5ヶ月間に渡って夏のオーストリア旅行の記事が続いていますが、年末を迎え、今回は私が今年、ピアノで一番練習した曲について書こうと思います。それは…、

 

 

 

ブルックナー/交響曲第7番第2楽章アダージョ

 

 

 

なんです!!!

 

 

 

ええ~!?フランツさん、それって交響曲なんじゃないんですか?ピアノで弾けるんですか?

 

 

 

はい。それが、弾けるんです!

 

 

 

今年2024年は本ブログで何度も紹介してきたように、オーストリアの偉大な作曲家アントン・ブルックナー(1824-1896)の生誕200周年。GWや夏の旅行でも、ブルックナーゆかりの地を精力的に巡りました。これはブルックナー・イヤーの本当に良き思い出となりました。

 

 

(参考)2024.5.3 クロースターノイブルク&ウィーン観光(ブルックナーゆかりの場所めぐり)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12853465588.html

 

(参考)2024.8.12 ブルックナー交響曲の道ハイキング(アンスフェルデン→ザンクト・フローリアン)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12869368845.html

 

(参考)2024.8.12&13 ザンクト・フローリアン修道院&リンツ観光

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12870099415.html

 

(参考)2024.8.16 アンスフェルデン&ウィーン観光(2つのブルックナー展を巡る旅)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12874545912.html

 

 

 

 

 

これらに加えて、記念すべきブルックナー・イヤーなので、ぜひともブルックナーのピアノ曲を弾いてみたい!と考えたんです。

 

 

 

ところが、ブルックナーには誰もが知っているようなピアノ曲がなく、オルガン曲のピアノへのアレンジも難しそうです。

 

何か良い策はないだろうか?じっくり検討したところ、ブルックナーの交響曲にはピアノ編曲版があるらしく、私はブルックナーの交響曲の中では特に交響曲第7番、中でも第2楽章を愛していますが、その第7番第2楽章のピアノ版があるそうなんです!

 

 

 

 

 

この際、せっかくのブルックナー・イヤーなので、

 

交響曲第7番第2楽章(ピアノ版)をとことん練習しちゃおう!!!

 

 

 

 

 

という企画なんです!

 

ということで、今年はず~っと、この曲を練習していました!オーケストラでも20分くらいかかる第2楽章なので、弾き進めるのはかなり大変で、仕事やプライベートでもいろいろあって忙しく、仕上げるところまでは行きませんでしたが、全12ページ一通り弾けるようにはなりました!

 

 

以下、弾いてみて、私が特に感銘を受けたり、大好きだったりする場面をいくつかご紹介します。

 

 

 

(写真)ブルックナー/交響曲第7番第2楽章(ピアノ版)より第1主題

 

ここは瞑想的な雰囲気の音楽、曲の重要な導入の場面です。注目すべきは、シャープやダブル・シャープ、ナチュラルがちらほら見られること。つまりは、この第1主題の冒頭から、早くも転調している、ということなんです!

 

(なお、私は音大を出ている訳でもなく、楽理を勉強したこともないので、もし的外れな意見だったら、そこはご愛嬌で!笑)

 

オケでこの曲を聴くと、あまりそういうことを実感せずに聴いてしまいます。しかし、今回ピアノ版を弾いてみて、ブルックナーの作曲の妙を存分に体感しましたが、それが早くも第1主題冒頭から出て来るんです。ブルックナーって、凄い!

 

 

 

(写真)ブルックナー/交響曲第7番第2楽章(ピアノ版)より第2主題の途中

 

牧歌的で温かい第2主題ですが、その繰り返しの場面。さて、この音符の中に、実は生き物が隠れていますが、どこにいるのか、お分かりになりますか?

 

それは、ここなんです!

