(夏の旅行記の続き)前回記事では、ブルックナーの生誕の地アンスフェルデンから第2の故郷ザンクト・フローリアン修道院までの9kmの道のりをハイキングしましたが、ランチを楽しんだ後、修道院をガイドツアーで観光しました。

 

 

 

(写真)ザンクト・フローリアン修道院。入口からの眺め。

 

 

 

私はザンクト・フローリアン修道院には2006年に一度来たことがあります(モーツァルト生誕250周年で大いに盛り上がったザルツブルク音楽祭に行った時のエクスカーション)。今回は2回目ですが、歴史ある静謐な修道院の中を見て周わるのはいいものですね~!

 

特に図書室が見事!オーストリアだと「世界一美しい図書館」こと、ウィーンのプルンクザール(国立図書館)が有名ですが、ここも美しい本の設えや天井画が抜群で、知の宝庫の雰囲気に満ち満ちていて素晴らしい!何と、今でも現役で使われているそうです!

 

 

(写真)ザンクト・フローリアン修道院の図書室

※ザンクト・フローリアン修道院で購入した絵葉書より

 

 

ガイドツアーの最後に教会に案内されるのは、真打ち登場!と言った感じで感動的。ブルックナーはこの教会のパイプオルガンの下に埋葬してほしい、と遺言を残し、それは実現されました。

 

地下のブルックナーの棺を拝むことができましたが、偉大な作曲家の棺を久しぶりに拝めて、大いに感動しました!類い稀なる数々の交響曲を残していただいたことに改めて感謝。

 

 

そして1つの願いごとをしました。えっ?何をお願いしたかって?秘密で~す!(めっちゃ匂わせ笑)

 

 

教会の天井に描かれている聖フローリアンの逸話の絵画も見応えあり。聖フローリアンは信念の貫いた結果、石を付けて川に沈められてしまいましたが、その逸話は信念を持って自分のスタイルの交響曲を書き続けたブルックナーに重なります。

 

 

(写真)ザンクト・フローリアン修道院の教会の内部

 

 

 

2006年以来、2回目となるザンクト・フローリアン修道院のガイドツアーは大変見応えがありました!そして、ツアーが終わってまもなく、お楽しみのブルックナー・オルガンによるオルガン・コンサートを楽しみました。

 

 

 

(写真)ザンクト・フローリアン修道院のブルックナー・オルガン

 

 

この日のプログラムはバッハ、ブルックナー、ヘンデル、オルガン演奏者のアンドレアス・エトリンガーさんの自作です。自由なテンポのバッハ、慈愛に満ちた神秘的な和声のブルックナー、真摯なヘンデル、即興演奏の妙味を感じた終曲と大いに楽しめました!

 

特にブルックナーの聖地ザンクト・フローリアン修道院のブルックナー・オルガンで聴く、ブルックナーのオルガン曲は極めて感動的!ブルックナーのオルガン曲って意外に少なくて、演奏される機会もほとんどないので、とても貴重な機会なんだと思います(ブルックナーは即興演奏の大家のため、逆にオルガン曲を多く書いていないものと推察)。ブルックナー生誕200周年の良き思い出となりました!

 

 

 

いや~!久しぶりとなるザンクト・フローリアン修道院の美しい教会、もう最高でした!白くて壮麗な漆喰の飾りはザルツブルクの大聖堂にも似て、マリアさまの受胎告知の祭壇画も感動的。修道僧が1日3回お務めをする説教台にも心を揺さぶられます。天井の聖フローリアンの受難の天井画が美しいのは言わずもがな。

 

そして、何と言ってもブルックナー・オルガン!その姿といい、音色や響きといい、何と美しいことか!このオルガンの真下に眠るブルックナーは毎日のように大好きだったオルガンが聴けて本当に幸せですね。

 

 

 

 

 

ということでザンクト・フローリアン修道院をたっぷり楽しめました!この日はリンツに泊まるので、バスでリンツに戻りましたが、夕方に時間があったので、リンツを観光します。リンツもブルックナーゆかりの地です。

 

 

(写真)新大聖堂。祭壇の上と両脇のステンドグラスが素晴らしい!ウィーンのシュテファン寺院に匹敵する非常に大きな教会で、オルガンを鳴らしたら教会内に良く響くかなと思いました。いつか聴いてみたい。

 

 

(写真)モーツァルトハウス。モーツァルトはこの家で4日間でリンツ交響曲(36番)を書き上げたのでした。個人的にモーツァルトの交響曲では39番と並んでリンツ交響曲が大好きなので、再訪できて、モーツァルトの天才ぶりに触れられて良かったです!

