ずいぶんとあちこちで議論されている話題であると思う。私も私なりにこの問題について考えてみたい

と思う。

 まずは一般的なところから。寿司屋でのワインはどうであろうか。寿司屋でワインを飲んでもかまわな

いが、日本酒の方が気分ではないだろうか。雑誌の企画であるが、イタリアの大手ワインハウス、ガイヤ

のオーナーであるアンジェロ・ガイア氏が来日した際に、寿司とワインのマリアージュについてコメント

していたことがある。氏曰く、「繊細な味わいを持った刺身に醤油を付けてしまうと、醤油の風味に刺身

が負けてしまい、せっかくの繊細な味がわからなくなってしまう。」と。ご尤もである。であるからして

最近の寿司屋では、白身の魚などは、すだちや塩で食べさせる店が増えているのであろう。で、このガイ

ヤ氏、何をしたかというと、醤油の皿にガイヤの白ワインを加えたというのである。それにより、刺身の

繊細な味がより引き立ち、ガイヤのワインとのマリアージュも良くなったとコメントしていた。確かにそ

うなのがもしれないし、自社ワインのプロモーションなので仕方ないのかもしれないが、私のような味覚

に保守的な日本人からすると、そこまでしなくてもと思ってしまう。白身には醤油をちょっとだけ付け

て、日本酒を飲めば良いではないかと思ってしまう。

 最近まで知らなかったのが、ジンギスカンに赤ワインである。新しくオープンした店では、大抵赤ワイ

ンが置いてあるのには驚いた。昔からジンギスカンを食べていた私にしてみると、ジンギスカンといえ

ば、なんといってもビールだと思っていた。試しにやってみたら確かに合う。というか、羊の肉に赤ワイ

ンである。合うのはあたりまえであろう。ただ単に、ジンギスカンを良く食べていた北海道や東北で、赤

ワインを飲む習慣があまり一般的ではなかった為、ジンギンカンにはビールという、刷り込みが入ってし

まっているのだろう。このように、純粋に味だけでは語れない場合もある。

 個人的に合わないと思うのは、ワインと納豆である。チーズならどんなに臭くてもワインに合うのに、

同じ臭い発酵食品であっても、納豆はワインとは合わないと思う。納豆に合うワインをご存知の方がいら

したら、教えていただけないだろうか。反対に納豆と日本酒はとても合うと思う。個人的には、濃い口の

日本酒と合わせるのが良いと思う。

 一般的な結論で恐縮だが、こうして考えてみると、やはり産地が同じ物同士の方が

合いやすいということか。食べ物も飲み物も、それぞれが単独で発展してきた訳ではなく、実際に食事を

する中で発展してきた訳で、当然のことながら、地の肴と地の酒という組み合わせが圧倒的に多かったで

あろう。そのなかで、両者の相性も洗練されていった。それを裏付けるよい例が見つかった。

 某最大手フライドチキンチェーン店に、食べ放題メニューを実施している店があるそうだ。それに挑戦

した人のコメントで興味深いものがあった。当初、チキンの脂を流してくれることを期待して、飲み物は

ウーロン茶にしたそうである。しかし、意外とウーロン茶では量を食べることができなかったというので

ある。ところが、飲み物をコーラに変えると、ずいぶんと量を食べられるようになった。この体験をした

人も書いているのであるが、フライドチキンといえば、アメリカ。アメリカといえばコーラなのだ。やは

り、長年人々に愛されてきた組み合わせには、何かの理由があるのである。そうでなければ、自然に淘汰

されるであろう。たまにはめずらしい組み合わせもいいのだが、結局はベーシックに戻るということか。

保守的な私の結論である。