(GWの旅行記の続き)旅行7日目。この日はチェコ5日目にして、満を持してプラハに行くことにしました。

 

普通にプラハ城などの観光名所を巡るのも一案ですが、そこは海外旅行で凝り凝りの旅程を組むのが大好きなフランツ。今年生誕200周年のスメタナ尽くしの一日とすべく、連作交響詩「わが祖国」の前半の3つの交響詩ゆかりの場所を巡ることとしました。

 

 

 

(写真)朝食はオストラヴァ→プラハの早朝発の列車にて。

 

(写真)3時間半でプラハに到着。ホテルにスーツケースを預けた後、真っ先に会いに行ったのがスメタナ像。感動の対面!ここからスメタナ尽くしの一日をスタートします。

 

 

 

まずは「わが祖国」の最初の交響詩「ヴィシェフラド」の地を目指します。現在のプラハの繁栄は7世紀の伝説の王妃リブシェが予言しましたが、その王妃が住んでいたと言われるのがヴィシェフラド(高い城)です。

 

 

 

(写真)トラムで南に移動して、歩いてすぐに現れるヴィシェフラドの城壁と城門。2007年に一度来たことがありますが、既視感のあるアプローチにワクワクします!

 

 

 

(写真)ヴィシェフラドの中に入り、少し歩くとチェコの偉人たちが眠る墓地があります。入るとすぐに現れるのがスメタナのお墓!生誕200周年の今年、お墓参りができて感無量!最高の音楽を本当にありがとうございます!

 

 

(写真)墓石の両脇には、スメタナの作曲した連作交響詩「わが祖国」の6つの交響詩のタイトルと、8つのオペラのタイトルが記載されていました。

 

8つのオペラのうち、私は今回の旅で2つ追加して、「ボヘミアのブランデンブルク人」「売られた花嫁」「ダリボール」「リブシェ」「二人のやもめ」「秘密」と6つまで観ることができました。残りあと2つ!

 

 

 

(写真)ヴィシェフラドの公園には、チェコの歴史にちなんだ見事な石像があります。ヴィシェフラドに住んでいた伝説の王妃リブシェとプシェミスル像(上)と、ツチラトとシャールカ像。これは感動しますね!

 

 

 

(写真)聖ペテロ聖パウロ教会。教会内いっぱいに描かれたフレスコ画と美しいステンドグラスが素晴らしい!ファザードのモザイクも美しかったです。

 

 

 

 

 

ということで久しぶりのヴィシェフラドを大いに堪能しました!そして、わが祖国の2曲目は交響詩「ヴルタヴァ(モルダウ)」、次の目的地ヴルタヴァ川を目指します。一番賑やかなカレル橋に行きました。

 

 

(写真)カレル橋に到着。プラハ随一の観光名所なので、観光客が沢山いて半端なかったです!

 

 

(写真)カレル橋から眺めるヴルタヴァ川(上流と下流)。本当に大きな川で、交響詩の最後の方のヴィシェフラドの主題がこだまする堂々たる場面にシンクロします。

 

 

(写真)観光の遊覧船も出ていました。カレル橋をくぐる時に、船のデッキに鈴なりの乗客が橋の上の人たちに手を振って、遠くから眺めているだけで楽しい!

 

(写真)カレル橋には聖人の像が30体ありますが、ここは代表して十字架のキリスト像を。両脇は聖母と聖ヨハネ。

 

 

(写真)カレル橋近くにあり大きく見えるプラハ城。本当に立派なお城です!上の写真の右端の塔の奥に前々日に観たスメタナ/ダリボールでダリボールが幽閉された「ダリボルカ」があります。

 

(参考)2024.5.6 スメタナ/ダリボール(モラヴィア・シレジア国立劇場)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12856511628.html

 

 

 

(写真)ちなみに、プラハのヴルタヴァ川はほとんど大河ですが、もっと上流の様子として、2009年に訪れたチェスキー・クルムロフのヴルタヴァ川をご紹介します。ここではヴルタヴァ川が世界遺産であるチェスキー・クルムロフの赤い屋根のまちをぐるっと取り囲むように蛇行していて、とても見応えがあります。

 

 

 

 

 

ということで、久しぶりにヴルタヴァ川を堪能できました!続いて、わが祖国の3曲目、交響詩「シャールカ」の舞台を巡ります。

 

 

 

は~い!フランツ先生、ヴィシェフラドとヴルタヴァ川は有名だけど、シャールカにちなんだ場所なんてあるんですか?

 

はい。それがあるんです!プラハの中心の旧市街広場から地下鉄で北西に10分くらい行ったところにある、ディヴォカー・シャールカという自然保護区の森がその舞台。

 

この森で木に縛られていたシャールカを勇者ツチラトが助けますがそれは罠。シャールカに魅了されて、蜂蜜のお酒ですっかり酔っ払ったツチラトは、女戦士たちに襲われて命を落としたのでした…。その舞台を目指します。

 

 

(写真)地下鉄AラインのNádraží Veleslavín駅を降りて、15分くらい歩いてディヴォカー・シャールカの森を目指します。最初はいい感じの住宅地が続きましたが、進むにつれてだんだん緑が多くなって行きます。

 

(写真)遂に森が現れました!いよいよディヴォカー・シャールカに入ります!

