(昨夏の旅行記の続き)演劇のイェーダーマンを観た後は、ダニエル・ハーディング/ウィーン・フィルのコンサートを聴きに行きました。生誕100周年のリゲティとR.シュトラウスを組み合わせた、極めて魅力的なプログラムです!

 

 

 

SALZBURGER FESTSPIELE

Vienna Philharmonic

(Großes Festspielhaus)

 

Conductor: Daniel Harding

 

GYÖRGY LIGETI/Atmosphères for large orchestra

RICHARD STRAUSS/Metamorphosen — Study for 23 solo strings

GYÖRGY LIGETI/Lontano for large orchestra

RICHARD STRAUSS/Also sprach Zarathustra — Tone poem (after Friedrich Nietzsche) for large orchestra op. 30

 

 

 

(写真)会場はザルツブルク祝祭大劇場。開演前の風景。

 

(写真)別アングルだとこうなります。馬洗い池の辺りからザルツブルク祝祭大劇場を右手に、奥にホーエンザルツブルク城塞を臨む景色。

 

(写真)2023年のザルツブルク音楽祭は“Zeit mit LIGETI”と題して、生誕100周年のジェルジュ・リゲティ(1923-2006/ハンガリーの現代音楽の作曲家)を特集していました。本コンサートはそのハイライトのコンサートです!

 

 

 

 

 

前半、まずはリゲティ/アトモスフェールです。聴いてみての感想は、ウィーン・フィルは現代音楽もピカイチ!しかも冷たい感じがしなくて、ウィーン・フィル独特の音色にヒューマンな温かさを強く感じました。

 

ヴァイオリンの分奏は何かがうごめき始まる印象。そして威嚇的な金管のトーンクラスターはカタストロフを思わせます。

 

それは、まるで地球の始まりを音にしたかのよう!最後のウィンドマシーンを弱くしたような音楽には(ピアノの弦を直接さすった音のもよう)、その後の世界に繋がる余韻を感じました。

 

(参考)リゲティ/アトモスフェール。1961年作曲のバリバリの現代音楽ですが、なぜか聴きやすい。この曲はスタンリー・キューブリック監督の映画「2001年宇宙の旅」に使われたことでも知られます。

https://www.youtube.com/watch?v=E-bemE-bCXQ (7分)

※hr-Sinfonieorchesterの公式動画より

 

 

 

続いて、R.シュトラウス/メタモルフォーゼン。ザルツブルク音楽祭でメタモルフォーゼンを聴くのは今回で2回目。前回はヘルベルト・ブロムシュテット/ウィーン・フィルによる最高の演奏でした!今回も非常に楽しみです。

 

(参考)2017.8.20 ヘルベルト・ブロムシュテット/ウィーン・フィルのR.シュトラウス&ブルックナー

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12325050132.html

 

 

これがもう、ウィーン・フィルのメタモルフォーゼンは特別!常に最高!という素晴らしい演奏!無調のリゲティの後で聴くと、まるで調性音楽への告別の曲のように聴こえてきます。

 

ハーディングさんは中間部を快速で飛ばして、ここはかなりポジティブなイメージ。名残惜しくじっくり聴かせたブロムシュテットさんの時と異なる印象を持ちました。

 

しかし、悲劇的なパートに移るとゆっくりになって、これが聴かせること、沁みること!最後のベートーベン/英雄交響曲の第2楽章の主題が強く心に残る、飛び抜けて素晴らしい演奏でした!

 

 

 

 

 

前半だけで濃密な音楽、最高の演奏に既にお腹いっぱいですが(笑)、後半の最初はリゲティ/ロンターノ。アトモスフェールより移行が複雑で、より象徴的かつ哲学的な曲。

 

どことなく遥か昔の太古の、あるいは天文学的な遠い世界を思わせる曲、という印象を持ちました。

 

アトモスフェールに続いて、ウィーン・フィルの現代曲を演奏する時のメリハリ、特に弦楽の強奏がもの凄くて、大いに心揺さぶられました!曲の前後の組み合わせも絶妙!

