(夏の旅行記の続き) 素敵なモーツァルト・マチネで幸せ一杯の気分に。そして午後にはハウス・フュア・モーツァルトにオペラを観に行きました。ヘンデルのアルチーナ、チェチーリア・バルトリさんが出演する公演です!
Salzburger Festspiele 2019
Georg Friedrich Händel
Alcina
(Haus für Mozart)
Musikalische Leitung: Gianluca Capuano
Regie: Damiano Michieletto
Bühne: Paolo Fantin
Kostüme: Agostino Cavalca
Licht: Alessandro Carletti
Video: rocafilm
Choreografie: Thomas Wilhelm
Choreinstudierung: Markus Obereder
Dramaturgie: Christian Arseni
Alcina: Cecilia Bartoli
Ruggiero: Philippe Jaroussky
Morgana: Sandrine Piau
Bradamante: Kristina Hammarström
Oronte: Christoph Strehl
Melisso: Alastair Miles
Oberto: Moritz Gemel (Wiener Sängerknabe)
Tänzer: Rouven Pabst, Hector Buenfil Palacios, Stefano De Luca, Tomaz Simatovic, Robert Söderström, Joan Aguilà Cuevas, Andrew Cummings, Erick Odriozola
Alte Alcina: Angelika Nieder
Astolfo: Wolfgang Rauscher
Bachchor Salzburg
Les Musiciens du Prince-Monaco
(写真)ザルツブルク祝祭大劇場に掲示されていたアルチーナのポスター
(写真)開演前のハウス・フュア・モーツァルト
ザルツブルク音楽祭では、チェチーリア・バルトリさんが出演するオペラの公演が、音楽祭の目玉の一つとなっています。それを3年連続で観ることのできる喜び!
(参考)2017.8.18 ヘンデル/アリオダンテ(ザルツブルク音楽祭)
https://ameblo.jp/franz2013/entry-12321118303.html
(参考)2018.8.19 ロッシーニ/アルジェのイタリア女(ザルツブルク音楽祭)
https://ameblo.jp/franz2013/entry-12426795154.html
しかし、今回はいささか勝手が違いました。苦手なヘンデルのオペラにも関わらず予習の段階からはまったアリオダンテ、既に手の内に入っていてただただロッシーニの音楽を楽しむだけだったアルジェのイタリア女とは異なり、アルチーナの音楽はどうも頭に入ってこないのです…。
勢いの良いアリオダンテに比べると叙情的な音楽が多く、取っ掛かりをなかなか見出せないのです。音楽が十分に入っていない中、不安いっぱいで観に行きました。
あらすじをごく簡単に。魔女アルチーナは騎士ルッジェーロを魔法で虜にしています。ルッジェーロの恋人ブラダマンテは男装してリッチャルドと名乗り、ルッジェーロを取り戻しにアルチーナの島に来ますが、アルチーナの姉妹のモルガーナに見初められてしまいます。果たしてブラダマンテは無事にルッジェーロを取り返すことができるのでしょうか?
第1幕。序曲ではチェチーリア・バルトリさんのアルチーナが魔法で舞台を造って行く演技が付きました。沢山の男性を自由に操る演技。私の魔法あるいは魅力があれば、どんな男性も意のままに操れる。そんな印象の演技です。ダンサーの男性たちがバタバタ投げ出されて見応え十分でした。
男性のリッチャルドに扮した女性のブラダマンテが島に来てモルガーナと遭遇。モルガーナはリッチャルドに一目惚れします。サンドリーヌ・ピオーさんのモルガーナの歌が素晴らしい!モルガーナはホテルのサービスの女性で、オレストはその上司の役柄のようです。
ルッジェーロの歌。カウンターテナーのフィリップ・ジャルスキーのさんの技巧の限りを尽くした、高音の連続する歌が見事!そして、アルチーナの悲しみの歌。バルトリさんと言えば高速アジリタをバリバリ歌って魅せますが、ここはしっとり叙情的に歌って拍手喝采でした!
