(冬の旅行記の続き) ウィーン・フィルのニューイヤーコンサート、しかも楽しいヨハン・シュトラウス・ファミリーのワルツやポルカに加えて、生誕250周年のベートーベンまで聴くことができ、新年2020年は最高のスタートとなりました!

 

 

これだけでもう十分にお腹一杯(笑)ですが、そこはウィーン。さらにお楽しみの公演が続きます。それに向けて、まずはゼセッシオンにグスタフ・クリムト/ベートーベン・フリーズを観に行きました。

 

 

 

 

(写真)ゼセッシオン。ヨゼフ・マリア・オルブリヒ設計の見事な金色の月桂樹が印象的です。ちなみにウィーンっ子には「金色のキャベツ」という愛称で親しまれています、確かに!笑

 

 

 

ベートーベン・フリーズは、昨年春に東京都美術館で開催されたクリムト展で紹介されました。クリムト展の目玉として、実物大の複製が展示されたものですが、オリジナルはここゼセッションにあります。

 

 

(参考)2019.4.23 クリムト展 ウィーンと日本1900(東京都美術館)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12456428390.html

 

 

 

 

(写真)ベートーベン・フリーズから、楽園の天使たち(上)と、抱擁する恋人たち

※ゼセッションで購入した絵葉書より

 

 

 

このベートーベン・フリーズは3面の壁に描かれた、長さは計20mにもなろうかという巨大な作品ですが、今回は時間にしてたっぷり30分、5周くらいじっくり観て回ってイメージを高めました。日本語による詳しい解説パンフもありましたが、特に印象に残ったのは以下の説明です。

 

 

◯今日この壁画は、芸術作品として独自の特徴を有する、ウィーン世紀末芸術の頂点をなす作品とみなされている。

 

◯このフリーズのテーマは、われわれ人類の幸福への憧れである。クリムトは、このテーマをベートーベンの「第九」に対するワーグナーの解釈にのっとって表現した。この憧れの象徴としてクリムトが選んだのは、浮遊する精霊たちである。彼女たちは、左側の壁面において、われわれを物語の中へといざない、フリーズのなかで、水平に連なる人物の鎖となって、何度も繰り返し登場する。

 

◯正面の狭い壁面を見ると、われわれ人類は「敵対する力」がもたらす危険と誘惑に立ち向かわねばならないことがわかる。毛むくじゃらで、青みがかかった翼を持ち、蛇のような胴体をした、神話に登場する怪物テュフォーンがほとんど壁一面にその姿を広げ、真珠貝を用いた螺鈿細工が施された目で絵を見る者をにらんでいる。

 

◯このフリーズが語るドラマのクライマックスがクリムトによって準備されている。最後の場面で、われわれは、さまざまな芸術を象徴する女性の姿に導かれ、芸術による理想の領域へと到達する。

 

◯クリムトによる芸術の神格化は「楽園の天使たち」(注:上記の上の絵)の合唱の前で接吻する一組の男女によって表わされている(注:上記の下の絵)。この表現が直接ベートーベンと結び付いていることはいうまでもない。というのも「この接吻を全世界に」とは、ベートーベンの「第九」の最後の合唱からとられた一節で、さらに元をたどれば、フリードリッヒ・シラーの詩「歓喜に寄す」までさかのぼることができるからだ。

 

 

 

ウィーンでベートーベン・フリーズを観るのはこれで5回目くらいになると思いますが、今回はよりじっくりと観ることができ、さまざまな想いを持ちました。ベートーベンの芸術や人類に対する想い、それが最も結実した作品と言える第九にクリムトが寄せた想い、などなど。何度も観に来る価値のある、素晴らしい作品ということを改めて感じました。

 


ゼセッシオンはベートーベン・フリーズだけでなく、企画展もやっています。Tala Madani、Ron Nagle、Lisa Holzerというアーティストによるコンテンポラリーの美術作品も展示されていて、ユニークな作品の数々を楽しむことができました。そして、ベートーベン・フリーズの近くに一点、大好きなテオ・ファン・レイセルベルへの印象的な作品もあり、大いに魅了されました。

 

 

 

ベートーベン・フリーズ、ベートーベン生誕250周年の初日にじっくり観ることができ、非常に感慨深いものがありました!偉大な芸術やそれを紡ぐ芸術家を、これからも敬意を持って讃えよう。難しいこと考えずにシンプルに真っすぐ幸せを追求していこう。改めて自分のスタンスや心の持ちようを確認したところです。

 

 

 

ところで、冒頭に記した「さらにお楽しみの公演」とは?もうバレバレですが(笑)、次の記事で!