先週の2つのピアノ・リサイタルが素晴らしかったゲルハルト・オピッツさん。今度はブラームス/ピアノ協奏曲第1番を弾かれるコンサートを聴きに行きました。小泉和裕さんと都響による運命も楽しみです!

 

 

東京都交響楽団都響スペシャル2020

(東京文化会館大ホール)

 

指揮:小泉 和裕

ピアノ:ゲルハルト・オピッツ

 

ブラームス/ピアノ協奏曲第1番ニ短調

ベートーベン/交響曲第5番ハ短調《運命》

 

 

(参考)2020.12.8 ゲルハルト・オピッツ ピアノ・リサイタル(ベートーベン&シューマン&リスト)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12642880926.html

 

(参考)2020.12.11 ゲルハルト・オピッツ ピアノ・リサイタル(ベートーベンの最後の3つのピアノ・ソナタ)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12643828791.html

 

 

 

前半はそのブラームス/ピアノ協奏曲第1番。ブラームスの熱い想いが詰まった、個人的に、あらゆるピアノ協奏曲の中で一番好きな曲です。

 

 

第1楽章。冒頭のブワーンと鳴った都響の分厚い音に驚愕!まるで激情が音塊になって飛び出したかのよう。小泉和裕さんが振る時はもともと鳴りっぷりの良い都響ですが、さらにパワーアップした感じ。サントリーホールよりも音がより直接聴こえる東京文化会館の音響が、その印象を強めます。

 

そして始まるオピッツさんのピアノが感涙もの!ケレン味なく切々としたピアノを通じて、心に訴えるかけてくるものが非常に強いピアノ。正に正統派、正に王道です。

 

そして迎える大好きな第2主題。見事な白髪と髭を湛えたオピッツさんが真摯に弾く第2主題からは、まるで老ブラームスがクララへの愛情をためらいつつ打ち明けるような無垢さと優しさがあり、絶品の第2主題でした!

 

(参考)ブラームス/ピアノ協奏曲第1番ニ短調から第1楽章(+α)。私の大好きな第2主題は6:32~7:46、2回目が16:23~17:40です。

https://www.youtube.com/watch?v=m5Vjtt1v6Wk&t=485s (28分)

※Oxana Shevchenkoさんの公式動画より

 

 

ピアノが軽やかにアルペジオで降りてくる憧れに満ちた場面は、オピッツさんのまるで翼を得たかのような絶妙なタッチが見事!シューマンのピアノ協奏曲も聴いてみたくなります。第1主題に戻る場面では、小泉さんが渾身のリタルダンドで大いに曲想を盛り上げます!

 

そして2回目の第2主題は、1回目のヘ長調に対してニ長調。同じ旋律ながら、異なる印象を持ちます。ブラームスの作曲の素晴らしさ、それを見事に伝えるオピッツさんのピアノ!もう涙涙…。劇的かつ詩情に溢れた全く見事な第1楽章でした!

 

第2楽章。この楽章も、オピッツさんの真摯かつ絶妙なニュアンスに溢れたピアノで、曲想がどんどん入ってきます。その上で、途中の切々としたピアノを弾きながら高まっていく決めどころはたっぷり!第2楽章もいいですね~。

 

第3楽章。オピッツさんの冒頭のピアノは、とても歯切れ良く進み、第1楽章との雰囲気の違いに魅了されます。カデンツァの前のオケの迫力の音楽、小泉さんの渾身の指揮にも唸ります!

 

そしてカデンツァはオピッツさんによる万感の想いの込められた、それはそれは素晴らしいピアノ!こんなにも見事に短調から長調に、喜びへと転じる音楽があるのでしょうか?最高のブラームス!

 

 

 

きた~!ゲルハルト・オピッツさんと小泉和裕さんと都響による絶品のブラームス!

 

この曲の魅力を120%伝える素晴らしい名演!