再びサンドリーヌ・ピオーさんのモルガーナが、明るい調子の歌でリッチャルドに迫るシーン。難しいテンポの速いコロラトゥーラをビシバシ決めて、黒の下着姿もコケット。一昨年のアリオダンテのダリンダも魅せましたが、サンドリーヌ・ピオーさんって、本当に凄い!
チェチーリア・バルトリさんとサンドリーヌ・ピオーさんの二枚看板を聴けるのが、ザルツブルク音楽祭ならではの素晴らしさですね。
第2幕。背景のスクリーンにはルッジェーロの師アトランテからの魔法の指輪。それを受け取りルッジェーロは正気に戻ります。ルッジェーロに正体を明かしたブラダマンテのアジリタを駆使した歌が素晴らしい!クリスティーナ・ハマーストレムさんはブラダマンテにぴったりでした。2人は仲を取り戻しましたが、アルチーナにはそれを悟られないようにと、巧みな演技が付きます。
しかし2人でアルチーナから逃げようとしていることが、とうとうバレてしまいました…。バルトリさんのしっとりと悲しんだ上で、王女の怒りを爆発させる激しい歌!さらに魔力が効かない嘆きの歌の後、再びアジリタを駆使した抜群の歌!バルトリさんの超絶技巧が冴え渡った迫力の歌に、会場は大盛り上がりでした!
後ろのダンサーたちの演技もとても印象的。ト書きにない老アルチーナを出して来て、象徴的な舞台に仕立て上げていました。演出はダミアーノ・ミキエレットさん。5月にフランクフルトで観た、フランツ・シュレーカー/はるかなる響きに続き魅了されました。
第3幕。実は女性だったことが分かり、リッチャルドと別れたモルガーナは元の恋人のオレストの元へと戻りますが、オレストは割り切れない気持ち。サンドリーヌ・ピオーさんは際どい演技も含め、あの手この手でオレストの気を惹きます。ピオーさんの女優っぷりに魅せられました!
ルッジェーロの勢いのあるオケとの掛け合いが楽しいリズミカルな歌が本当に素敵!そして再びアルチーナの叙情的な嘆きの歌。今回のバルトリさんはしっとりした歌で魅せます。
そして、舞台にはアルチーナのほかに、黙り役の老アルチーナと少女のアルチーナまで登場。老アルチーナは栄枯盛衰を、少女のアルチーナは大人なアルチーナにも存在するピュアな心を表していたのかな?と思いました。
恐ろしい魔女ですが、その魔女にも人生があり、終わりがある。アルチーナの悲しい人生に焦点を当てた演出だと思いました。最後のシーンでは、魔法の源である鏡をルッジェーロに割られてしまい、アルチーナは老アルチーナの姿になって息耐えました。解放された人々の喜びの合唱で幕を閉じましたが、もしかすると、アルチーナ自身も解放されたのかも知れません。
いやはや、観る前は不安だらけでしたが、結果として、かなり楽しめた公演でした!ザルツブルク音楽祭に出演するチェチーリア・バルトリさんやサンドリーヌ・ピオーさん始め超一流の歌手で観ると、作品の魅力がグイグイ伝わりますね。
ジャンルカ・カプアーノ指揮/Les Musiciens du Prince - Monaco(モナコ公の音楽家たち)もキレキレの演奏、アリアでは抑揚をたっぷり付けた伴奏で本当に素晴らしかったです。
一方、いまだに鼻歌まじりにアリアの旋律を歌うことのあるアリオダンテに比べると、アルチーナは叙情的な歌が多くて、まだ十分に乗って聴けないもどかしさも感じました。ただ、観る前は今回の旅の中で一番不安視していた公演を、居眠りすることなく(笑)無事に乗り切って、ホッと一安心。
それにしてもやはり長~いオペラ(笑)。15:00に始まって、休憩を2回挟んで、終演は19:15でした。あれ!?次のオペラの開演時間は?20:00で~す!(笑)(続く)