7月2日に続いて、新日フィルの定期演奏会を聴きに行きました。ベートーベンにブラームスと王道のプログラム、尾高忠明さんの指揮も楽しみです!

 

 

新日本フィルハーモニー交響楽団第622回定期演奏会

(すみだトリフォニーホール)

 

指揮:尾高 忠明

ピアノ:清水 和音

 

ベートーベン/ピアノ協奏曲第5番変ホ長調「皇帝」

ブラームス/交響曲第1番ハ短調

 

 

 

前半はベートーベン/皇帝。第1楽章は冒頭のきらびやかなオケとピアノの音に、のっけから感動!変ホ長調とは、どれだけ芳醇な調性なのか!ピアノが古の時を刻むような第2主題は、チェロの合わせが絶妙。他の場面でもチェロが利いていて、尾高さんの指揮による楽器のバランスの妙にとても惹かれました。

 

第2楽章は優しい弦に夢見心地のピアノが素敵な聴きもの。ここでは、レナード・バーンスタイン/ウエスト・サイド・ストーリーのサムウェアに引用されたという旋律(ソ~ファ~ミ~ドソ~♪)も出てきますが、ベートーベンの旋律の瑞々しさとともに、途中の旋律をあのサムウェアに発展させたレニーの展開力にも感動!ベートーベンが天才なら、レニーもまた天才と思えるシーン。

 

第3楽章。第2楽章のラストからの弱音のホルンは、ホルンを吹いている、という印象を持たせず、一体的に溶け込んで、本当に見事でした。第1主題のピアノはエレガントに入るパターンもありますが、清水和音さんはかなり力強く入って、そういう曲想、ということを強く印象づけるピアノ。堂々と押し切って素晴らしい皇帝でした!

 

 

 

後半はブラームス1番。尾高さんと新日フィルの交響曲の演奏では、2017年に聴いたウォルトンの1番がめちゃめちゃ素晴らしかった思い出があります。今日もただただ期待しかありません。

 

(参考)2017.9.30 尾高忠明/山崎伸子/新日フィルのグレイス・ウィリアムズ&エルガー&ウォルトン

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12316062233.html

 

 

第1楽章。冒頭の悲劇的な短調は、時節柄コロナに苦しむ人類を思わずには居られません…。尾高さんはややゆっくり目の堂々たるテンポ、充実の響きで進めます。弱音の場面でも音に表わされないオーラを感じてゾクゾク来ます!同じくオーラを感じるスタニスラフ・スクロヴァチェフスキさんの場合、至るところに細かいニュアンスを付けて聴かせますが、尾高忠明さんはそんなに細かくはニュアンスを付けないものの、どうしてこんなにも聴き応えがあるのか?

 

見せ場の低音からせり上がって、悲劇的な強奏を見せる場面は、もうこれしかない!と絶妙にリタルダントを入れて大いなる感動!そして、エンディングも大きい!尾高さんの基本オーソドックスですが、それだけに留まらない見事な指揮、新日フィルの充実の響きにゾクゾクして、汗びっしょりになった第1楽章!

 

 

第2楽章。明るい曲調の音楽ですが、時おり差し込む短調に魅了されます。より明るい第3楽章に比べ、希望と悲観がない交ぜになった音楽のよう。その第3楽章はより軽やかに進みますが、弦がサラサラと流れていく場面は、その後のリズミカルな木管と相まって、まるでバーデン・バーデンでブラームスが、オース川を横目に近くのクララの別荘に向かう喜びを表わしているかのよう!

 

 

第4楽章。第3楽章からアタッカですが、その静寂の中、雰囲気がガラッと変わったのを知覚してゾクゾクしました。ブラームスがクララに手紙で送った主題をホルン→フルートとリレーする有名なシーンは、周りの楽器の寄り添い方が素敵!

 

弦楽による第1主題は朗々と、その後スピードアップしましたが、賑やかになる場面は速さで押さずに堂々としたテンポ!尾高忠明さんの括弧たる指揮にもうメロメロ!この辺り、涙が溢れて溢れて堪りませんでした…。フィナーレも大きくて極めて感動的!ラストのティンパニの追い込みのど迫力!全くもって見事なブラームス!

 

 

 

きたー!!!何この堂々たるブラームス!新日フィル会心の演奏!尾高忠明さんとの圧倒的な名演!!!

 

 

いや~、凄かった!「お腹ペコペコ作戦」(緊急事態宣言中でコンサートのない間、オケの動画やCDは一切聴かなかった)を敢行して、ただでさえ感動しやすい状況にあったとは言え、文句なしに感動的な名演!何より、ベートーベンの交響曲の理念をブラームスが見事に受け継いだことをよく伝えていて、ベートーベン生誕250周年に聴けて心の底からの感動を覚えた、最高のブラームスでした!

 

 

 

観客は熱烈な拍手で迎えましたが、アンコールもあるかな?と思ったら、尾高忠明さんから観客に、お礼の挨拶がありました。

 

それは、尾高さんが東フィルの常任指揮者時代に、ソニーの盛田さんを東フィルの会長(理事長?)に招いた時のエピソードを交えた、非常に印象に残ったお話でした。詳細は控えますが、最も印象的だった言葉は、

 

「生の音に勝るものはない」

 

 

コロナでしばらくコンサートが聴けなくて、その間、東響が動画配信を成功させたり、オケの様々な努力には本当に頭が下がりますが、私の想いはずっと変わらず、尾高さんが強調して言われていたように、

 

「生の音に勝るものはない」

 

 

ここアメブロを見ても、このところ、久しぶりにリサイタルを開催しました!あるいは、ピアノの発表会を開いて、子供たちがみな笑顔でした!という記事を見かけ始めて、心の底より嬉しい思いをしています。もちろんコロナには十分気を付ける必要がありますが、こうした人間の喜びや感動の営みを決して失くしてはいけない。そのことを改めて認識することのできた、素晴らしいコンサートでした!