緊急事態宣言が開け、再開された美術展を観にいきました。三菱一号館美術館の開館10周年記念、画家が見たこども展です!
この美術展はもともと、今年2月15日~6月7日に開催される予定だった美術展です。新型コロナウイルスにより、途中で閉館を余儀なくされ、会期が終わりましたが、特別に6月21日まで延長されたものです。
※と、私がチケットを取った段階ではそうでしたが朗報です!会期は9月22日まで再延長されたようです!
延長された中、コロナ対策として、様々な取り組みがなされていますが、一番大きいのは1時間単位の時間指定制になったこと。仕事のタイミングで先週は金曜がお休みだったので、金曜の午後に観てきました。
美術館に行ってみると、時間指定制というだけでなく、コロナ対策によるステップがあります。まずは検温。検温器でおでこの体温を測っていただいてOK。次に、手をアルコール消毒。当然、マスクは要着用です。
そして、この美術館は入口が3Fなのでエレベーターで上がりますが、何とエレベーターに入れるのは一度に1人だけ!徹底されていますね~!
飲食店などもそうですが、新型コロナウイルスへの不安をできるだけ無くそうと、取られる対策や配慮、創意工夫の数々には、本当に頭の下がる思いがしますし、心の底から応援したくなります。
入口にはご挨拶のメッセージがありました。この美術展は、三菱一号館美術館の開館10周年を記念し、南仏ル・カネのボナール美術館と共同で開催。三菱一号館美術館では、ナビ派について、2014年のヴァロットン展、2017年のナビ派展で紹介。本展は、ナビ派が最も好んだ主題の一つである「子ども」にスポットを当てている、ということでした。
(参考)2017.3.3 オルセーのナビ派展 美の預言者たち-ささやきとざわめき(三菱一号館美術館)
https://ameblo.jp/franz2013/entry-12253458413.html
※記事はありませんが、2014年のヴァロットン展も観に行って、大いに魅了されました。
ナビ派の画家たちによる子どもが描かれた絵を沢山観ることができ、とてもほっこりした気持ちになりました。特に気になった作品は以下の通りです。
(写真)メイエル・デ・ハーン/ミミの横顔のある静物
※本展で購入した絵葉書より
これはパッと見で、この果物の山を目の前にしたお子さんの何とも言えない表情に惹き付けられた作品です。美味しそうな果物だけど、どれにしようか?あるいは、それらが何だか分らず、赤い果物の中に印象的な緑の果物が混ざっている光景にキョトンとしているのか?子供の好奇心を大いに感じる絵です。
メイエル・デ・ハーンはユダヤ系オランダ人の画家。パリでは、フィンセント・ファン・ゴッホの弟の美術商テオのところで過ごし、ブルターニュ地方を旅した際にはポール・ゴーギャンと親交を結んでいる、ということでした。確かに両者の絵の雰囲気に似ていますね。
(写真)ピエール・ボナール/子どもたちの昼食
ナビ派の代表的な画家ピエール・ボナールの作品で、妹のアンドレの子供たちを描いた、とても愛らしい絵です。子供たちがパンとスープのご飯を食べていて、奥に座っていただろうお母さんは途中で席を離れて、代わりに、猫が手前に描かれている、一見ほのぼのとした光景の絵です。
解説にも、「行儀よく食事をする子どもたちを前景で猫が見守っている」とありましたが、いやいやいや。猫は単にお母さんのスープを狙っているだけなのでは?(笑) どうみても、猫の視線は子供たちではなく、一直線でスープに釘付けとしか見えません???(笑)
(写真)フィンセント・ファン・ゴッホ/マルセル・ルーランの肖像
ゴッホの晩年の絵です。ゴッホは1888年に見知らぬ土地のアルルに移り住み、郵便配達人ジョゼフ・ルーラン一家と親交を結びましたが、そのルーラン一家の末娘マルセルの肖像です。生命の力強さを大いに感じさせる、とても印象的な絵でした。
この他に、絵葉書はありませんでしたが、以下の作品に惹かれました。
◯ピエール・ボナール/パリの生活の小景
4枚のパリの風景の絵です。どれも雰囲気があって、とても素敵な絵。パリで子供たち、と言えば、私はプッチーニ/ラ・ボエームの第2幕、パルピニョールのシーンを思い出します。子供たちが沢山出てきて、パルピニョールの繰り出すおもちゃに熱狂して、お母さんたちがそれを諫めて。本当に楽しいシーン。
◯エドゥアール・ヴュイヤール/乗り合い馬車
乗り合い馬車が盛んだった時代の絵ですが、馬車の窓の外を眺める2人の少女の、窓にへばりつく姿がとても可愛い絵!現代でも電車に乗るとたまに見かけますが、子どもの行動は昔も今も変わりませんね。
◯フェリックス・ヴァロットン/版画集「息づく街パリ」
ヴァロットンによる漫画を思わせるような絵です。10作品ほどありましたが、いずれの絵にも子供を登場させ、ユーモアと風刺も込めて描いていました。特に「突風」と「にわか雨」と「可愛い天使たち」が好きかも。
◯フェリックス・ヴァロットン/リュクサンブール公園
ほとんどブリューゲルの群像画のような賑やかな絵でした。パリのリュクサンブール公園には一度だけ行ったことがあります。大変美しい公園で、リュクサンブール美術館ともども素晴らしかった記憶があります。絵に描かれた木立ちと彫像の光景で、そのことを思い出しました。
◯フェリックス・ヴァロットン/にんじん
ジュール・ルナールの「にんじん」の本の挿絵です。何とあの「にんじん」はヴァロットンが挿絵を付けたんですね!中学校時代に、「にんじん」→「ルナール」と友達と遊びながら勉強したのは懐かしい思い出。
◯ピエール・ボナール/雄牛と子ども
ボナール最晩年の作品。伴侶のマルトを亡くした後の時期です。ボナールの描く子どもの作品の一つの到達点、ということでした。大きな雄牛の何とも言えない表情がいい!シャガールを思わせる大胆な構図ですが、シャガールに比べると、中間色が多くて明るい色彩の絵です。ル・カネとは、きっと美しいところなのでしょう。
◯ピエール・ボナール/大装飾画、街路風景
ボナールにしてはコラージュ風の大胆な構図の絵。様々な人々が行き交うパリの夢が詰まっているような、そんな素敵な絵でした。
三菱一号館美術館の開館10周年記念の美術展、大いに楽しんできました!三菱一号館美術館はナビ派を中心に、これまで何度もお世話になっていますが、毎回の凝った企画のみならず、歴史的な建造物の雰囲気が残り、その中で名画を観るシチュエーションそのものがとてもいいんです!
開館10周年、本当におめでとうございます!これからもお世話になりま~す!
(写真)美術展を楽しむ前、近くにジョエル・ロブションのカフェがあったので、軽くランチを取りました。キッシュ・ロレーヌとクイーン・アマン(左)とカフェオレ。さすがはロブション、どれも上品で美味しかったです。
キッシュ・ロレーヌを選んだのには理由があります。ヨハン・シュトラウスⅡ世のオペレッタ「こうもり」第2幕では、フランス人貴族に変装して夜会に乗り込んだアイゼンシュタインとフランクが、みんなからフランス語での会話を強いられるシーンが出てきます。フランス語のできないオーストリア人の2人が苦し紛れに知っているフランス語をひねり出して、何とかその場を取り繕う楽しいシーンですが、そこで必ず登場するフランス語が、愛すべき「キッシュ・ロレーヌ」なんです!(笑)
(参考)2020.1.6 J.シュトラウスⅡ世/こうもり(ウィーン国立歌劇場)