今回GWの旅行先をウィーンにしたのは、ウィーン・フィルによるバーンスタインとマーラーのコンサートを見つけたからでした。ウィーン・フィルがレナード・バーンスタイン生誕100周年をお祝いするとしか思えないプログラム、バーンスタインの大ファンとして、聴きに行かない選択肢はありませんでした。

 

 

Wiener Philharmoniker

Großer Musikvereinssaal

 

Dirigent: Daniel Harding

Alt: Elisabeth Kulman

 

Leonard Bernstein

Symphonie Nr. 1, „Jeremiah“

für Alt und Orchester

 

- Pause -

 

Gustav Mahler

Symphonie Nr. 5 Cis-Moll

 

 

このコンサート、実は見つけた時の指揮者はズービン・メータさんでした。ただし、その後、体調不良でキャンセルとなってしまいました…。イスラエル・フィルとの来日公演もキャンセルになったのはご存じの通りです。メータさんのご回復を心よりお祈りしています。しかし、ダニエル・ハーディングさんが曲目を変えずに引き受けていただいたのは、本当にありがたい限り。

 

 

前半はバーンスタイン/交響曲第1番「エレミア」。今年は都内の公演では、なぜか交響曲第2番「不安の時代」に集中していますが、遂にエレミアが聴けます!私はこの曲の実演は、遠い過去に尾高忠明さんの指揮、あのクリスタ・ルートヴィヒさん!の歌で聴いたことがあります。第3楽章が旧約聖書のエレミアの哀歌から取られているなど、大いにヘブライの雰囲気を感じる曲です。

 

 

第1楽章「予言」。冒頭の深い響き、だんだんとクレッシェンドしていって、ウィーン・フィルの音圧が凄い!途中の木管が不協和音で進んでいくところの悲痛な響き。そしてトゥットィでのさらなる悲痛な叫びの音楽、ゾクゾクきます!最後は静まり、永遠の虚無が訪れたかのよう。

 

第2楽章「冒涜」。まず、この難しい音楽をウィーン・フィルが弾いていることに感動。しかも、あの雅なウィーン・フィルが、切り裂くような鋭い響きで、しかもめちゃめちゃ上手い!打楽器が入るところはテンポが非常に複雑で難しい音楽ですが、それを完璧にこなすウィーン・フィル!

 

第3楽章「哀歌」。大好きなエリザベート・クルマンさんのアルトのふくよかな響き、魂の歌に魅了されます!完璧な歌ですが、もう技術とか、そんなことは全く感じさせず、情感いや情念がビンビンと響きます。後半は大いに盛り上がり、クルマンさんの哀しさを伝える歌がムジークフェライン中に響き渡ります。最後は静かに、しんみり名残惜しく終わりました。

 

バーンスタイン・イヤーに聴く、ウィーン・フィルによるエレミア!感無量の演奏でした!


 

 

後半はマーラーの5番。私、この感想をコンサートの後に、ムジークフェライン近くのカフェで書きましたが、席に着いてしばらくの間は、放心状態で筆が全然進みませんでした(笑)。とにかく圧倒された演奏でした!それほどにムジークフェラインで聴くウィーン・フィルのマーラー5番は素晴らし過ぎました!

 

 

第1楽章。冒頭のトランペットから非常に惹き付けられる演奏。続く弦の響きがホールに共鳴してビンビン来ます。ハーディングさんはややゆったり目の指揮。特に第1主題の3回目の前をたっぷりやっていたのが印象的でした。

 

第2楽章。冒頭の激情の音楽が大いなる切迫感を持って迫ってきます!途中チェロが慎重にソロを弾く場面。まるでこの世に存在しないかのようにはかなく、亡霊のように響くチェロ。ミ~ファ~ミ~に続いてティンパニ連打からの音楽をもったいぶって、たっぷり劇的に鳴らして感動的。

 

第5楽章の主題が降臨するところは、アッチェレランドをしっかりかけて、巨大な盛り上がり!第2楽章は冒頭からずっと涙涙…でしたが、ここでほとんど号泣するくらい大きな感動に包まれました!いや~、凄すぎる!

 

第3楽章。この楽章はともすると支離滅裂な音楽で、退屈してしまう危険性をはらんでいると個人的に思いますが、これがウィーン・フィルで聴くと、素っ頓狂な音を出すシーンも含め、もうピタピタッとはまります。何しろホルンが素晴らし過ぎる!途中の3拍子の音楽の場面もさすがの雰囲気でした。

 

第4楽章。ここはアダージェットということで、どうしても特別な感情を持ちますが、ウィーン・フィルだと、曲全体の流れの中で、とても自然に聴けます。弦楽とハープがひたすら美しい!途中のグリッサンドの下降はしっかり、途中、弦が聴いたことのないようなエグイ音も出して、ただ美しい音楽ではないことを示します。クリムトやシーレの絵画とシンクロします。

 

第5楽章。ここも第2楽章に続いて振幅が大きく、激しい演奏。ハーディングさん、大いに盛り上げて、さすがです!本当に素晴らしい指揮。その振れ幅の大きな音楽を、ウィーン・フィルがもの凄い音圧で鳴らして、ピタピタッとはまります。最後、終結部は速く入って、そのままさらに加速しながら駆け抜けました。いや~、凄すぎる!!
 

 

何この壮絶かつ曲の魅力を200%伝える名演!!!

 

ムジークフェラインの世紀末の妖しさも内包した黄金の雰囲気の中、その空間に見事に調和するウィーン・フィルの音色で聴くマーラー5番、もう圧巻でした!!!

 

 

今回の旅では没後100周年ということで、クリムトやシーレの退廃的で情念のこめられた、でも美しい絵をいろいろ観てきましたが、その流れの中で、ムジークフェラインで、ウィーン・フィルで聴くマーラー5番。これはめちゃめちゃヤバかったです!正に今回の旅の集大成となりました!

 

観客も演奏が終わった後に、盛大なブラボー!多くの人が即座に立ち上がって熱狂的な拍手!やはりマーラー5番はウィーンの音楽であることを確信。退廃さ、えぐみ、悲痛な叫び、妖しい輝き、そしてひたすら美しいウィーン・フィル。個々のパートはよく主張しながら、全体が完璧なまでに調和している凄さ!

 

ということで、ただただ、圧倒された空前絶後の演奏でした!間違いなく生涯で最も思い出に残るコンサートの一つです。そして、正直この後10年くらい、マーラーの5番を聴かなくてもいいかも知れません。そのくらいに素晴らしいマーラー5番でした!

 

 

 

(写真)マーラー5番の愛聴盤はもちろんレナード・バーンスタイン/ウィーン・フィル。情念が渦巻く演奏で、特に第2楽章が圧巻です。ハーディングさんとウィーン・フィルの演奏も、このCDの演奏を彷彿とさせるものがあり、極めて感動的でした!このハーディング/ウィーン・フィルのライヴ、CDにならないかな?と大いに期待。

 

 

(写真)開演前のムジークフェライン。今回の旅でもムジークフェラインのコンサートは鉄板に素晴らしかったです!

 

(写真)終演後に立ち寄ったカフェにて、トプフェン・シュトゥルーデル。あれ!?いつものように、コンサートの後にお酒飲みに行かないの?はい、そうなんです。その理由は…、次回の記事で!