 

 

(写真)リンツの中心ハウプト広場にある三位一体の柱。リンツのシンボルです。黄色い観光車両もありました。

 

 

(写真)旧大聖堂。ザンクト・フローリアン修道院の後、ブルックナーはここ旧大聖堂のオルガニストを12年間務めたのでした。ブルックナーのリンツ時代は、オットー・キツラーを介してワーグナーの世界を知った、言わば飛躍の時期に当ります。

 

旧大聖堂は絢爛豪華なゴシックの祭壇が見事で、説教壇もとても素敵。白と金の重厚な内装。オルガンもザンクト・フローリアン修道院に比べると小規模ながら本当に立派です。

 

 

 

(写真)ニーベルンゲン橋。飾られていた花がとても綺麗でした。

 

(写真)ドナウ川に巨大な船のホテル?があって、甲板にプールがあったりして壮観でした!

 

 

 

ということで、8月12日(月)はアンスフェルデン(前記事)→ザンクト・フローリアン修道院→リンツと、ブルックナーの生涯の前半のまちを辿ることのできた、とても充実した旅となりました!

 

 

 

 

 

 

 

そして、翌13日(火)も朝一番でザンクト・フローリアン修道院に行きました。

 

 

ええっ!?フランツさん、前日にたっぷり堪能したザンクト・フローリアン修道院を翌日に再訪???

 

 

ですよね~!笑 実は今回の旅行の組み立てで、かなり悩んだのがこの2日間の行程。この日に楽しんだザンクト・フローリアン修道院の企画展「ブルックナー・ヴィジョン」が前日月曜はお休みだったんです。

 

ハイキングも含めて、全て火曜日に寄せると、火曜日の後半の予定が成り立たなくなることから、月曜と火曜の両方に分けて、ザンクト・フローリアン修道院に行くことにしたんです。一筆書きにはなりませんが、逆にブルックナー・イヤーにブルックナーの聖地に2日連続で行って、まるで熱心な信徒なんですよ~とアピールしているかのよう?笑

 

 

 

(写真)この日の朝食。旅行5日目にして、初めてホテルでの朝食にありつけました…涙。まあ、私らしい旅です。

 

(写真)ザンクト・フローリアン修道院。朝だと光の加減が異なるので、雰囲気も異なりますが、荘厳で立派なのは変わらず。

 

 

修道院に着いて、展示が始まる時間までは教会(上の写真奥)でゆっくりすることにしました。ブルックナー・オルガンを抱くザンクト・フローリアン修道院の教会を20分くらい独り占め。オルガンの音こそ聴けませんが、静寂に包まれた教会もまたいいですね~。大いに堪能できました!

 

 

 

さて、いよいよ「ブルックナ-・ヴィジョン」展を見学します。数々の展示を観て特に印象に残った点は以下の通りです。

 

 

◯Friedrich Meyerに捧げられたミサ・ソレムニスの楽譜の表紙。ミサ・ソレムニスの演奏の記録もありました。ザンクト・フローリアン修道院時代の重要な作曲となります。

 

◯Jakob Hyrtlによって造られたブルックナー・オルガンに関する記載

 

◯ブルックナーによっても歌われたシューベルトのカンタータの一節(ブルックナーは修道院の少年合唱団に所属)

 

◯小学校での母親に宛てた架空の手紙の練習。ユニークな、でも実践的な教育がなされていたんですね。

 

◯ブルックナーの小さな質素な財布。ブルックナーは後年お給料や年金はかなりアピールした逸話を聞きますが、蓄財とは無縁の人生。大食漢でお酒もガンガン飲んだので、経費がかなりかかったのでしょう。フランツと同じ!笑、めっちゃ親しみを覚える!

