ヴァイオリンの女王、アンネ゠ゾフィー・ムターさんのベートーベン生誕250周年記念コンサートを聴きに行きました。ベートーベンの協奏曲2曲を中心とした楽しみなコンサートです!

 

 

サントリーホール スペシャルステージ2020

アンネ゠ゾフィー・ムター

~ベートーベン生誕250周年記念~

「協奏曲」

(サントリーホール)

 

ヴァイオリン:アンネ゠ゾフィー・ムター

チェロ:ダニエル・ミュラー゠ショット

ピアノ:ランバード・オルキス

指揮:クリスティアン・マチェラル

 

新日本フィルハーモニー交響楽団

 

ベートーベン/悲劇『コリオラン』のための序曲

ベートーベン/ヴァイオリン協奏曲ニ長調

ベートーベン/ピアノ、ヴァイオリン、チェロのための三重協奏曲ハ長調

 

 

 

(写真)アンネ゠ゾフィー・ムターさん(プログラムより)。相変わらずの美しさでした。

 

 

 

まずはコリオラン序曲から。冒頭のうなるような弦に痺れます!激しく打ちつけるオケ、ベートーベンならではのリズム主体の緊迫した音楽が素晴らしい!クリスティアン・マチェラルさんは初めて聴きましたが、弦楽の鳴らし方にいろいろ工夫があって、全くただ者ではない印象です。第2主題の温かい旋律はいつ聴いても感動しますね。やはり名曲です。

 

(参考)ベートーベン/コリオラン序曲。エグモント序曲とともにベートーベンの序曲として有名な曲ですが、全曲にみなぎるベートーベンならではの緊迫感が本当に素晴らしい!感動の第2主題は1:41~/4:36~です。

https://www.youtube.com/watch?v=qv69x0r5AsY (8分)

※EuroArtsChannelの公式動画より。ウラディーミル・ユロフスキ指揮/エイジ・オブ・エンライトメント管弦楽団の演奏。

 

 

 

続いてヴァイオリン協奏曲。15日(土)にライナー・ホーネック/紀尾井ホール室内管弦楽団の名演を聴いたばかりですが、今日はどうでしょうか?

 

(参考)2020.2.15 ライナー・ホーネック/紀尾井ホール室内管弦楽団のオール・ベートーベン・プロ

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12575651443.html

 

とにかくアンネ=ゾフィー・ムターさんの美しく、かつよく鳴り響くヴァイオリンが素晴らしい!第1楽章は冒頭からはずっと上ずらせて弾いていて、ほとんどオケと音程が合っていないのではないか?とハラハラしそうになるほど(笑)。何と言うか、超然とした美しさを感じました。

 

その後も美しくも攻めた表現のヴァイオリンに大いに魅了されます。第3楽章冒頭の低音での旋律の提示は、ほとんど半音下ではないか?と思ってしまうほどのハッとするずり下げ!コクがあり、かつスリリングな表現にグッときます。

 

ライナー・ホーネックさんのウィーン流の艶やかなベートーベンとは一線を画した、ベートーベン演奏の表現の可能性を大いに体感した素晴らしいヴァイオリン!ベートーベン生誕250周年に、好対照の素晴らしいヴァイオリン協奏曲を2連発で聴けて、大いなる喜びを感じました!

 

 

アンコールのバッハ/サラバンドも静かで瞑想的なバッハ、というよりは抑揚を付けた攻めたバッハ!まるで墨のしぶきが飛び散る、荒々しい筆致の書道家による芸術的な書道の作品のようなバッハでした。

 

 

 

後半は三重協奏曲。私はベートーベンの協奏曲は5曲のピアノ協奏曲もヴァイオリン協奏曲も大いに愛好していますが、三重協奏曲はコンサートで一度も聴いたことがなく、(不勉強ながら)CDですら聴いたことがありません。他の曲は大いに親しんでいるベートーベンなので、今回は敢えて予習はせず、初演を聴くような心持ちで臨みました。

 

第1楽章。始まってまず思ったのは、この曲はどこかロッシーニの音楽を思わせます。いい感じで肩の力が抜けた曲。そしてしばらくすると、フィデリオの最後の合唱に似た旋律が出てきました!(笑)

 

この曲はヴァイオリンとチェロとピアノによる三重協奏曲ですが、3者が絡み合うというよりは、それぞれが比較的シンプルな旋律を披露し合う場面の多い曲、という印象です。そして、ほとんどピアノ・トリオの曲?と思えるほど、3人のソリストがよく鳴らす鳴らす。

 

私はブラームス/ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲が大好きで、実演も沢山聴いていますが、今日のベートーベンを聴くと、クララ・シューマンがブラームスのダブル・コンチェルトのことを、「対位法知識の産物」と呼んだことがよく理解できました(笑)。シンプルなベートーベン、絡み合うブラームス。複数の楽器による協奏曲でも、本当に対照的な2曲です。

 

第2楽章はチェロの叙情的な旋律が美しい!ヴァイオリンが加わっての掛け合いにも魅了されました。メンデルスゾーン/真夏の夜の序曲のフィナーレに似た旋律もしんみり心を打ちます。

 

第3楽章は何というか、お茶目な音楽!(笑)ロッシーニ/ランスへの旅、そしてオリー伯爵に似た旋律が聴かれてニンマリします(笑)。最後の方では、ヴァイオリン・チェロ・ピアノが小刻みな音を競い合うようなシーン!

 

これ、ロッシーニお得意の早口言葉のシーンを、楽器により表現したシーンなのでは?(笑)

 

いや~、ベートーベンの三重協奏曲、初めて聴きましたが、とても楽しい曲でした!アンネ゠ゾフィー・ムターさん、ダニエル・ミュラー゠ショットさん、ランバード・オルキスさんはさすがの演奏!ムターさんとミュラー=ショットさんが前面に出てバリバリ弾いて、後ろでオルキスさんがいい感じに小粋なピアノを弾いていた印象でした。新日フィルの伴奏もいい感じ、GJ!素晴らしいコンサートでした!

 

 

 

(追伸)今週末の3連休は特に聴きに行きたいと思うコンサートがなかったので、自宅にこもってベートーベンのピアノ・ソナタ(27番&23番)の練習に専念する気満々でした。

 

ところが、今日のコンサートのプログラムで知ったのですが、22日(土)の16:00~、サントリーホールで、ムターさんたちによる室内楽のコンサートがあり、ベートーベンの室内楽2曲とともに、ドイツの作曲家イェルク・ヴィトマン/弦楽四重奏曲第6番『スタディー・オン・ベートーベン』の世界初演があることが分りました!しかもムターさんに献呈される曲とのこと!

 

世界初演ということで唯一無二の機会、ベートーベン生誕250周年の記念となる特別な公演になりそう!さらに7月にケント・ナガノ/N響により演奏される、イェルク・ヴィトマン/オラトリオ「箱船」の公演とちょうどいいカップリングにもなります。

 

あ~、3連休はピアノの練習に集中したかったのですが…(苦笑)。