既に2月11日(火・祝)に公開リハーサルに行ったことを先日の記事で書きましたが、そのライナー・ホーネックさんと紀尾井ホール室内管弦楽団のオール・ベートーベン・プロを聴きに行きました。ベートーベン生誕250周年の今年、東京で初めて聴くベートーベンですが、これが最高のコンサートとなりました!!!

 

 

紀尾井ホール室内管弦楽団第120回定期演奏会

(紀尾井ホール)

 

指揮・ヴァイオリン:ライナー・ホーネック

 

ベートーベン/ヴァイオリン協奏曲ニ長調

ベートーベン/交響曲第7番イ長調

 

 

 

前半はヴァイオリン協奏曲。ライナー・ホーネックさんの弾き振りです。第1楽章。冒頭からのオケの美しい音色、微妙に付けられたニュアンスに魅了されます。1分聴いてもうメロメロ(笑)。ウィーン・フィルのコンマスのホーネックさんのヴァイオリン・ソロは、得も言えず艶やかで美しい!

 

美しいだけでなく、途中の深淵を見せる場面はデモーニッシュだったり、表現の幅が広い。カデンツァはシュナダーハンのもので、ティンパニとの掛け合いが入って楽しいです。ラストの弱音のヴァイオリンが何と美しいことか!素晴らしい第1楽章!

 

第2楽章。冒頭の弦楽の音色が素敵。この楽章も優しい音楽がホーネックさんの雰囲気たっぷりの美音のヴァイオリンと、美しいオケにより奏でられてうっとり。ミニ・カデンツァを経て第3楽章へに進みます。

 

第3楽章。ここも美しくかつコクも十分なホーネックさんのヴァイオリンが光ります。合わせるオケも最後まで何とも言えないニュアンスに溢れて本当に見事!

 

 

素晴らしいヴァイオリン協奏曲!文句なしに生涯最高のベートーベンのヴァイオリン協奏曲!

 

 

いや~、本当にものの見事なヴァイオリン協奏曲でした!実はこの曲は美しいものの、大きなホールで聴くと、ブラームスのヴァイオリン協奏曲などに比べて音の厚みに物足りなさを感じることがしばしばでした。

 

しかし、今回のように小ぶりのホールで、室内楽団で聴くと、曲の響きとホールのフィット感が素晴らしく、聴き応え抜群!さらにホーネックさんの艶やかさがこぼれ落ちるような見事なヴァイオリン、珠玉の紀尾井ホール室内楽団の素敵な音色とニュアンスが相まって、最高の聴きものでした!

 

 

 

後半は交響曲第7番。第1楽章。ややゆっくり目のテンポ。昨今、速めのテンポのキレキレのベートーベンが多い中、今どき、こんなにもゆっくり目のテンポは珍しい。

 

しかし、全くもたれず、豊潤な響きで、ヴァイオリン協奏曲に引き続き、聴き応え抜群の素晴らしい演奏!ラストは低弦を強調する演奏もありますが、ホーネックさん、ここは低弦を抑えて最後までエレガントな雰囲気でまとめていました。

 

第2楽章。ここも最初から急き立てるような短調ではなく、しっとりとしたテンポ。ベートーベンの音楽そのものが見事に伝わってきます。最後は音の強さとテンポを気持ち緩めて、はかなさを印象付けていて素敵です。

 

第3楽章。テンポは引き続き中庸ながらも、躍動感を感じる演奏。喜びの感情、祝祭的な雰囲気が見事に伝わってきます。何よりベートーベンの書いた音楽の素晴らしさを大いに実感できるのがいいですね。

 

第4楽章。ここはややテンポが上がりますが、飛ばすというよりは、ここもベートーベンの書いた音符を一音一音しっかり奏でていくような演奏。ダイナミックさや迫力を感じつつ、活き活きとした音楽!

 

大きくテンポアップこそしませんが、気持ちアッチェレランドを入れるところなど、本当にニクイ!最後も勢いは感じさせつつ、エレガントさも失わない素晴らしいフィニッシュ!ブラボー!

 

 

いや~、これまた絶品のベートーベン!!!これが絶品でなければ、一体何が絶品なのか???ヴァイオリン協奏曲に引き続き、見事な名演でした!!!

 

 

ホーネックさんの交響曲第7番には大いに驚きました!というのも、テンポが時代がかって、ゆっくり目だったから。今どき非常に珍しい。おそらく他のオケでこのテンポの7番を聴いたら、緩く感じて最後まで持たなかったように思います。

 

それを可能にしたのは、紀尾井ホール室内管弦楽団の美しい音色と響きに加えて、得も言えないニュアンスに溢れた演奏だったから。ホーネックさんは11日(火・祝)のリハーサルでは、フレージングだったり、バランスを考えてより音を抑えるようにしたり、楽器による統一感を大切にしたり、和やかな雰囲気ながらも、丁寧に詳細に指示を出して、オケに微妙なニュアンスを次々と付けていっていました。

 

特に印象的だったのは、ホーネックさんが、”I like ~”、”How to say ?”という言葉をよく使っていたこと。要するにこれは、ウィーン・フィルのコンマスを長年やってきたホーネックさんには、ウィーン・フィルのベートーベンが体に染み付いて、それを紀尾井ホール室内管弦楽団で再現しようとしても、言葉で説明することはなかなかできない、ということなんだと思います。

 

 

ウィーンの粋を感じさせる素晴らしい演奏!ベートーベン生誕250周年に素晴らしいヴァイオリン協奏曲と交響曲第7番が聴けて感無量!最高のコンサートでした!紀尾井ホール室内管弦楽団のみなさんは本当にGJ!そして、ライナー・ホーネックさんは次の6月の客演を心より楽しみにしています!

 

 

 

 

(写真)ベートーベン/交響曲第7番が作曲されたウィーンのパスクァラティハウス。この冬の旅行で久しぶりに訪れて、じっくり見学してきました。その余韻の残る中で聴いた最高の7番。音楽も旅も素晴らしい!