 

◯ブルックナーが書いた優秀な生徒の証明書。ブルックナー自身、能力証明書を度々求めています。ブルックナーの音楽には驚嘆するばかりですが、その実力と自己肯定感が比例しないのは、現代日本の若者たちと同じなのかも?私は職場の若手に対して、あなたの能力や可能性がどれだけあるのか?そのことを説いて励ます毎日です。

 

◯Aloisia Bognerに書いた曲Der Mondebendのスコア。リズムはシューベルト風ですがメロディは全く違うのがユニーク。

 

◯ブルックナーがザンクト・フローリアン修道院で一時的なオルガニストだった理由についての解説。1848年革命の不安定な状況が理由ということでした。

 

◯ブルックナーの作曲したマニフィカトの楽譜と演奏。美しい!

 

◯オットー・ベーラーのブルックナーがオルガンを弾く影絵。私、不器用だったブルックナーのことを温かく見守るオットー・ベーラーの影絵が大好きです。

 

◯ブルックナーによるモーツァルト/テ・デウムの研究。ブルックナーはワーグナーに傾倒して、ブラームスとはそりが合わなかった、という話をよく聞きますが、同じオーストリア出身のモーツァルトとの接点の展示は貴重でした。

 

◯ブルックナーは夏に50回以上ザンクト・フローリアンに滞在したとの解説。ブルックナー、どんだけザンクト・フローリアン修道院が好きなのか!笑

 

今年のGWにウィーン近郊のクロースターノイブルク修道院を訪れた記事を書きましたが、ブルックナーがクロースターノイブルク修道院を気に入っていたのも、主にオルガンが理由です。ブルックナーは本当にオルガンが好きなんでね~。3つの作曲終了のサインもありました。

 

(参考)2024.5.3 クロースターノイブルク&ウィーン観光(ブルックナーゆかりの場所めぐり)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12853465588.html

 

 

◯ブルックナーのレクイエムについての記載。コピーがなく、改編を行なっていないのではないか?ということでした。

 

◯ザンクト・フローリアン修道院の中庭で撮影されたのブルックナーの写真。これは見たことない1枚でした。

 

◯ブルックナーを讃える表彰のリボン(直径50cmくらいのもの)。生涯で何と60ももらっていて、そのうち2点の展示がありました。また、その多くのリボンがところ狭しと、まるでクローゼットのように収納された部屋の写真もありました!

 

 

(写真)以上はザンクト・フローリアン修道院の室内の展示でしたが、これ以降は屋外の展示となります。わざわざ中庭に展示スペース(写真の青と赤の建物)が設けられていて、ブルックナー・イヤーにブルックナーの聖地の威信をかけて、展示する意気込みを大いに感じました。

 

 

◯交響曲第4番に合わせて、人びとが音楽を聴いて感情を揺さぶられる非常にユニークな映像!この動画はAIを駆使して造られているとのことでしたが、後期ロマン派ながら様式としては古典に立脚したブルックナーの音楽と最新鋭のAIのコラボに、オーストリアという国の奥深さを感じました。

 

◯ブルックナーはダンスも好きだった、特に若い女性と踊るのが好きだった、という解説。ブルックナーの日記にはその日に誰と踊ったか記載がありますが、“Tochter”(娘)という単語が沢山確認できました、笑。

 

◯テ・デウムやレクイエムなどの音源。時間がなくて全部は聞けませんでしたが、ザンクト・フローリアン修道院時代に作曲された曲を現地で聴けて大いに感動!

 

 

 

「ブルックナー・ヴィジョン」展、めちゃめちゃ素晴らしかったです!いかにブルックナーのザンクト・フローリアン修道院時代が作曲に大きな影響を及ぼしたのか、重要だったのか、そして、ザンクト・フローリアン修道院がブルックナーのことをいかに大切に思っているのか、とても良く分かる充実の展示でした!

 

 

 

(写真)思う存分ブルックナーを堪能した2日間。ラストは、ザンクト・フローリアンのバス停のそばにある公園のブルックナー像。ここは様々な温かいメッセージが公園内に掲示されていて、とても心洗われる場所でした。

 

 

 

 

 

ということで、生誕200周年のブルックナーゆかりの場所を大いに楽しんだ2日間でしたが、興味の対象がブルックナーや、いわゆるクラシック音楽の王道に留まらないのがフランツの幅広さ(あるいは節操のなさ笑)。

 

この後は満を持して、私の大好物の「アレ」が登場します。さて、その「アレ」とは一体何でしょう?次の記事で!(続く)