ベートーベンを中心に楽しんできた今年のフェスタサマーミューザ。自分の行く最後の公演として、ベートーベンのピアノ協奏曲3曲のコンサートに聴きに行きました。

 

 

神奈川フィルハーモニー管弦楽団

フェスタサマーミューザ

(ミューザ川崎シンフォニーホール)

 

指揮:渡邊一正

 

ベートーベン/ピアノ協奏曲第1番ハ長調

(ピアノ:黒木雪音)

ベートーベン/ピアノ協奏曲第4番ト長調

(ピアノ:阪田知樹)

ベートーベン/ピアノ協奏曲第5番変ホ長調「皇帝」

(ピアノ:清水和音)

 

 

 

このコンサートはもう屈託なく楽しめるコンサート。ベートーベンの場合、交響曲だと、どうしても身構えて聴く部分がありますが、ピアノ協奏曲の場合はただひたすら楽しむだけです。3人のピアニストの違いを聴くのも楽しみです。

 

 

 

まずはピアノ協奏曲第1番。この曲は先月に田部京子さんのしっとり馴染んだエレガントな演奏を聴いたばかり。その時と比べると、黒木雪音さんの弾(はじ)けるようなピアノは明らかに打鍵が強く、曲からピアノがはみ出す(笑)印象すら持ちました。でもそこは、この曲の溌剌とした曲想に合って、これはこれでいいものですね。

 

そう言えば、2014年にはアリス=紗良・オットさんのいい意味でほとんど「お転婆」(笑)とも言えるピアノも聴きました。ベートーベンの1番はもう大好きな曲。いろいろな方のピアノで聴き比べをするのも楽しいものです。

 

(参考)ベートーベン/ピアノ協奏曲第1番第3楽章

https://www.youtube.com/watch?v=i3s64LBwmEs (9分)

※岡安咲耶さんの公式動画より。勢いがあってリズミカルでとてもノリの良い素敵なピアノ!

 

 

 

続いてピアノ協奏曲第4番。聴き終わった瞬間、「何か凄いピアノを聴いた!」と、その素晴らしさに圧倒されたピアノ!いや~、日本人にこんなヴィルトゥオーゾのピアニストがいたなんて!めっちゃ凄かったです!

 

何が凄かったって、まずはテクニック。4番は必ずしもテクニック的な見せ場の多い曲ではありませんが、第1楽章では途中でスルスルっと速くなってオケを置き去りにしたり、第2楽章終盤の最強音のトリルから切なく落ちて行く場面だったり、もう魅せる魅せる!

 

さらにテクニックに加えて、曲想に応じて、ニュアンスをたっぷり込めたり、ほとんど哲学的な風情だったり、場面場面で本当によく考えられたピアノ、大いに唸りました!聴いた曲こそ違いますが、2018年に浜松国際ピアノコンクールのガラ・コンサートで、アレクサンダー・ガジェヴさんを見つけた時の感動に似ています。

 

(参考)2018.9.16 覇者たちによるコンチェルトの饗宴(第10回浜松国際ピアノコンクール開催記念)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12405616069.html

 

 

阪田知樹さんは2016年のフランツ・リスト国際ピアノコンクール第1位。以前にリストの曲のリサイタルのチラシを見て、聴きに行きたかったのですが、都合が合わず。今日初めて聴いて、度肝を抜かれました!今後、リサイタルもぜひ聴きに行ってみたいです!

 

 

 

最後はピアノ協奏曲第5番。清水和音さんの皇帝は7月にも新日フィルで聴きました。その時と同様に清水和音さんのピアノからまず感じるのは「正統派」そして「安定」。ベートーベンの音楽を過不足なく伝えてくれます。

 

ただし、今日の演奏は先月とは一味違いました。フォルテをかなり激しく弾いて、何というか燃えた演奏。乱暴の一歩手前のピアノすら聴かれて、非常にスリリング!これはもしかして、阪田知樹さんのピアノに煽られたのでは?(笑) 若い者には、まだまだ負けないぞ!そんな清水和音さんの心意気が聞こえて来そう。そして大いに共感するフランツ(笑)。

 

いやいや、そういうことではなくて、ホールの違いが理由なのかも知れません。7月に聴いたトリフォニーホールはシューボックス型、今日のミューザはワインヤード型です。音が拡散するワインヤード型のホールでは、ピアノをより強く弾かないと客席まで響かないと考えられます。もう一つは曲順。7月は前半でしたが、今日はコンサートの締めの曲。またベートーベンの年代別の3曲の最後の曲。より堂々とした演奏をされたのかも知れません?

 

果たして、何が先月との違いなのか?理由は定かではありませんが、いずれにしても、パッションのほとばしりを大いに感じた清水和音さんのピアノ。とても聴き堪えがあって、充実の時でした。

 

 

 

ベートーベン/ピアノ協奏曲3曲のコンサート、大いに楽しんで来ました!溌剌とした演奏にいい意味で若気の至りを感じた黒木雪音さん、卓越したスキルと幅広い表現力に圧倒された阪田知樹さん、いつもの安定に加えて燃えるものを感じた清水和音さん。

 

ベートーベンのピアノ協奏曲3曲の進化や曲想の違いを体感するとともに、ピアニストの3者3様の演奏を違いも楽しめるのも、ライブを聴きに行く醍醐味です。素晴らしい演奏を本当にありがとうございました!

 

 

 

 

 

(写真)ベートーベンのピアノ協奏曲3連発が余りにも雰囲気があり過ぎて、この日は真っ直ぐ帰る予定でしたが(なぜなら翌日も食事会だから、笑)、ついついオーストリア料理のお店に寄りました。暑かったので、まずはオーストリアのビール、ゲッサーで乾杯。暑い中で飲むゲッサーは、ザルツブルク音楽祭を思い出させてくれて最高!

 

(写真)ウィーン風のポテトスープとグリューナーフェルトリナー(白ワイン)。このグリューナーフェルトリナーをベートーベンを聴いた後に飲んで、どれだけ雰囲気が出ることか!モーツァルトを聴いた後にもピッタリ合うワインですが、酸味があって、ほのかに甘い雰囲気が、古(いにしえ)のウィーンを想起させるベートーベンのピアノ協奏曲にも抜群に合います。

 

(写真)ヴィーナーシュニッツェルとグリューナーフェルトリナー(2杯目)。これはもう鉄板の組み合わせ。東京にいながらにして、これを楽しめるのは本当にありがたいことです。

 

(写真)締めはモーツァルトトルテ。ピスタチオの上品な甘さが素晴らしい!ベートーベンに始まり、モーツァルトで締め。今日もいい一日でした。