この日の観劇は、スメタナのオペラの中で個人的に最高傑作と思っているダリボールです!本場チェコで観るのは初めて。非常に楽しみです!

 

 

 

National Moravian-Silesian Theatre

Bedřich Smetana

DALIBOR

(Antonín Dvořák Theatre)

 

Conductor: Jiří Habart

Stage director: Martin Otava

Set designer: Daniel Dvořák

Costume designer: Dana Haklová

Motion cooperation: Jana Tomsová

Chorus master: Jurij Galatenko

Dramaturg: Juraj Bajús

 

Vladislav, King of Bohemia: Marián Lukáč

Dalibor, a knight: Luciano Mastro

Budivoj, commander of the castle guard: František Zahradníček

Beneš, jailer: Peter Mikuláš

Vítek, Dalibor's messenger: Martin Javorský

Milada, a sister of the governor of Ploskovice Castle: Kateřina Hebelková

Jitka, a village girl at Dalibor’s estate: Veronika Rovná

Judge: Erik Ondruš

Ambrož Chrt of Pilsen, the dean of Prague: Jan Rychtář

 

National Moravian-Silesian Theatre’s opera chorus & orchestra and ballet

 

 

 

(写真)本公演のパンフレット。ヴァイオリンを持つダリボールの後ろ姿がカッコイイ!

 

(写真)モラヴィア・シレジア国立劇場

 

 

 

 

 

ダリボール!スメタナのオペラに留まらず、古今東西のあらゆるオペラの中でも、音楽といい、ストーリーといい、最高のオペラの一つだと思っています。

 

 

 

ダリボールのあらすじをごく簡単に。反乱を起こした罪で王様の前で裁かれる騎士ダリボール。プロスコヴィツェ城主である兄を殺されたミラダが告発しますが、ダリボールは親友のズデニェクが無惨に殺されたので復讐したまでと毅然として答えます。一生牢獄に幽閉の裁きが下りますが、ダリボールの立派な態度に心打たれたミラダは救い出すことを決意、ダリボールに育てられた孤児のイトカがそれを支援します。

 

少年に化けて牢獄に忍び込んだミラダは、看守ベネシュの信頼を勝ち取って、遂にはダリボールの牢まで辿り着きます。ミラダが改心したことを告げ、ダリボールも受け入れて、二人は愛を誓い合います。さらにミラダはダリボールの脱出を企てますが、その結末はどうなるのでしょう?

 

※なお、このオペラのタイトルの日本語訳は「ダリボル」の方が正しいのかも知れませんが、私は昔から「ダリボール」で親しんでいるので、こちらの表記としました。

 

 

 

 

 

第1幕。短調と長調で「ダリボール!」が連呼される合唱の冒頭が素晴らしい!民族衣装で固めた民衆の服装もとても雰囲気あります。

 

 

このオペラは印象的で素晴らしい歌が沢山出てきますが、その開幕を告げるイトカの歌がとてもいい!クラリネット→オーボエでリレーされるオケのチャーミングな旋律も素敵。

 

ボヘミアを象徴する巨大なライオンの台座に座るヴラジスラフ王の歌が、威厳を感じて素晴らしい!ハープに導かれて登場するミラダの歌もとても良いですね~。

 

 

ダリボールの登場では堂々たる導入の音楽がピカイチ!亡くなったヴァイオリンの名手、親友のズデニェクを想うダリボールのアリアは、ヴァイオリンの旋律が印象的で本当に好き。オペラの中で象徴的に何度も出てきますが、あらゆるオペラの中でも屈指の名旋律だと思います。

 

ミラダの訴え、ダリボールの真実を語る歌と進み、ダリボールは終身で牢獄に幽閉される刑を処せられます。重い処罰に関わらず、悠然と去って行くダリボール。めっちゃカッコいい!

 

 

信念を持って毅然と行動するダリボールを目にして、ミラダは兄を殺した相手ですが考えを改めて、ダリボールを赦すように王様に訴えます。しかし、法に基づく刑罰は変えられない、と王様は受け入れず。ラストのミラダとイトカの二重唱も迫力満点!最高の第1幕!

 

 

 

 

 

第2幕。冒頭は昨日の売られた花嫁に続いて、またお酒で民衆が盛り上がる歌!笑 イトカのドラマティックな「アーアアアー!」の歌声で栄光を歌うシーンがめちゃめちゃ素晴らしい!

