渋谷はBunkamuraのル・シネマに、オーストリアの映画「17歳のウィーン~フロイト教授 人生のレッスン」を観に行きました。
17歳のウィーン~フロイト教授 人生のレッスン
監督:ニコラウス・ライトナー
脚本:クラウス・リヒター/ニコラウス・ライトナー
原作:ローベルト・ゼーターラー
プロデューサー:ディーター・ポホラトコ/ヤコブ・ポホラトコ/ラルフ・ツィマーマン
撮影:ヘルマン・ドゥンツェンドルファー
編集:ベッティーナ・マツァカリーニ
音楽:マティアス・ヴェーバー
衣裳:カテリーナ・ツェペック
フランツ・フーヘル:ジーモン・モルツェ
ジークムント・フロイト:ブルーノ・ガンツ
オットー・トルスニエク:ヨハネス・クリシュ
アネシュカ:エマ・ドログノヴァ
マルガレーテ・フーヘル:レジーナ・フリッチ
(写真)本映画のプログラム。主人公フランツの働くタバコ店。ノスタルジックな雰囲気が素敵。
(参考)映画の公式サイト
※冒頭に2分の予告編の映像が出てきます。
既に記事にしましたが、先週ベートーベンの協奏曲3連発を聴いた後、ウィーンの気分が盛り上がって、急きょ終演後にオーストリア料理を食べに行きました。
(参考)2020.8.6 渡邊一正/黒木雪音/阪田知樹/清水和音/神奈川フィルのベートーベン3連発
https://ameblo.jp/franz2013/entry-12616436594.html
そこのカフェで偶然この映画のことを知りました。ウィーンが舞台の映画、あのジークムント・フロイトも出てくるということで、大変興味を惹かれ、観に行ったものです。外出自粛期間中に自宅でフェデリコ・フェリーニの映画を沢山観ましたが、街なかで新作を観るのは久しぶりです。
この映画は、ヒトラーのナチス・ドイツにオーストリアが併合された1938年頃のウィーンを舞台にした映画です。ザルツカンマーグートのアッター湖からウィーンに出てきた17歳の青年フランツが、見習いとして働くタバコ店の店主オットーとの師弟関係、高名な精神科医ジークムント・フロイト教授との交流と友情、フランツの憧れる女性アネシュカとの葛藤、フランツの母親との葉書のやりとりを交えて描いた物語です。
ということで、主人公の名前はフランツです。フランツ!私のブログでのハンドルネームではないですか!(笑) 大いに親近感を持ちつつ観たことは言うまでもありません。
原作はウィーン生まれの作家ローベルト・ゼーターラーの『キオスク』で、ドイツで85万部を超えるベストセラーとなったそうです。
見終ったら、やるせない中に、何か清々しいものを感じた、とても味わい深い映画でした。まだ上映中なので、詳しい感想は控えますが、特に印象に残ったのは、以下の通りです。
まずは、フランツが、フロイト教授から人生の悲喜こもごもについて、軽妙なやりとりを交えて教えを受けるシーンがとても楽しくて奥深い。名優ブルーノ・ガンツさんはこの映画が遺作となりますが、とても味のある演技でした。そして成長したフランツが、上等な葉巻3本を持ってフロイト教授の元を訪れるシーンでのフランツのセリフ!!!(観てのお楽しみ) こういうのは本当に好き!
次に、アネシュカとのこと。アネシュカに声をかけるシーンで、フランツは「アッター湖のフランツだ!」と声をかけます。何と単刀直入な!(笑) 女の子に声をかけたことのないフランツが初々しい。そして一度アプローチに失敗したアネシュカを頑張って探し出して、いい感じになった時の雪のシーンが本当に印象的。
ウィーンには他に素敵な女性が沢山いるだろうに、一度惹かれたアネシュカを忘れられず、フランツが何度もアプローチをするのは(ちなみに、アネシュカもまんざらではない)、一途で本当にいいなと思いました。最後にアネシュカがフランツの夢を記した紙を見て立ち去るシーンも余韻のあっていいですね。
そして、戦争で片足を亡くした気骨のあるオットーからいろいろなことを教わり、フランツがどんどん成長していくところがとてもいい。人生において何が大切かを見極め、筋を曲げないオットーの教えをフランツがしっかり受け取り、流されずに自分の信念を貫くところなど、本当に見どころがありました。
アッター湖出身のフランツ、ということで、アッター湖のシーンも、夢の中のシーンを中心に沢山出てきます。アッター湖は昨年存分に体感してきたばかりですが、映画と同様、何か不思議なオーラを感じる湖です。その霊感を受けて、マーラーが名曲の交響曲第3番を書いたことは言うまでもありません。
(参考)2019.8.12 アッター湖観光(アッター湖周遊&マーラー交響曲第3番&クリムト)
https://ameblo.jp/franz2013/entry-12524238791.html
とにかく、非常に味わい深い映画を観た!という印象です。「ヴィーダーシャウン」(さよなら)というウィーン訛りのドイツ語を度々聞けるのも嬉しい。人生に迷いがあったり、悩みを持っている方がいらっしゃったら、ご覧になると、何かのきっかけになるかも知れない、そんな映画だと思います。