 

(写真)ディヴォカー・シャールカは事前に調べても地図やガイドはなく、何とかgoogle mapを参考に歩く予定でしたが、何か作業をしているのか落石か、早くも道が閉鎖されていて予定のルートを行くことを挫折…。

 

(写真)道案内の標識は全くと言っていいほどなく、たま~にあっても、さっぱり参考になりません!笑 人とすれ違うことも稀。

 

(写真)こんな分りにくい二股の道も出てきます。30分くらい歩くと、どこをどう歩いているのか、さっぱり分らなくなりました…泣。

 

 

(写真)そんなこんなで森の中をしばらくさまよっていると、美しい水辺に遭遇しました!ここは事前の調べで、おそらくTichá Šárka(静かなシャールカ)だと思われます。森の中を水辺に沿って歩くのは本当に心地良いですね!また鳥たちの声を聞きながらのハイキングも楽しい!

 

 

 

しかし、せっかく来たので、何とか少しでも交響詩「シャールカ」にちなんだ場所に行きたいもの。事前の調べではズバピタでそういう名所や記念碑の類いはなかったので、ぶっちゃけ、ディヴォカー・シャールカに足を踏み入れさえすれば目的は達成ですが、ここは何か思い出を残したいところです。

 

 

(写真)しかし、行けども行けども、それらしきところがなく段々不安に…。さらには自分がどこにいるのかさっぱり分らず、「これは遭難してしまうかも?」と思い始めたところで、うっそうとした木立が密集する場所を見かけました!

 

ここは女戦士たちが潜んでいて、ツチラトを襲うにはぴったりな雰囲気。交響詩「シャールカ」のラストの盛り上がりの前のヴァイオリンが静かに刻みを入れる不穏な場面によく合います。この際、ここをその場所としちゃいましょう!(かなり強引な断定!笑)

 

(写真)さらに、犬も歩けば棒に当る。ほら穴を見つけました!ツチラトがシャールカから蜂蜜のお酒を勧められて寛ぐとしたらぴったりな場所。ここをその現場としちゃいましょう!(断定その2)

 

(写真)だんだん山道っぽくなって、上り坂になってきました!大きな岩も出てきて、何だか展望ポイント行き当たりそうな予感!

 

 

 

(写真)そして、遂にディヴォカー・シャールカの山頂と思われる場所に辿り着きました!やったー!バンザーイ!

 

ツチラトが殺された後の話ですが、罠にかけたとは言え、親しみを覚えたツチラトが殺されて、その仕返しとして女戦士のリーダーのヴラスタも男性軍に殺されてしまって、悲観したシャールカは最後崖から身を投げたそうですが、ここはその場所にぴったりです!ここをその現場としちゃいましょう!(断定その3。ここは自信あり。)

 

 

途中、どうなることか?と思いましたが、最後は勘を頼りに無事山頂に到達!山頂での美しい景色が素晴らしく、見通しが良いので、あちこちから鳥たちの美しい鳴き声が聴こえてきて最高でした!

 

 

 

(鳥たち)俺たちは可愛い恋人をゲットしようと、必死に鳴いていて大変なんだよ!笑

 

 

 

ということで、結局2時間も森の中をさまよった(笑)ディヴォカー・シャールカでしたが、最後は何とか交響詩「シャールカ」をより身近に感じられる場所を巡ることができました!

 

 

 

 

 

さて、このスメタナ尽くしの一日。まだプラハで巡るべき場所が残されていました。それは…、

 

 

スメタナ博物館です!!!

 

 

 

 

(写真)カレル橋から眺めるスメタナ博物館と入口。とても雰囲気のある建物の中に素晴らしい展示がありました。特に印象に残った展示は以下の通りです。

 

 

◯ルイザのポルカの楽譜。従姉妹のルイザの肖像画もありましたが、ルイザ綺麗!そりゃ、曲を書きたくなりますね!笑

 

◯最初の妻のカテジナの独身時代の肖像画。毅然としていて意思をしっかり持っていそうな雰囲気でした。

 

◯初めてのリストへの手紙とリストからの返事。リストに捧げられた『6つのキャラクター・ピース』のスコア。

 

◯『ピアノ三重奏曲ト短調』の初演のプログラムと娘フリーデリケ(ベドジシュカ)の死が作曲の動機になったことを記したスメタナの手紙

 

◯1850年代のスメタナのプラハ音楽生活では、その時にプラハで初演されたワーグナーのオペラのポスター。タンホイザー(1854プラハ初演)、ローエングリン(1856プラハ初演)、さまよえるオランダ人(1856プラハ初演)。スメタナはきっとワーグナーのオペラに魅了されたことでしょう。

 

◯リストの『タッソ』のプログラム(この曲はスメタナに捧げられたそうです。)

 

◯スメタナのチェコ語の文法の練習問題

 

◯プラハ国民劇場の絵画と風刺画まで!仮劇場にまで風刺画がありました。

 

◯ヴルタヴァ川のレガッタの様子の絵画。船が10曹くらい出て、花火が上がって壮観です。

 

◯プラハ国民劇場の礎石を叩くスメタナの肖像画

 

◯オペラ『ダリボール』初演のポスター!