 

明るい場面から暗い牢獄への転換の音楽も見事。ダリボールはスメタナのオペラの中でワーグナーの影響を最も受けているオペラだと思いますが、スメタナが模倣するだけでなく、取り入れて見事に発展させていることを実感します。

 

 

(写真)チェコのプラハ城にある、ダリボールが幽閉されたダリボルカ。ここがダリボール第2幕の舞台となります。

 

 

看守ベネシュの立派な歌も素敵。ダリボールを救うため、少年に変装したミラダが入ってくると一気に明るい曲想になります。

 

そして、ベネシュの信頼を得て、ダリボールにヴァイオリンを届ける役をもらったミラダが、未来を切り開くような素晴らしい歌!めちゃめちゃ素晴らしい!なお、暗闇の牢獄を照らすライトサーベルを持ったミラダが、まるで映画「スター・ウォーズ」のルーク・スカイウォーカーのようだった件!笑

 

(写真)スメタナ/ダリボールより第2幕のミラダのアリア。Aurelia Florianさんの迫力満点の歌!

https://www.youtube.com/watch?v=PuN9EnP9M_8 (3分)

※Deutsche Radio Philharmonieの公式動画より

 

 

牢の中のダリボールがズデニェクを想うヴァイオリンの間奏曲も素敵。そしてミラダが牢に辿り着きダリボールに想いを打ち明け、ダリボールが受け入れた後のミラダとの感動の二重唱!ヴァイオリンの旋律からラストの豪華なエンディング!

 

 

いや~第2幕もめちゃめちゃ素晴らしい!何この魅力的な音楽のてんこ盛り状態!ヴァイオリンが刻みながらうねるところはスメタナの代表作「わが祖国」を感じますし、ハープを効果的に使って見事。何もかも素晴らしい!

 

 

 

 

 

第3幕。ダリボールの脱獄の企てが露呈して、王様の前に証人として呼ばれた看守ベネシュの立派な歌!40年間、職務に忠実に、真面目に働いてきた、と切々と訴えます。王様の誠の心境を歌う歌も聴かせますね~。

 

裁判官たちから民衆を扇動する危険なダリボールを即刻処刑すべきと意見。仕方ないが処刑はダリボールに敬意を持ってするように、と苦しい配慮の王様。王様なのに、なかなか自分の思い通りにはいかない悲哀が…。

 

 

ダリボールは自由になれる希望を歌いますがヴァイオリンの弦が切れてしまい…。そこにダリボールの処刑を告げに司令官のブディヴォイが来ます。驚くダリボールですが、少年(ミラダ)が無事に逃げたと聞いて安心し、ダリボールは処刑を毅然として受け入れます。

 

 

城の外では、ダリボールからの突入のサインがないと訝るミラダたち。修道士たちの鎮魂の歌を聞いて、ダリボールが処刑されてしまう!助け出さなければ!と無謀な救出に向かいます!剣を抜いて走り去るミラダの勇姿が眩しい!

 

(参考)スメタナ/ダリボールのモラヴィア・シレジア国立劇場のハイライト(音楽は第1幕の王様の入場行進)。この動画の0:08の映像がミラダが剣を抜いてダリボールの救出に向かうシーン。音楽ともども、めちゃめちゃ格好良かったです!

https://www.youtube.com/watch?v=PawQkd_TD_Y (1分)

※モラヴィア・シレジア国立劇場の公式動画より

 

 

実は感動の音楽の連続のダリボールの中でも、私が一番エキサイトするのが、この後の戦いを見守る女性陣の合唱の場面。激しい音楽に合わせて劇的に歌われますが、「戦いはライオンのように」と歌う場面で旋律を半音ずつ上げて歌われます。劇的な音楽を書いて天下一品のスメタナの見事な筆にめちゃめちゃ痺れます!

 

 

奇跡的にダリボールを救出したものの、その戦いの中で致命傷を負ってしまったミラダ…。ダリボールに看取られながらミラダが死にゆく感動的なシーン。慰めるイトカの歌も素晴らしい。

 

最後のシーンでは、ブディヴォイたちが脱走したダリボールを捕らえに来ますが、ダリボールはブディヴォイとの一騎打ちで(わざと)剣に刺されてミラダとともに死にゆくのでした。最後にブディヴォイに一太刀だけ浴びせる演出が、ダリボールの誇りを感じさせてとてもいいですね!

 

 

 

 

 

最高のオペラ!スメタナ生誕200周年に、本場のチェコにてスメタナの最高傑作ダリボールを観ることができて感無量!勇ましい音楽の連発に、カーテンコールの熱狂ももの凄かったです!感動の物語に涙する方もちらほらいて、私の隣のチェコの女性の方も最後泣いていたのが印象的でした。

 

 

 

歌手ではミラダ役のKateřina Hebelkováさんとイトカ役のVeronika Rovnáさんが傑出していました。私、新国立劇場の開場25周年をお祝いする記事の中で、新国立劇場でぜひダリボールを上演してほしい!とお願いしましたが、結構無理筋なお願いだったことを痛感…。

 

(参考)2022.11.20 祝!新国立劇場25周年!(新国立劇場で観たオペラ1997年~2022年)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12779890714.html

 

 

というのも、このオペラはダリボールとミラダとイトカの3人にドラマティックで強靱な歌手を揃えないと成り立たないので。チェコ語のオペラということも合わせて、上演のハードルがかなり高いからです。

 

 

 

であれば、いずれまた将来、必ずやチェコにダリボールを観に行きたいと思います!オストラヴァの上演も最高でしたが、今度はスメタナゆかりのプラハ国民劇場で観れますように!

 

 

 

 

 

(写真)終演後、ホテルに帰ってからクールダウンのビールは、この日のお昼にジリナでも楽しんだKezel。最高のオペラの後の美味しいビール、こちらも最高でした!