 

 

 

私はこの曲はかなり思い入れがある曲なので、もう震えるほどの感動を覚えました!オピッツさんは大見得を切ることなく、ありのままの曲想を見事に伝えて感動を呼び起こす最高のピアノ、正に至芸です。

 

 

それにしても、ブラームス/ピアノ協奏曲第1番は、名演のライブに当たる確率がとても高い曲ですね。1994年のラドゥ・ルプー/N響、1998年のブルーノ・レオナルド・ゲルバー/N響、2014年のクリスチャン・ツィメルマン/バイエルン放送交響楽団、そして個人的に最高だった2012年のルドルフ・ブッフビンダー/新日フィル、などなど。

 

曲が名曲なのに加えて、きっと何か曲がピアニストを大いに駆り立てるものがあるのでしょう。

 

 

(写真)ブラームス/ピアノ協奏曲第1番ニ短調のピアノ2台4手スコア。フランツ、なぜこの楽譜を持っている!?(笑) はい、それはもちろん、第1楽章の第2主題を弾くためです。穏やかな音楽ですが、ブラームスならではの絶妙な転調も入って充実の響き。世の中にこんなにも真摯で切なくて憧れに満ちた旋律はないことでしょう。

 

 

 

後半はベートーベン/運命。先週、鈴木雅明さんとBCJの感動的な運命を聴いたばかりです。現代オケの都響による運命はどうでしょうか?

 

(参考)2020,11.28 鈴木雅明/バッハ・コレギウム・ジャパンのベートーベン/運命&ミサ曲ハ長調

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12641024460.html

 

 

第1楽章。冒頭のダダダダーン!はダダダが速くて、ダーンをたっぷり。小泉さんの意欲的な入りにゾクゾク来ます。ブラームス同様に都響が良く鳴って、迫力満点の演奏!メリハリやフレーズの紡ぎ方が絶品で、一気呵成に演奏された見事な第1楽章!

 

第2楽章。この楽章も都響の鳴りっぷりの良さ、特にチェロの奥深い響きに魅了されました。運命と言えば、第3楽章から第4楽章が大きな聴きどころですが、第2楽章も本当に素晴らしい音楽ですね。

 

第3楽章。前半は都響の瞑想的な雰囲気に満ちた演奏が素晴らしい。ホルンの連呼も抜群に良かったです。第2主題は小泉さんの熱い指揮のもと、コントラバスが喜々としてゴシゴシ音を出していて感動!

 

第4楽章。第3楽章ラストに引き続く冒頭はたっぷり!速かった第1楽章の主題との対比にゾクゾクして大いなる感動!ここからのめくるめく展開、都響の充実の響きによる怒涛の音楽には、ずっと心を奪われっぱなしでした!あらゆる楽器がよく鳴って、聴き応え満点!最後の追い込みも迫力があり、感動的なラスト!

 

 

 

いや~素晴らしい!燃焼し切った運命!大いに心を揺さぶられました!思うに、小泉和裕さんは曲のイメージが頭の中に完全に出来ていて、全く迷いがなく確信的に振るので、こんなにも充実の響き、聴き応え抜群の演奏になるんだと思いました。私は名指揮者である尾高忠明さんを聴いた時にそのことをよく感じますが、双璧だと思います。

 

 

終演後は盛大な拍手、大いに盛り上がって、いわゆる一般参賀もありましたが、おや!?小泉和裕さんの様子が少しおかしい?カーテンコールでなかなか出て来られなくて、(時間のかかる)個々の奏者を立たせることもありませんでした。コンマスに何か声を掛けていたので、おそらく精も根も尽き果てて、もう立っているのもギリギリの状態だったのでしょう。それほどの壮絶な指揮による運命でした!

 

 

小泉和裕さんとゲルハルト・オピッツさんと都響のコンサート、めちゃめちゃ素晴らしかったです!ベートーベン生誕250周年が終わろうとするこのタイミングで、素晴らしいベートーベン、そしてブラームスを聴けて感無量。極めて満足度の高いコンサートでした!

 

 

 

(写真)この日のコンサートはクラシック音楽の王道中の王道、まるで「ご飯に味噌汁」のようなプログラムだったので、終演後は、こちらも王道で山崎12年を楽しみました。その芳醇な香り、口の中一杯に広がる円やかな味わい。素晴らしかったコンサートの締めとして最高でした!