次期首席指揮者、ファビオ・ルイージさんがN響に客演するコンサートを聴きに行きました。曲目はブルックナー/交響曲第4番のみ。直球勝負の公演です!

 

 

NHK交響楽団第1943回定期演奏会Cpro.

(東京芸術劇場コンサートホール)

 

指揮:ファビオ・ルイージ

 

ブルックナー/交響曲第4番変ホ長調「ロマンティック」

 

 

 

ファビオ・ルイージさんは4番だけですが、本番前にN響の弦楽セクション5人により、ブルックナー/弦楽五重奏曲ヘ長調の第3楽章が演奏されました。この曲は今年9月にライナー・ホーネックさんと紀尾井ホール室内管弦楽団による名演を聴いたばかりです。今日はどうでしょうか?

 

(参考)2021.9.17 ライナー・ホーネック/紀尾井ホール室内管弦楽団のブルックナー&ブラームス

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12698916350.html

 

 

9月の時の室内オケ版でなく、今日は弦楽五重奏ということで、つましさや侘しさをより感じた演奏でした。対位法の大家ジーモン・ゼヒターから勉強のしすぎを心配されたくらい、対位法を極めたブルックナーの作曲の妙を感じたり、旋律を繰り返す中で一音ずつ変えてじんわり進む、いじらしさに心惹かれたり。

 

N響のみなさんの素晴らしい弦楽五重奏を聴きながら、まるでカスパー・ダーヴィド・フリードリヒの絵画のような、スイスの厳しい冬に耐える健気な草花、そしてそこに宿るロマンを感じました。最後はブルックナー/交響曲第7番第2楽章のラストのような、充足感に満たされた温かい音楽。とても心地良かったです。

 

 

今週も全力投球で仕事を頑張った一週間。その終わりに、この優しい音楽が何と心に沁みることか!土日の方がより集中して音楽を楽しめますが、開放感を一番味わえる金曜夜のコンサートには、やはり格別なものがありますね。

 

(なお、N響の素晴らしい演奏を聴きながら、フランツ、神の啓示が舞い降りたのか、とある意欲的な企画を思い付きました!いつの日か実現させて、本ブログでご紹介したいと思います。)

 

 

 

さあ、いよいよ本番です。ブルックナー/交響曲第4番は国内では2013年に聴いたスタニスラフ・スクロヴァチェフスキ/読響、国外では2018年にザルツブルク音楽祭で聴いたヘルベルト・ブロムシュテット/ウィーン・フィルの演奏が強く印象に残っています。今日はどうでしょうか?

 

(参考)2013.10.12 スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ/読響のスクロヴァチェフスキ&ブルックナー

https://ameblo.jp/franz2013/entry-11635119466.html

 

(参考)2018.8.18 ヘルベルト・ブロムシュテット/ウィーン・フィルのシベリウス&ブルックナー(ザルツブルク音楽祭)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12419336324.html

 

 

第1楽章。冒頭のホルンが見事!ゆっくり目の入りで、丁寧に音を紡いで行きます。展開部では少し速くなり、主題が帰ってくる前のコラール風の金管が活躍する場面はかなりたっぷり!充実の響き、非常に聴き応えのある第1楽章でした。

 

第2楽章も引き続きゆっくり目の演奏が続きます。そのまま慌てず騒がず、辛抱強くテンポを保って行きましたが、後半の飛翔する場面は再びたっぷりで壮大な音楽!第2楽章までは自然体かつ山場では大きく鳴らす、とても恰幅の良い演奏でした。

 

第3楽章。気持ち速くなりました。ルイージさん、ここはホルンが活躍する狩りの音楽なので、いよいよ走らせるかな?と予想しましたが、思ったより抑制的。中間部も音を抑えて、何か諦念すら感じさせます。狩りをする側もいずれは死を迎える。何か諸行無常だったり、ヤナーチェク/利口な女狐の物語で示されるような、自然の輪廻だったりを感じました。

 

第4楽章。冒頭の盛り上がりはいつもより金管の存在感を感じ、満を持して来たか!と期待大。その頂点のシンバルの一撃に身構えたら、シンバルは入らず、逆に何とここで急激に走りました!ここまで走った表現は初めてでかなり衝撃的!思わず「うわ~!」と声出しそうになりました!まるでベートーベンのよう!会場のみなさんもびっくりしたのでは?

