1週間前のことですが、6日(土)にイタリアワインを飲んできました。緊急事態宣言が開けて、第1弾でフランスワインを飲みましたが、それに続く第2弾です。
(参考)第1弾のフランスワイン ⇒ 2020.5.30 ショレイ・レ・ボーヌ2013(トロ・ボー)
https://ameblo.jp/franz2013/entry-12600706777.html
どんなイタリアワインを飲もうか?他の選択肢も考えましたが、久々に飲むイタリアワイン、ということで、イタリアワインの基本中の基本でキャンティにしました。
(写真)バディア・ア・パッシニャーノ・キャンティ・クラッシコ・リゼルヴァ2008(アンティノリ)
このキャンティはただのキャンティではなく、トスカーナの名門中の名門アンティノリが、1,000年以上の歴史を誇る屈指の優良畑で造る、最高のキャンティ・クラッシコということです。
色は艶かしい雰囲気の赤にうっすら茶が混ざった感じ。縁も淡くなっています。ほど良くこなれて、飲み頃を迎えたキャンティの色、という雰囲気です。
香りは熟成したワインならではの複雑な香り!なめし皮、腐葉土の香りを基調に、プラムなどの果物が熟した香りを感じます。ほどよく熟成させて本当に良かったと実感する瞬間。
味はよく熟成したワインのまったり感が前面に出ます。タンニンは溶け込み渋みは消え去り、ストラクチャーこそそこまでは感じませんが、いい感じで熟して旨味だけが残った、素晴らしい飲みものでした!
熟成させたイタリアワインの赤で、比較的飲む機会が多いのは、バローロとバルバレスコです。熟成させたキャンティは本当に久しぶりでしたが、いや~、とてもいいですね!庶民的なイメージのあるキャンティということで、気さくなトラットリアでクラッシコもリゼルヴァも付かない、単なるキャンティを料理のお供でガブガブ飲むのも楽しいですが、上質なキャンティを熟成させて楽しむことができ、とても貴重な機会でした。
さて、久しぶりにキャンティを楽しみましたが、私はこのワインを飲んでしみじみ思ったのが、外出自粛期間中に観たフェデリコ・フェリーニ監督の映画「道」のワンシーンでした。
(参考)2020.5.6 映画/道(フェデリコ・フェリーニ生誕100周年その7)
https://ameblo.jp/franz2013/entry-12595206725.html
印象的なシーンが目白押しのこの映画ですが、私がキャンティを飲んで思ったのは、ザンパノとジェルソミーナが旅をしながら芸を披露する中で、ザンパノの鉄鎖を切る芸や寸劇が受けて、沢山おひねりをもらった夜に、お店で食事をするシーンです。懐の入りが良くてザンパノは上機嫌、ジェルソミーナもザンパノに合わせようと頑張って赤ワインを一気飲みしたり、何だかいい雰囲気です。
ところが、ザンパノはお店にいた別の女性に声を掛け、結局、ジェルソミーナを置いて一晩どこかに行ってしまいます…。お店の前で一晩を過ごし、とても切ないジェルソミーナ…。旅や芸のパートナーに気遣いせず、全くもう!なザンパノと、ジェルソミーナの悲哀を感じるシーン。
ということで悲しいシーンでしたが、それにも関わらず、ザンパノとジェルソミーナが食事を取りながら、名もなき「赤ワイン」を楽しむ光景には不思議と心打たれました。食事の終わりにはお店に赤ワインを頼んで、2本のボトルを肩に担いで上機嫌でお店を出るザンパノ。そのボトルがキャンティの有名な麦わらボトルだったんです!
(参考)キャンティの麦わらボトル。気さくなイタリアンでお店の飾り付けにもよく使われています。
※ウィキペディアより
日々十分な食事を取ることができないだろう旅芸人が、一日の労働が終わり、満足な成果を得られた充足感のもと、赤ワインをお供に料理を楽しむ光景。決して質的には上等なワインではないだろう、名もなきワインのありがたさが十分伝わってくるシーンに、私は現代にも通じる「食中酒としてのワイン」の根源的な力を大いに実感しました。
今回、私がいただいたキャンティは、キャンティの中でも特上に位置付けられる銘柄なので、ザンパノが飲んだ赤ワインとは、きっと比較できないくらいの質の違いがあることでしょう。それでもなお、「ワインの根源的な喜び」という意味では、大いにシンクロするものがありました。
これからもいろいろなワインたちに出逢うと思いますが、食事のお供として、1本1本のワインをしっかりと味わって噛みしめて、大切に飲んでいきたい。奇しくもフェリーニの「道」を観たちょうど1ヶ月後にキャンティを飲んだ形となりましたが、その大切なことを改めて実感した、とても貴重な機会でした。