秋山和慶さんが久しぶりに読響に客演するコンサートを聴きに行きました。大好きな神尾真由子さんのプロコフィエフも非常に楽しみです!

 

 

読売日本交響楽団第602回定期演奏会

(サントリーホール)

 

指揮:秋山 和慶

ヴァイオリン:神尾 真由子

 

レスピーギ/組曲「鳥」

プロコフィエフ/ヴァイオリン協奏曲第1番ニ長調

レーガー/モーツァルトの主題による変奏曲とフーガ

 

 

 

まずはレスピーギ。第1曲「前奏曲」はワクワク感のある導入が素敵。第2曲「鳩」はフルートの低音のトリルが鳩を表わしているように感じました。第3曲「めんどり」を聴くと、ハイドンの83番を思い出しますね。プログラムにはご丁寧に、めんどりは「コッコッコッ」で、「コケコッコ」はおんどりだけと。勉強になります(笑)。

 

第4曲「夜鶯(ナイチンゲール)」ではチェレスタのグリッサンドが印象的。最後の第5曲「カッコウ」では、カッコウの鳴き声がベートーベン/田園交響曲の第2楽章とは比較にならないくらいに次々と連呼され(しかも様々な楽器で)、森のあっちこっちにカッコウがわんさか(笑)いるようで、とても楽しく癒されました。

 

 

 

続いて、楽しみな神尾真由子さんのプロコフィエフ。神尾真由子さんのロシアものは情熱的なチャイコフスキー、壮絶なショスタコーヴィチと最高のヴァイオリンが聴けますが、今日のプロコフィエフも楽しみで楽しみでなりませぬ。

 

(参考)2017.10.28 ビャナルソン/神尾真由子/東響のショスタコーヴィチ&R.コルサコフ

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12323654494.html

 

 

舞台に神尾真由子さん登場。美人の神尾真由子さんですが、今日は黒地に白のフワッとした生地のドレスで一際美しい!

 

 

第1楽章。弱音を効かせて、儚さを大いに感じるヴァイオリン。まるで、恋人に狂おしいほどに恋い焦がれて、冒頭から息絶え絶えになっているかのよう!最初の1分で曲に惹き込まれる、圧巻の演奏!やっぱり神尾真由子さんって凄い!次元が違う!

 

その後の第2主題のシニカルで、やるせない雰囲気の演奏も大いに心に響きます。果ては酒場で自暴自棄になった心境のようなヴァイオリン。プロコフィエフの曲想がグイグイ迫ってきます。ラストのピッコロとハープによる第1主題の再起のシーンは、まるでオペラの第1幕最後に憧れの恋人本人が登場して、夢見心地となるシーンのよう!

 

第2楽章。引き続き自分を見失ったような、アイロニカルな雰囲気の演奏。途中で旋律を切ったようなヴァイオリンが連続しますが、情熱のほとばしりからか、オケとズレる瞬間がスリリング!これはライヴならではの醍醐味ですね!何でもかんでもピタッと合った演奏が心を打つ訳ではありません。

 

最後はまるで魂を売り渡して、悪魔と踊っているかのような、音色を変えたもの凄いヴァイオリン!もはや凍り付くしかない会場。神尾真由子さんの突き抜ける表現力に圧倒されました!

 

第3楽章。この楽章も目標を見失ったかのような低調な音楽が続きますが、やがてテューバの旋律から高まっていく場面の盛り上がりが素晴らしい!これまでの音楽とは異なり、やるせない状況から抜け出て、前を向く意思を感じます。ラストの第1楽章の主題の回帰は、恋人同士が別々の人生を歩むことを納得し、お互いがそれを昇華させるような涙ながらのラスト!

 

 

いや~凄い、凄すぎた!またもや、神尾真由子さんのヴァイオリンに圧倒されました!この方の表現力はどんだけ凄いんだろう!

 

フランツ、演奏が終わった後、思わず「プロコフィエフのヴァイオリン協奏曲をいま初めて聴いた!」と叫びそうになりました!(ブラームスがアリーチェ・バルビの歌を聴いた時の逸話のまねっこ、笑)

 

 

この神尾真由子さんの魂を揺さぶる演奏に大いに共感しながら、私はどこか懐かしいものを感じて、この感覚は一体何だろう?と考えていましたが…、そうだ!これはレニーだ!つい最近レニー(レナード・バーンスタイン)の追悼記事を書いたこともあり、レニーの指揮に相通じるものを感じたんです!

