パブロ・エラス・カサドさんがN響に客演するコンサートを聴きに行きました。ダニエル・ハリトーノフさんのピアノも楽しみです。

 

 

NHK交響楽団第1929回定期演奏会Bpro.

(サントリーホール)

 

指揮:パブロ・エラス・カサド

ピアノ:ダニエル・ハリトーノフ

 

リムスキー・コルサコフ/スペイン奇想曲

リスト/ピアノ協奏曲第1番変ホ長調

チャイコフスキー/交響曲第1番ト短調「冬の日の幻想」

 

 

 

まずはリムスキー・コルサコフ。ジプシーの音楽やこだまするカスタネットが雰囲気満点で、情熱やエキゾチックさ、アンダルシアの息吹を感じた素敵な演奏でした。

 

 

続いてリスト。ワイマールで書かれたピアノ協奏曲第1番です。前日にリスト編曲の素晴らしいベートーベンを聴いたので、何だかいい流れ。ただ弾くだけでも大変な曲ですが、ハリトーノフさんのピアノは緩急や強弱など、ふんだんにニュアンスを付けてかなり奔放なピアノ。正にロシアのヴィルトゥオーゾ、と思える素晴らしいピアノでした!この協奏曲のピアノのキラキラ感はいつ聴いてもいいですね。

 

アンコールはうねうねどこまでも出口の見えないようなショパン/エチュードop.10-6に続いて、2曲目は革命のエチュード。これが見事なまでに個性的!特に革命特有の超絶技巧の左手が、全く切れ目がなく一貫して見事な高速インテンポ。その中で強弱だったり、強調だったり、自由自在にニュアンスを付けて圧巻のピアノ!こんなにドラマティックな革命を弾けたら、さぞや楽しいでしょうね。

 

 

 

後半はチャイコフスキー。チャイコフスキーの交響曲は第4番~第6番が有名ですが、私は第1番がかなり好きです。

 

第1楽章。冒頭のフルートの旋律にこれこれっ!と。このさりげない入り方がいいんです。速めのテンポで追い込んで雰囲気のある演奏。N響の弦楽のリズミカルで推進力のある刻みも素晴らしい。

 

途中ではベルリオーズ/イタリアのハロルドにも似た低弦の響きが聴かれて魅了されます。しかし、繰り返されるホルンの刻みを聴くと、やはりチャイコフスキーだな~と大いに実感。

 

第2楽章。冒頭からの弦楽のゆっくりたっぷりのノスタルジックな旋律にウットリ!続くオーボエのソロが素晴らしい!短調と長調の間で揺らめく旋律にキュンとします。その旋律を後半にホルンが朗々と吹くシーンもいいですね。

 

パブロ・エラス・カサドさん、第1楽章は切迫感のある指揮でしたが、第2楽章は緩急を付けようと思えばいくらでも付けられる音楽なのに、ずっとゆっくりのテンポを保ったままです。そこに明らかに意図を感じます。

 

これは一体何だろう?と思いましたが、ロシアの冬、夜会のきらびやかな集まりや、サモワールのある暖かい家庭での団らんがある一方、その灯りを寂しく見やりながら、凍てつく寒い中を道行く孤独な男性の光景を思い浮かべます。あるいはその男性の回想や憧れの音楽のように感じました。

 

第3楽章。この歯切れの良い楽章は、ドヴォルザーク/交響曲第7番に似た響きを感じます。ラストのニヒルなヴィオラの軋んだ音色!雰囲気ありますね~!

 

第4楽章。この曲で一番好きな楽章です。冒頭から短調の旋律が繰り返され、それがいよいよ長調に転換する瞬間!きた~!引き続いて、これこそコサックという旋律もきた~!これ聴くとあの有名なコサックダンスのシーンしか思い浮かべることができません(笑)。先日熱狂して観たマゼッパはコサックの首長です。何だかつながる。

 

(参考)2019.12.2 チャイコフスキー/マゼッパ(マリインスキー歌劇場)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12552461307.html

 

久しぶりの1番、第4楽章途中でシューマン2番の第3楽章に似た音楽も聴こえて、魅了されました。ラストは高まって金管王国!(笑) N響の金管のみなさまのパリッと歯切れ良い金管が見事!ラストはカサドさん走って、あざやかに終わりました!

 

 

 

チャイコフスキー1番は久しぶりに聴きましたが、素晴らしい指揮と演奏でした!メリハリが聴いて、充実の響き。曲の魅力をよく伝えていた素敵な演奏でしたね。カーテンコールではカサドさんが渡されたバラの花束からバラ一輪をオケの女性に渡そうとして、なかなか分離しないので、そのまま花束ごと渡す、とても微笑ましいシーンも見られました(笑)。

 

 

ホールから出たところで、30代くらいの会社員の男女の方が待ち合わせで、「良かったね~!」「良かったよ~!」と声を掛け合って、一緒に帰って行っていたのが印象的。そりゃ、この素敵な演奏だったら、(よほどのひねくれ者でない限り)心躍りますよね。きっと帰りに一緒にご飯を食べて、演奏の話で盛り上がったのでしょう。とてもいい感じの光景でした。

 

 

 

 

(写真)ということで、私もウォッカ(ストリチナヤ)とセブンイレブンのコロッケパンを。フランツ、なぜ家にウォッカがある!(笑)

 

素晴らしい演奏とその2人のやりとりを目撃して、つい自分も「ウォッカが飲みたい!」という気持ちになりましたが、翌日に重要なイベントを控えていたので、帰ってから一杯だけ。お供は一番ピロシキに形が似ているパンにしました(笑)。これだけでも、チャイコフスキー1番を聴いた後の余韻を楽しめます。