新国立劇場のオペラ、ワーグナー/タンホイザーを観てきました。何と言っても、ステファン・グールドさんのタンホイザーが非常に楽しみです!

 

 

新国立劇場

ワーグナー/タンホイザー

 

指揮:アレホ・ペレス

演出:ハンス=ペーター・レーマン

美術・衣裳:オラフ・ツォンベック

照明:立田 雄士

振付:メメット・バルカン

 

領主ヘルマン:妻屋 秀和

タンホイザー:ステファン・グールド

ヴォルフラム:デイヴィッド・スタウト

ヴァルター:鈴木 准

ビーテロルフ:青山 貴

ハインリヒ:今尾 滋

ラインマル:後藤 春馬

エリーザベト:サビーナ・ツヴィラク

ヴェーヌス:エグレ・シドラウスカイテ

牧童:前川 依子

4人の小姓:和田 しほり/込山 由貴子/花房 英里子/長澤 美希

 

合唱:新国立劇場合唱団

バレエ:東京シティ・バレエ団

管弦楽:東京交響楽団

 

 

 

 

 

私が新国立劇場でタンホイザーを観るのは、2007年のプルミエ公演、2013年、2019年、そして今回で4回目と皆勤賞。お財布に限りのある中、いろいろなオペラを観たいので、同じ演出の再演は基本的に観に行かないようにしていますが、私はタンホイザーという作品が大好きなんです。

 

 

 

えっ?いやっ、決して自分がタンホイザーに似ているから、とかではなくて、笑。

 

 

 

ブログには前回2019年に観た時の感想記事を詳しく書いているので、今回は音楽面を中心にごくごく簡単に。

 

(参考)2019.2.2 ワーグナー/タンホイザー(新国立劇場)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12438326213.html

 

 

 

第1幕。序曲とバッカナールの音楽の後、タンホイザーとヴェーヌスの掛け合いが非常に聴き応えあり!ステファン・グールドさんのタンホイザーはさすがの一言ですが、エグレ・シドラウスカイテさんのヴェーヌスが女神の気品や恋人が去ってしまう切なさをよく表わしていて、大いに惹き込まれました。

 

舞台転換で第2場になると、前川依子さんの牧童っぷりが見事!春の清々しい歌に加えて、シャルマイを吹くしぐさや帽子を手で押さえながら移動していくそぶりなど、とても雰囲気ありました。

 

タンホイザーがヴァルトブルクのミンネゼンガーたちと再開した後、戻ってこいと促すデイヴィッド・スタウトさんのヴォルフラムの歌が立派!ヴォルフラムは第3幕の夕星の歌が聴かせどころですが、第1幕もいいですね~。最後、第2幕の殿堂の主題が降臨するエンディングの音楽は期待感が高まって本当に好き。

 

 

 

第2幕。冒頭のエリーザベトの殿堂のアリアからタンホイザーとの二重唱が聴き応え抜群!サビーナ・ツヴィラクさんのエリーザベト、凛としていて見事でした。「愛の本質」についての歌合戦は、私は何度聴いてもタンホイザーの歌の方が好き、笑。

 

転調を上手く使って音楽的に魅力的なこともありますが、何より歌の内容が生き生きとしてリアリティがある。ヴァルターやビテロルフの理念先行のカチコチの歌を聴くと、そう言うけど、あなたたちは一体、これまで女性にアプローチしたことあるんですか?何事も経験してみないと分かりませんぞ?と、パパゲーノ大先生を師と仰ぐ私は思ってしまいます、笑。

 

エリーザベトの命請いの歌から始まり、男性合唱が活躍する場面はいつ聴いても泣ける…。サビーナ・ツヴィラクさんの魂の歌、男性合唱が迫力の盛り上がりを見せて、古典的な音楽と新しい音楽の見事な融合を感じます。このシーンは様々な演出の仕方がありますが、舞台中央にエリーザベトとタンホイザーを配して、周りを取り囲む新国立劇場のシンプルな演出は真に感動的です。

 

 

 

第3幕。タンホイザーの巡礼行とローマ教皇の拒絶を表わす序曲。ここは幕を閉じて音楽だけで物語るのがやはりいいですね!エリーザベトのマリアさまの歌、ヴォルフラムの夕星の歌ともに素敵な歌。弱音やゆっくりなテンポも入れて雰囲気を良く出ていました。

 

タンホイザーのローマ語りは、逆にステファン・グールドさんが強調を随所に入れた聴き応え抜群の見事なローマ語り!シンプルに緑の芽の奇跡を讃え、巡礼の主題が高らかに歌われたラストも感動しました!

 

 

 

いや~!新国立劇場のタンホイザー、ステファン・グールドさん、サビーナ・ツヴィラクさん、エグレ・シドラウスカイテさん、デイヴィッド・スタウトさんと主役が揃って、とてもクオリティの高い素晴らしい公演でした!

 

 

 

(なお、上記以外に、タンホイザーの作品だったり、ハンス=ペーター・レーマンさんの演出だったり、今回観て様々な発見があり、解釈を持ちましたが、新国立劇場や国内のオペラの感想記事では、とある理由から解釈の感想を詳しく書くのは控えようと思います。ただ、終演後、友人と美味しいドイツ料理とビール&ワインをお供に、それらの感想を語り合って大いに盛り上がりました。めっちゃ楽しかった!)

 

 

 

さて、今回、新国立劇場のタンホイザーを観に行った理由はもう一つありました。それは、昨年夏にバイロイト音楽祭で観たトビアス・クラッツァーさん演出のぶっ飛んだ&リアリズムを突きつける画期的なタンホイザーに大いに感銘を受けたので、それを反芻・比較しながら観てみたいと思ったからです。

 

(参考)2022.8.21 ワーグナー/タンホイザー(バイロイト音楽祭)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12776953342.html

 

 

比較的オーソドックスな新国立劇場の演出も改めていいなと思いましたが、バイロイト音楽祭のタンホイザーがどれだけ革新的な公演だったのか、大いに実感しました!違う演出を比較して観ると、物語の捉え方、解釈の違い、それを歌手がどんな歌や演技で示しているのか?本当に楽しいものですね。バイロイト音楽祭のタンホイザー役も同じステファン・グールドさんが歌ったのでなおさらです。

 

 

 

私がタンホイザーが大好きなのは、音楽の素晴らしさもありますが、捉えようによって本当に幅広い可能性を内包したテクストの存在も大きいです。ワーグナー自身が3つの伝説・逸話を絶妙に融合させて、自らがテクストを書いた物語の魅力と秘密に強く惹かれるんだと思います。

 

今回、新国立劇場のタンホイザーを大いに楽しんだところですが、これからもいろいろな演出の舞台を楽しんで、タンホイザーの魅力を堪能していきたい。改めてそう思った素晴らしい公演でした!

 

 

 

 

 

(写真)バイロイト音楽祭のタンホイザーで登場するキャンピングカー。大道芸一座のヴェーヌス一行はこれで移動・寝泊まりしますが、このキャンピングカーの上にぴょこんと立っている黄色のウサギ(小さいですが写真中央)が自由やユーモアの象徴として、いい味出しているんです!

 

(写真)そして今年の干支は奇しくも同じくうさぎ。写真は先日たまたま見つけていいなと思って購入した、うさぎの起き上がり小法師です。自由やユーモアはつまづいても必ず立ち上がる。自由やユーモアは決して屈しない。私も今年一年、この起き上がり小法師に力をもらって精力的に活動し、ぴょーん!と飛躍の年にしたいと思います!