 

その後も第1~3楽章には見られなかった、ドラマティックな表現でグイグイ進めます。第1主題に戻る前の決然とした弦楽はハッキリクッキリ切って、その後にこだまする木管も点画のような味わい。繰り返しの第1主題では副旋律の木管を立体的に浮き立たせて、期待感満載!随所に思い切った表現が感じられて、大いに魅了されます!

 

第4楽章にはもともと、森の神秘や、それを通じての信仰体験のようなイメージを持っていましたが、今日のファビオ・ルイージさんの動的な指揮によるドラマティックな演奏を聴くと、ラス前の長調の盛り上がりと荘厳なラストも相まって、何か人の一生の大団円や何事かの成就が描かれているような印象を持ちました。オペラも得意なルイージさんの卓越した表現力!N響の見事な演奏もあって、大いに魅了されました!

 

 

私は過去にファビオ・ルイージさんのブルックナーを聴いたことがあります。2007年にウィーンのムジークフェラインザールで聴いた、ウィーン交響楽団とのブルックナー/交響曲第8番。しかも原典版。第3幕後半の盛り上がりでシンバル3連発が入って、大いに驚きましたが、ルイージさんがあたかもマーラーのように熱くブルックナーを振っていたのがとても印象的でした。あれから14年経ちましたが、今日の第4楽章の指揮に相通じるものを感じました。

 

 

終演後は観客のみなさんによる、やんやの盛大な拍手。かなり盛り上がっていましたね~!ファビオ・ルイージさん、オケが下がった後も2回出て来られて、万雷の拍手に丁寧に感謝のおじぎをされていました。この熱いブルックナーを聴かせてくれる指揮者が、N響の新しいシェフになる!ファビオ・ルイージさんとN響の明るい未来を確信した、素晴らしいコンサートでした!

 

 

 

 

 

(写真)今日は金曜の夜。このところ、あまりにもお約束過ぎて、少しは捻れ!と、お叱りを受けそうですが、笑、素晴らしい音楽の後は美味しいお酒で決まりです。

 

リッカルド・ムーティさんとウィーン・フィルの後はウイスキーベースだったので、目先を変えて、今日はブランデーベースのカクテル。まずはその代表格のサイドカーから。ブランデーにコアントローとレモンが効いて、スッキリした味わい。週末に疲れた身体をクールダウンするには最高の一杯です。

 

 

(写真)続いて大好きなフレンチ・コネクション。ブランデーとアマレットによるカクテルですが、実は、先週金曜にリッカルド・ムーティさんの80歳のお祝いとして楽しんだゴッドファーザーのベースを、スコッチウイスキーからブランデーに変えたバリエーションです。

 

同じくイタリア人指揮者のファビオ・ルイージさんに敬意を表して、イタリアのリキュールであるアマレットで韻を踏んでみました。ゴッドファーザーも美味しいですが、フレンチ・コネクションの透き通るような甘さは鉄板に美味い!ブランデーとアマレットのケミストリーにより、正に1+1が3にも5にも10にもなる、カクテルの醍醐味を大いに感じます。

 

 

こうして、その時の気分によってカクテルを即興で出し入れして選ぶのは、とても楽しいものです。そして素晴らしい演奏の余韻と美味しいお酒を味わいながら、今日の演奏はこういうことを表現していたのかな?と、コンサートを反芻しつつ、あれこれ想像を巡らすのは本当に楽しい。素晴らしい音楽とお酒とともにある人生、本当にありがたい限りです。

 

 

最後に、みなさま、今週も本当にお疲れさまでした。良い週末をお過ごしください!