沼尻竜典さんがN響に客演するコンサートを聴きに行きました。何と言っても、フランツ・シュミットの交響曲第2番が楽しみです!

 

 

NHK交響楽団第1942回定期演奏会Apro.

(東京芸術劇場コンサートホール)

 

指揮:沼尻 竜典

ピアノ:アレッサンドロ・タヴェルナ

 

ウェーバー/歌劇「魔弾の射手」序曲

リスト/ピアノ協奏曲第2番イ長調

フランツ・シュミット/交響曲第2番変ホ長調

 

 

 

このコンサート、もともとはファビオ・ルイージさんが振る予定でした。しかし、コロナの入国条件が合わず客演できなくなり、代わりに沼尻竜典さんが振ることになりました。日本はかなり下火になっているものの、世界的にまだまだ非常事態。これは仕方ありません。

 

ただ、この一報を聞いた時、最初は大きく落胆しました…。沼尻さんが代役を引き受けてくれるのは本当にありがたいことですが、極めてレアな曲であるフランツ・シュミットの2番を振れる日本人指揮者はまずいないだろう、曲目が変わるだろう、と思っていたからです。ああ~、めっちゃ好みの曲の実演を聴く機会がなくなってしまうのか…。

 

しかし、指揮者は沼尻さんに代わるものの、プログラムはそのまま、という追加情報を確認できました!ええ~!本当ですか!やったー!凄すぎる!沼尻さん、ブラボー!!!

 

 

それは、この日のコンサートの大いなる感動が約束された瞬間でした!

 

 

 

まずはウェーバー。ウェーバーの悲壮感漂う音楽に、N響のオケの質感がよく合っていて、素晴らしい聴きものでした!オペラに精通された沼尻さんの指揮も、とても雰囲気があって心憎い限り。がっつり聴き応えのある魔弾の射手でした!

 

この序曲を聴きながら思い出したのは、2008年の新国立劇場のオペラ公演。エディット・ハッラーさんのアガーテとユリア・バウアーさんのエンヒェンがとても良かったですが、さらに第2幕の狼谷の演出がかなり攻めていて、悪魔のザミエルが姿を現すシーンは、舞台をいっぱいに使った衝撃的な演出で、かなり驚いたことを思い出しました。

 

 

 

次はリスト。よく演奏されるピアノ協奏曲は1番ですが、この日は2番。しかし、派手さときらめきに溢れて、やはりリストの協奏曲だな~、という印象です、笑。アレッサンドロ・タヴェルナさんのもったいぶった恰幅の良いピアノが見事。アンコールのジャズっぽいフリードリヒ・グルダの曲も素晴らしかったです。

 

 

 

後半はいよいよ楽しみにしていたフランツ・シュミットの2番!フランツ・シュミット(1874-1939)はウィーンの作曲家&チェリストで、先週に交響曲第4番を聴いたばかり。今日はより濃密なロマン、めくるめく感の半端ない交響曲第2番。とても楽しみです。

 

(参考)2021.11.5 角田鋼亮/郷古廉/日フィルのJ.シュトラウスⅡ&コルンゴルト&フランツ・シュミット

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12709226438.html

 

 

第1楽章。穏やかな冒頭の後、すぐに盛り上がる場面。フランツ・シュミットの分厚いオーケストレーションを大オーケストラが鳴り響かせて、まるで東京芸術劇場のオルガンが鳴っているかような錯覚を覚えました!ホルンに至っては何と9本!前から4本、3本、2本と編隊を組んで、視覚的にも非常にインパクトありました!

 

ホルンの先導に続いての弦楽のノスタルジックで美しい第2主題はいいですね~!続く木管の高音からの見事な舞い降りっぷり、N響の木管セクションが素晴らしい!第1楽章はR.シュトラウスの高音の陶酔の音楽、特にオペラ「影のない女」第1幕の侍女たちのシーンや、魔法で魚が鍋に入るシーンの音楽に似た雰囲気を感じました。

 

展開部で不協和音の金管が厳しく差し込んで、短調で盛り上がった後に、爆発的に長調に転じるスペクタクルな瞬間!大いなる感動!繰り返しの第2主題でのヴァイオリンのずり上げの懐かしい音色にキュンときます。もう何もかも素晴らしい!感動の連続の第1楽章!