 

(参考)リゲティ/ロンターノ。こちらも1967年作曲の現代音楽ですが、どこか懐かしさを感じる音楽。このケルン・フィルの動画では、白黒のノスタルジックな映像付きの演奏となっていて、こういうのは難しい現代音楽のイメージを膨らませてくれるので、とても良い企画ですね!

https://www.youtube.com/watch?v=BBZxLqbRrPQ (10分)

※WDR Klassikの公式動画より

 

 

 

最後はR.シュトラウス/交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」。冒頭のスペクタクルさ!その後の弦楽はメタモルフォーゼンに通じるものあり、高まっていく場面はウィーン・フィルが痺れるほど上手い!

 

コントラバスから始まる何かがうごめくような音楽は構築感が抜群で、リゲティにつながるものを感じました。一転して、自然の動機はきらびやかなヴァイオリンに魅了されます!

 

この辺りのR.シュトラウスの複雑な音楽を、ウィーン・フィルがどれだけ自然体で聴かせることか!舞踏の歌でのコンミスのダナイローヴァさんのソロも素晴らしい!独特な音色のチャーミングなオーボエとの掛け合いにうっとりします!

 

ハーディングさんの指揮はテンポとメリハリのバランスが抜群!私はこの曲は1999年のヴォルフガング・サヴァリッシュ/N響が最も感動した演奏ですが、遂にそれを超える演奏が現れた、最高のツァラトゥストラでした!

 

 

 

 

 

いや~!ダニエル・ハーディング/ウィーン・フィルの演奏はまたしても最高!私は2018年にウィーンでこのコンビによるマーラー5番を聴いて、その壮絶な演奏、突き抜ける感動に感極まった経験があります!

 

その後、東京のコンサートでマーラー5番があっても、あまり聴きに行く気にならなくなってしまったくらいに最高の演奏でした。

 

(参考)2018.5.5 ダニエル・ハーディング/エリザベート・クルマン/ウィーン・フィルのバーンスタイン&マーラー

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12390376173.html

 

 

その時の感動を思い起こさせる、リゲティとR.シュトラウスの抜群の演奏!ザルツブルク音楽祭のプライドをかけての生誕100周年のリゲティを記念したプログラム、というのも一因かとは思いますが、このコンビならではの相乗効果、ケミストリーを大いに感じました!

 

観客のみなさんもスタンディング・オベーションで大盛り上がり!繰り返しですが、最高でした!!!

 

 

 

 

 

(写真)終演後、ザルツァッハ川の上からのホーエンザルツブルク城塞の眺め。感動の余韻の中、夜風がとても心地良い。今年のザルツブルク音楽祭はファルスタッフとフィガロの結婚の演出でもやもやしましたが…、3日目にしてスカッと最高の一日となりました!

 

(写真)この日は写真左から、バート・デュルンベルク岩塩坑 → イェーダーマン → ウィーン・フィルという組み立てでした。なので、ホテルに帰ってからのクールダウンのビールはシュティーグルで決まり!

 

さて、どうしてこの3つのイベントを組み合わせたのか?お分かりになりますか?

 

 

実は個人的に設定したこの日のテーマは、「ザルツブルク(あるいは、ザルツブルクの今昔物語)」なんです!

 

 

ザルツブルクの繁栄の源となった岩塩坑を見学して、ザルツブルク音楽祭の始まり(1920年)の演劇であるイェーダーマンを観て、今のザルツブルク音楽祭のオペラやコンサートで中心的な役割を担っているウィーン・フィルを聴く。つまりは、ザルツブルクの過去から現在までの流れを追った組み立てだったんです。

 

ツアーではなく、全て自分で海外旅行の旅程を考えるので、こういう遊び心のあるスケジュールを組むことができます。楽しい旅行がさらに楽しくなる。旅行の醍醐味ですね。

 

 

 

そして、この日の翌日も、2日連続でテーマ性のあるスケジュールを組んでみました。さて、そのテーマと旅程は一体どんなものなのでしょう?

 

フランツさん、これ観に行ったんですか!笑 というまさかの観劇も登場しますよ~。1つ東京での記事を挟んで、次の次からの3つの記事でご紹介します!ザルツブルクのフィナーレ、乞うご期待!