素晴らしいモーツァルト・マチネを楽しんだ後、午後にはセビリアの理髪師を観に行きました。チェチーリア・バルトリさんがロジーナを歌う、とても楽しみな公演です!

 

 

Salzburger Festspiele

Gioachino Rossini

Il Barbiere di Siviglia

(Haus für Mozart)

 

Conductor: Gianluca Capuano

Director: Rolando Villazón

Sets: Harald B. Thor

Costumes: Brigitte Reiffenstuel

Lighting: Stefan Bolliger

Video: rocafilm

Choreography: Ramses Sigl

Dramaturgy: Christian Arseni

 

Il Conte d’Almaviva: Edgardo Rocha

Bartolo: Alessandro Corbelli

Rosina: Cecilia Bartoli

Figaro: Nicola Alaimo

Basilio: Ildebrando D'Arcangelo

Berta: Rebeca Olvera

Fiorello: José Coca Loza

Ambrogio: Max Sahliger

Domenico La Forza: Manfred Schwaiger

 

Philharmonia Chor Wien

Les Musiciens du Prince – Monaco

 

 

(写真)本公演のポスター。チェチーリア・バルトリさんのロジーナ(左)とニコラ・アライモさんのフィガロ。

 

 

 

ザルツブルク音楽祭では、毎年チェチーリア・バルトリさんが座長のような形で仲間たちと作り上げるオペラ公演がプログラミングされ、人気を博しています。少し小ぶりな劇場のハウス・フュア・モーツァルトで楽しめる、とても贅沢な公演。これまで何度か楽しんできましたが、今回はロッシーニ/セビリアの理髪師、しかもテノール歌手のローランド・ヴィラゾンさんが演出!?をされるということで、とても楽しみです!

 

(参考)2017.8.18 ヘンデル/アリオダンテ(ザルツブルク音楽祭)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12321118303.html

 

(参考)2018.8.19 ロッシーニ/アルジェのイタリア女(ザルツブルク音楽祭)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12426795154.html

 

(参考)2019.8.10 ヘンデル/アルチーナ(ザルツブルク音楽祭)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12518538329.html

 

 

 

(写真)開演前のハウス・フュア・モーツァルト

 

 

会場に着くと、さすがに人気の公演だけあって、ズーへ・カルテ(チケット求む)のフリップを持った方々が沢山いました。

 

おやっ!?午前のモーツァルト・マチネでは、ホールに入る際に身分証明書が必要でした。すると、ここでのチケットの売買はそもそも成り立たないのではないでしょうか?(チケットを買っても、身分証明書がチケット印字の氏名と異なるので入れない。)

 

私、こういう時は気を利かせて、海外でも教えてあげることがよくありますが、今回は申し訳ないですが、スルーしました。理由は、会話でのやりとりがあると、それだけコロナの感染リスクが生じるから。

 

その場でただアナウンスするだけなら問題ないですが、こういう場合、往々にして詳しいやりとりに発展するからです。また、身分証明書のことをクリアする何か秘策があるのかも知れません?何となく申し訳ない気持ちも持ちつつ、ホールの中に入りました…。

 

 

 

さて、オペラです。舞台の背景に上記rocafilm製作の映像をふんだんに使ったり、フランケンシュタインや狼男が登場するなど、物語に映画の世界を取り入れた、とにかく楽しい舞台のセビリアの理髪師でした!

 

大きな特徴は映画のスタッフ(出演者とのやりとりや映像技術、雑用までこなす助監督?のような立ち位置の方)を黙り役で出していたこと。出演者との絡みが楽しかったですし、ロジーナの女優(つまりバルトリさん)に憧れる存在でホロリとさせられました。ただし、ずっと登場していて、無理やり絡んでいたように見えた動きもあったので、もっと出番を厳選した方がより良かったのかも?

 

また、観客は大いに笑って盛り上がっていましたが、登場人物全体の動きはそんなには洗練されていない印象で、単なるドタバタで笑わせていた部分が多かったようにも感じました。もっとも、セビリアの理髪師自体がドタバタ以外の何者でもないのかも?何しろ、初演では舞台に猫が紛れ込んで、観客の爆笑をかったオペラなので、笑。

 

 

ということで、堅いこと言わずに屈託なく楽しめた、エンターテインメントとしてめっちゃ愉快なセビリアの理髪師でした!ローランド・ヴィラゾンさんは演出はこれから経験を積まれていって、だと思いますが、ぜひこれからも楽しい舞台を期待します。とても印象に残ったのは、カーテンコールでの出演者同士の盛り上がりの凄さ!イタリアと中南米の国の歌手が揃って、ラテンの陽気さが満開でした!