 

 

第2楽章。初めは素朴な変奏曲で進みますが、だんだん妖しい調性になっていき、頬が緩みます、笑。そして、真ん中くらいから、ほとんどリムスキー=コルサコフ/シェエラザードばりのエキゾチックな旋律が出てきてあざやか!その旋律が高まって、弦楽や金管がそろって半音階で揺れるように落ちていく場面!精緻なN響の演奏がすこぶる素晴らしい!たまらず、昇天!笑

 

続く、一見爽やかそうに見えて、調性の振れ幅がのっぴきならないワルツにも大いに魅了されます。ハンス・ロットの交響曲でも第3楽章でワルツが効果的に使われていますが、この辺りはウィーンの作曲家ならでは、ですね~。一昨日に聴いたウィーン・フィルのアンコール(皇帝円舞曲)に続いて、ワルツに大いに心揺さぶられる喜び!

 

 

第3楽章は悲しげな短調の入り。その後に現れる明るい未来を予感させる弦楽は本当にいいですね~!ホルンから各楽器に展開されるフーガも期待感満点、ゾクゾクします!盛り上がっていく音楽の雰囲気は、どことなくアイヴズ/交響曲第2番のラストに似て、わんさか感が半端ない!

 

そして迎える圧倒的なコーダ!高まりの中で第2楽章のエキゾチックな旋律など、様々な旋律が重なり合い、もの凄い高揚感!ほとんどブルックナー5番のラスト、あるいは私が愛して止まないヴィルヘルム・フルトヴェングラー/交響曲第1番のラストのよう!この壮大な音楽を、沼尻さんが音量で制圧することなく、透明感を保ってN響を響かせていたのにも大いに唸りました!

 

 

 

いや~、フランツ・シュミットの2番、沼尻さんとN響による、圧巻の演奏!めっちゃ素晴らしかったです!特に9本のホルン隊、木管のみなさまGJ!お見事でした!そして、この公演を成り立たせてくれた沼尻さんには、最大限の敬意を表させていただきます!

 

 

 

今年はなぜかフランツ・シュミットの交響曲の当たり年となりました。6月に読響が4番、11月に日フィルが4番、そしてこの日のN響の2番です。年に3回もフランツ・シュミットの交響曲が演奏される都市なんて、世界中で多分、東京以外にないですよ???あってもウィーンかロンドンまで。とっても貴重な機会です。

 

2019年に大曲のシェーンベルク/グレの歌が読響・都響・東響により3回演奏されたのも事件でしたが、今年のフランツ・シュミット3連発も、2021年はそういう特別な企画のあった年だったと年末の回顧で語られ、そう記憶されることでしょう。グレの歌に続いて、3回とも聴きに行けて、この上のない喜び!

 

東京のクラシック音楽の大ファンとして、これからも各オーケストラの意欲的な企画にはちゃんと反応して、しっかり聴きに行こうと思います!

 

 

 

(写真)コンサートの前はカフェでゆっくり。最近、スタバのスイートポテトのシフォンケーキが好きで、よく楽しんでいます。このところスイーツかお酒の写真ばっかりアップしているような気が…?甘いものとお酒、この振れ幅の激しさは、さながらフランツ・シュミットの2番の調性のよう?笑

 

11月前半は、11/3ウィーン・フィル(シューベルト) → 11/5日フィル(フランツ・シュミット) → 11/6ピョートル・アンデルシェフスキ/紀尾井ホール室内管弦楽団(モーツァルト) → 11/12ウィーン・フィル(モーツァルト&シューベルト&J.シュトラウスⅡ) → 11/14N響(フランツ・シュミット)と、ウィーンの音楽を存分に楽しむことができました。11月後半も素敵な公演が目白押し。とても楽しみです!