が軌道に乗らなければ、今後ますます本物のキャビアを食

べるのは難しくなってしまうかもしれない。

 魚ばかりではない。肉にだって、代用食品は存在している。有名なのは居酒屋等で提供している、サイ

コロステーキであろう。内臓の周囲にある肉を細かく切り取り、卵白等の原料で繋ぎサイコロ状に成型し

て提供するというものだ。この部位は焼肉屋に行くと、ハラミとかサガリとかとして売られている部位で

ある。これは厳密に言うと代用食品とは言えないかもしれない。ステーキという料理を改めて調べてみた

ら、厚めに切った素材を焼く料理となっているので、一枚肉にこだわることはないのかもしれない。提供

する側も、部位を明示している訳ではなく、単に、ステーキとして提供しているのだから、ルール違反と

いう訳ではない。しかし、なんとなくだまされたような気分にはなる。同じ部位の肉なのに、焼肉屋でハ

ラミとして食べるととてもおいしく、幸せになれる。やはり、だましてはいけないというこことか。

 最近見かけなくなったが、豆肉なる食品がある。こちらの方は、正式な代用食品である。大豆タンパク

を固めて水牛のエキスで味付けした肉の代用品である。筆者は若い頃この豆肉をよく食したが、肉と思っ

て食べなければ、十分においしく食べられる。テフロン加工のフライパンの上に乗せ、油を引かずに弱火

ですべての面を満遍なく焼いてゆく。少々時間がかかるが、周りはカリッとして、中は弾力のあるソーセ

ージのような不思議な料理が完成する。仕上げにコショーを引くと完璧である。油分が少なく癖もないの

で、ビールでもワインでもよく合った。しかも、元は大豆である。低カロリーでヘルシーでもある。

 この外にも多くの代用食品は存在している。機会があったら、また書いてみようと思う。