 

◯ワルキューレ、ラインの黄金、トリスタンとイゾルデに関する感想。スメタナのオペラにはワーグナーの影響を大いに感じます(特にダリボール)。

 

◯売られた花嫁第100回公演のポスター。さすが人気演目。

 

◯プラハ国民劇場の開場記念のスメタナ/リブシェ初演のポスター!そして、リブシェのスコア。

 

◯開場後、すぐに起きてしまったプラハ国民劇場の火事の絵…。そして劇場再建を再び飾ったリブシェのポスター!

 

◯我が祖国の6曲の4手ピアノ版のスコア。美しい表紙の絵が曲の雰囲気を良く表していて素晴らしい!

 

◯オペラの登場人物の衣裳の展示もありました。特にダリボールとミラダ、リブシェの美しい衣裳には感動しました!

 

 

 

ここに来るまでにスメタナのオペラを4夜連続で楽しんできて、ヴィシェフラド→ヴルタヴァ川→ディヴォカー・シャールカと周わって、すっかりスメタナ・モードでしたが、その流れの中でたっぷり1時間半見学したスメタナ博物館の素晴らしい展示の数々に大いに魅了されました!

 

 

 

 

 

さて、このスメタナ尽くしの一日をどう締めくくるのか?それに相応しいのは、夜にスメタナのオペラを観に行く以外に考えられません!ということで、プラハ国民劇場にスメタナ/売られた花嫁を観に行きました。

 

 

 

The National Theatre

Bedřich Smetana

Bartered Bride

(The National Theatre)

 

Conductor: David Svec

Stage director: Alice Nellis

Set and Light design: Matěj Cibulka

Costumes: Kateřina Štefková

Choreography / Movement coach: Klára Lidová

Videoart: Michal Mocňák

Chorus master: Pavel Vaněk

Dramaturgy: Ondřej Hučín

 

Mařenka: Jana Siber

Mařenka 2: Doubravka Souckova

Jeník: Richard Samek

Kecel: Jiri Sulzenko

Vašek: Josef Moravec

Ludmila / Esmeralda: Lucie Hajkova

Krušina / Indian: Jiri Hajek

Háta: Jana Sykorova

Mícha: Roman Vocel

Principal: Tomas Korinek

 

 

(写真)プラハ国民劇場。劇場内は金の装飾、青を背景としたミューズの肖像画があり、ウィーンのムジークフェラインザールに似ています。なのでウィーン国立歌劇場よりも豪華な印象を持ちました。ホワイエの天上画も見事で、リブシェの立派な絵画もありました。

 

 

 

ここまで既に長~い記事なので感想はほどほどに。5月3日に観たオストラヴァのモラヴィア・シレジア国立劇場で観た売られた花嫁は、登場人物はみな民族衣装のオーソドックスな舞台でしたが、それとは異なり、みな現代服で舞台裏ネタ満載の読み替えの舞台でした!しかも、何とマジェンカが2人出てきました!笑

 

 

チェコの民族的な要素が満載のオペラなので、そんな無理に読み替えをしなくてもいいのに?とも思いましたが、どうして敢えて読み替えの舞台なのか?そのヒントは幕間に劇場の2階で観た展示にありました。

 

それはプラハ国民劇場で上演されてきた、ヤナーチェク/カーチャ・カバノヴァーの舞台や出演者の写真。何と1922年から10もの演出で上演されてきた、とても貴重な記録でした!

 

 

私は2022年にザルツブルク音楽祭の公演を観て熱狂したように、カーチャ・カバノヴァーは大好きなオペラなので、この展示にはクラクラして、何周もしてしまいましたが、よりマイナーなオペラとなるカーチャ・カバノヴァーでさえ、10もの演出で上演されてきたことを考えると、売られた花嫁はプラハ国民劇場で、おそらく30以上の演出で上演されてきたものと推察します。

 

そうであれば、同じような演出という訳には行かないと思うので、時には今回のような奇をてらった演出も登場しそうですね。ある意味、売られた花嫁が多くの上演回数を誇る、どれだけ人気のオペラなのか、そしてチェコオペラの殿堂たるプラハ国民劇場の長い歴史を大いに感じた舞台でした!

 

 

 

 

 

(写真)終演後はプラハ国民劇場の目の前の美しいカフェにて、ブディェヨヴィツキー・ブドヴァルでクールダウン。スメタナゆかりの地を巡って、スメタナのオペラを観た一日の締めのチェコビールは最高!

 

(写真)美味しいチェコビールをゆっくり楽しんだ後、カフェを出ると再びプラハ国民劇場。ライトアップされて美しい!(続く)