 

楽譜に書かれた音符を深く洞察し、音符の裏にあるものをとことんまで追求して、それを何の躊躇いもなく極限までに表現する。以前からとても惹かれていた神尾真由子さんのヴァイオリンとレニーの指揮とがシンクロする、非常に感動的な瞬間でした。

 

 

 

後半はレーガー。ドイツの作曲家マックス・レーガー(1873-1916)はあまたある東京のコンサートでもなかなか演奏されません。昨年、大好きなレーガー/ピアノ協奏曲ヘ短調がN響の演目に上がり、大いに色めき立ちましたが、残念ながらピーター・ゼルキンさんが体調不良により来日されず…。(そして、そのままお亡くなりになってしまいました…。ご冥福を心よりお祈りします。合掌。) 今日は久しぶりにレーガーの大曲を聴けます。

 

 

この曲は前半はモーツァルトの旋律の変奏曲が展開されます。とても聴きやすいですが、時たまレーガーの独特な対位法による音楽が聴かれます。ブルックナーの師匠、対位法の大家のジーモン・ゼヒターが聴いたら、何となくダメ出しをしそうな(笑)不思議な対位法。レーガーの複雑な音楽に魅了されます。

 

全般的には変奏曲であり、エルガーのエニグマ協奏曲に似たものを随所に感じます。そして第8変奏はプログラムには「幻想曲風でロマン的色彩」とありましたが、私には、ほとんどスクリャービンやシマノフスキを思わせるような半音階の陶酔的な音楽に聴こえ、大いに魅了されました!

 

特にスクリャービン/交響曲第3番「神聖な詩」の第2楽章を思い出しましたが、聴かれたみなさまはいかがでしょうか?レーガーはバッハや古典派の音楽を大切にして、どちらかと言うと、地味で渋い作曲家、というイメージもありますが、なかなかどうして。

 

最後のフーガから盛り上がる場面は読響のホルン隊のみなさまが見事!曲想としては、ほとんどブルックナー5番の第4楽章を思わせます。堂々たるラストは秋山さんがテンポを落として迫力十分、迫りくる感動!素晴らしいレーガーでした!

 

 

 

秋山和慶さんと神尾真由子さんと読響のコンサート、非常に素晴らしいコンサートでした!この日から急に寒くなったためか(朝にコートなしで失敗したと思った人、きっと多いはず)、観客の入りはそこまで良くなかったですが、特に神尾真由子さんのプロコフィエフの後には、大いに熱のこもった拍手が湧き起こりました。秋山和慶さんはレーガーを上手くまとめてさすがの指揮。読響も先日の鈴木優人さんとのメシアンと同様、充実の響き、とても良かったです。

 

 

 

最後に。今日はどちらかと言うと渋い曲目のコンサートになるかと思いますが、上記の通り、思う存分に楽しむことができました。私は全くのシロウトですが、東京の1人の真摯なクラシック音楽のファンとして、このコンサートに大きな意義と価値を見出し、心の底からの感動を覚えたことに、大いなる幸せと静かな誇りを感じます。

 

 

 

 

 

(追伸)さて、フランツのコンサート記事の密かなお楽しみ?(笑)の終演後の追伸。この日は金曜日ではあるものの、曲目からすると、直ちに終了後は◯◯料理を食べに行こう、という感じでもありませんでした。が、しかし…、

 

「フランツ、お前はマユコのあの最高のヴァイオリンを聴いて、何も飲まずに帰るのか?」という、レニーの天からの声が聞こえてきて…、結局、こうなりました(笑)。

 

 

(写真)キエフ風チキンカツレツとストリチナヤ(ロシアのウォッカ)とグルジアの白ワイン。神尾真由子さんと読響による最高のプロコフィエフに大いに触発されて、ロシア料理を食べに行きました。

 

ロシア料理のお楽しみと言えばウォッカ。このウォッカの甘さが、プロコフィエフの第1楽章の甘美な主題によく合います。なお、1曲目が「鳥」だったので、遊び心でチキンカツレツにしてみました(笑)。