 

 

 

(写真)第2主題の途中で、私がブルックナーが小鳥を描写したと感じる音符

 

これが野山を歩くブルックナーに、人懐こく寄り添い慰める小鳥のように聞こえて、ここを弾くのは本当に好き!オケではフルートが演奏していますね。この音符の小鳥、もう飼いたいくらい!笑

 

 

 

(写真)ブルックナー/交響曲第7番第2楽章(ピアノ版)より2回目の第1主題。

 

1回目の第1主題の旋律に、少し対旋律を加えるだけで(赤の枠)、ものの見事に奥行きのある音楽になっています。対位法の大家ジーモン・ゼヒターをして、「勉強し過ぎなので休むように」と言わしめた、ブルックナーの対位法の妙技を大いに実感できる場面です。

 

 

 

(写真)ブルックナー/交響曲第7番第2楽章(ピアノ版)より展開部の複雑な和声の場面

 

この後、ソファファミミレレド、ラドドレレミミファ~♪と印象的な飛翔の場面につながる、その直前の葛藤やアイロニーを感じる場面ですが、ここで驚きなのは左の小節の頭の右手の5音の構成(赤い丸)。右手の5音の中に、何とシャープとフラットが混在しているんです!!!ええ~!?そんなことあるの???

 

私、アマチュアのピアノ好きながら、これまで結構いろいろな曲を弾いてきましたが、こんなのは見たことありません!シャープならシャープ、フラットならフラットのみ。そうでないと、調性を外れてしまうからです。おそらく、メシアンなどの現代音楽でしか出て来ないのではないでしょうか?

 

つまり、ブルックナーがいかに複雑な和声をこの場面で投入しているのか!その複雑な和声により、描きたかった世界や心境がある。きっと、そういうことなんだと思います。その後のシンプルな和声の飛翔の場面との対比が、また見事ですね!

 

 

 

(写真)ブルックナー/交響曲第7番第2楽章(ピアノ版)より3回目の第1主題

 

はっきり言って、ここを一番弾きたくてこの曲を選んだ!、というくらいに大好きな場面。もう万感の想いで弾いています!この右手の6連符が1ページ続いて、その後はオクターブになってもう1ページ続きますが、ブルックナーがいかに絶妙な音の選択をしているのか!弾いていて、ゾクゾクするほど素晴らしい!

 

そして、ここで注意すべきは指づかい。6連符を右手親指(1)からだけでなく、人差し指(2)から始めたり、左手の音域も右手で押さえる必要があるところでは14で頭を弾いて、451234とつなげたり、毎小節ごとにバリエーションが違うんです。覚えるのが本当に大変…。

 

ただし、この後の壮大な場面(オケではティンパニが大活躍しますが、ピアノでは左手のオクターブのトレモロで弾くのがまたカッコイイ!)も含めて、オケで聴いた時に大いにカタルシスを感じる3回目の第1主題の場面を、自分一人でピアノで音にすることができるのはめちゃめちゃ気持ち良い!!!

 

 

 

 

 

 

 

以上、私が今年一生懸命練習した、ブルックナー/交響曲第7番第2楽章(ピアノ版)についてでした!

 

 

 

ブルックナーと言えば、繰り返しですが、対位法の大家ジーモン・ゼヒターから学んで、自身もウィーン音楽院やウィーン大学で教えたので、私はこれまで対位法のスペシャリスト、というイメージを持っていました。

 

しかし、今回、ブルックナーの曲をピアノで弾いてみて、楽譜とじっくり対峙してみて気付いたのは、

 

 

 

ブルックナーは対位法だけでなく、和声も実はめちゃめちゃ凄い!!!

 

 

 

ということ!

 

和声に関しては、ワーグナーが革新的な和声で新しい音楽の世界を開いた、という印象が強いですが、ブルックナーの和声も、先ほどの展開部の不思議和声や3回目の第1主題の転調など、痺れるような和声を随所で使っていることがよ~く分りました。リンツ時代のオットー・キツラーの影響も相当あったんだと思います。

 

 

 

 

 

ピアノは聴くのももちろん良いですが、実際に弾いてみると、いろいろと見えてくることがありますね~!もうすぐ2025年を迎えますが、来年はいろいろなピアノ曲にトライしてみようと思います!!!