 

 

(写真)休憩中のワンショット。ザルツブルク音楽祭は会場からザンクト・ペーター教会やホーエンザルツブルク城塞など、風光明媚な景色が味わえるのも魅力です。

 

 

 

歌手では、ロジーナのチェチーリア・バルトリさんは高速アジリタを駆使して、さすが!としか言いようがありませんでした。もう自由自在の至芸。何より、仲の良い歌手たちと楽しそうにロジーナを演じているのがいいですね。

 

バルトリさん以外では、特にフィガロのニコラ・アライモさんとベルタのレベッカ・オルヴェラさんが印象に残りました。以前にペーザロでリサイタルを聴いたことのあるアライモさんの活躍は本当に嬉しく、オルヴェラさんは上記のアルジェのイタリア女の公演でのエルヴィーラ役も最高でしたが、今回も歌も演技も抜群。第2幕のベルタのアリアで沢山ブラーヴァをもらっていました。

 

ちなみに、ニコラ・アライモさんは来年2月の新国立劇場のヴェルディ/ファルスタッフでタイトルロールを歌います。巨漢のアライモさんなので、お腹に詰め物をしなくてもファルスタッフを演じられるのかも?笑 めっちゃ楽しみです!

 

(参考)2018.8.16 ニコラ・アライモさんのバリトン・リサイタル(ペーザロ・ロッシーニ音楽祭)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12417220576.html

 

 

そしてバシリオは何とイルデブランド・ダルカンジェロさん!モーツァルトを歌うイメージがありましたが、バジリオを歌うようになったんですね!深々とした声で本当に素晴らしかった!そのうちヴェルディで聴きたいですね~。狼男を楽しんで演じていました。

 

バルトロは昨年の新国立劇場のチェネレントラでのドン・マニフィコ役が至芸だったアレッサンドロ・コルベッリさん。バルトロも見事でしたが、コルベッリさんが演じると、どうしてもユーモアや悲哀のニュアンスを取ってしまうので、バルトロなのにそんなに憎たらしく感じなかったのはご愛嬌、笑。

 

 

 

終演後はブラボーが沢山飛んで、観客総立ちで大いに盛り上がりました!こんな盛り上がりはコロナになってから全くなかったので、体感できて本当に嬉しい!

 

しかし、バルトリさんにしつこいブーイングをする観客が一人…。バルトリさんクラスになるともう自由自在のロジーナなので、自由に崩して歌っていたのが気に入らないんでしょうか?ただし、そのブーイング、盛大なブラボーにかき消されていて、めっちゃスカッとしました!

 

こういうブーイングする人だったり、東京でも特定のオケや演奏者に繰り返しケチつける人たちには、心底うんざり。コロナの期間中に大変な思いをされてきたアーティストの方々に対して敬意の気持ちが少しでもあるなら、そんなことは絶対にできないはず。

 

気に入らなければ、単に聴きに行かなきゃいいだけでしょ?????

 

 

 

(写真)私のセビリアの理髪師の愛聴盤は、1988年のジュゼッペ・パタネ盤。バルトリさんのロジーナ、ウィリアム・マッテウッチさんのアルマヴィーヴァ伯爵、レオ・ヌッチさんのフィガロと、揃いに揃った名盤中の名盤です。バルトリさんのロジーナを生で初めて聴くことができ、非常に感慨深かったです。なお、指揮者のパタネさんは大野和士さんの師匠ですね。

 

 

 

(写真)セビリアの理髪師の後は、大好きなフュルストのケーキで一息。4時間近いオペラの後ですが、この後、もう一つオペラを観るので、燃料をしっかり補給します。なお、左奥には大好物のモーツァルトクーゲル様が鎮座されていらっしゃいます、笑。

 

そのもう一つのオペラですが、これが神演出の公演!さらにザルツブルク音楽祭に(アスミク・グリゴリアンさんに続き)新たなスターが誕生した瞬間を目撃できた最高のオペラ公演!次の記事で!(続く)