昨日はワレリー・ゲルギエフ/マリインスキー歌劇場の素晴らしいオペラ公演、チャイコフスキー/スペードの女王を観ましたが、さらに楽しみにしていた公演を観に行きました。チャイコフスキー/マゼッパの公演です!

 

 

マリインスキー歌劇場

チャイコフスキー/マゼッパ

(コンサート形式)

 

音楽監督・指揮:ワレリー・ゲルギエフ

合唱指導:アンドレイ・ペトレンコ

音楽スタッフ:イリーナ・ソボレヴァ

 

マゼッパ:ウラディスラフ・スリムスキー

コチュベイ:スタニスラフ・トロフィモフ

リュボフ:アンナ・キクナーゼ

マリア:マリア・バヤンキナ

アンドレイ:エフゲニー・アキーモフ

オルリク:ミハイル・コレリシヴィリ

酔っ払いのコサック:アントン・ハランスキー

 

管弦楽・合唱: マリインスキー歌劇場管弦楽団・合唱団

 

 

 

チャイコフスキー/マゼッパ!今回のゲルギエフ/マリインスキー歌劇場の来日公演の、間違いなくハイライトと思われる公演。珍しい演目ということで、しっかりと予習をして臨みました。

 

聴いたのは2000年頃にロシアのオペラをいろいろ勉強する時にまとめて購入した、ゲルギエフ/マリインスキー歌劇場のロシア・オペラのシリーズのCD。その時はマゼッパを聴く予定は全くありませんでしたが、珍しいCDなので、なくなっちゃうかも知れないと思い、この際まとめて買っちゃおう!と少々無理して買ったCDでした。

 

これが予習で大活躍!音楽が何と素晴らしいことか!何も見ないで聴いていると、ほとんどヴェルディのグランド・オペラを思わせます。歴史を背景に、壮大かつ人間模様に溢れた傑作。一度聴いたら大はまりして、10回は聴いて実演に臨みました。

 

 

 

(写真)私が予習ではまりまくったゲルギエフ/マリインスキー歌劇場のCD。フランツのお得意の、その昔買ったCDを聴いてみたら大ヒット!のパターンきた~!(笑) 特に第2幕(CD2枚目)は魅力的な旋律が次から次へと出てきて、聴き応え抜群でした。

 

 

 

合唱とオケとゲルギエフさんが登場の後、演奏が始まる前に、マエストロ・マリス・ヤンソンスを追悼して、今日の演奏を捧げることがアナウンスされ、サントリーホールの会場の全員で黙祷をしました。私はこの日のお昼に追悼記事を書きましたが、やはりこの流れになりますよね。改めて偉大な指揮者に感謝の念。

 

(参考)追悼 マリス・ヤンソンスさん

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12551707361.html

 

 

 

第1幕。スペクタクルな導入の音楽が素晴らしい!うなる低弦と高らかに鳴り響く金管。昨日のスペードの女王といい、マリインスキー歌劇場のオケの素晴らしさに感嘆します。

 

マリアがマゼッパへの想いを歌う歌詞には「何か分からない力」に惹かれると。先月のウィーン・フィルの来日公演で聴いたワルツ/ディミナーテンのことを思い出します。またCDのマリアの歌詞にはマゼッパの「狡猾な話」も愛する、とありましたが、字幕は「巧妙な話」でした。ですよね~(笑)。

 

アンドレイが「マリ~ア~」と歌い突然登場するシーンはとても印象的。そしてマリアへの愛を歌う旋律は、「白鳥の湖」に似た叙情的な旋律が聴かれ、雰囲気を盛り上げます。さすがはチャイコフスキー!

 

その後のマゼッパ登場の賑やかな笛や太鼓の音楽は、モーツァルト/後宮からの逃走を思わせます(笑)。マゼッパを歓迎する合唱と踊り、ゴパックの踊りはバレエ音楽が得意なチャイコフスキーの面目躍如。雰囲気たっぷりのオケが痺れるほど上手い!

 

マゼッパはコチュベイにマリアとの結婚を打ち明け、コチュベイは大いに当惑します。「若い恋は一瞬のうちに燃えそして燃え尽きる。老人の恋、晩熱の炎はもはや冷めることがない」と歌うマゼッパ。70歳のご老人がおいおいとも思いますが、一つの真理を示しているようにも思います。素晴らしいチャイコフスキーの音楽とウラディスラフ・スリムスキーさんの歌がそれに説得力を持たせます。

 

マゼッパは同意しないコチュベイを威嚇して追い込みます。やっぱり「狡猾」かも?(笑) その後の各人が葛藤の思いを歌う6重唱が素晴らしい!私がヴェルディを思わせる、と思ったのは特にこのような場面です。マゼッパは親より自分を選んだマリアを連れて行ってしまいました。

 

 

第2場はリュボフ、コチュベイ、アンドレイと迫力の歌のリレーがいい感じ。最後のマゼッパを破滅させるぞ!とコチュベイやアンドレイを始め、みんなで盛り上がる音楽は、意外にも何だか楽しそうな雰囲気(笑)。この復讐を歌うのに明るい音楽は、ヴェルディ/リゴレット第2幕ラストと双璧に感じます。この幕のラストでは希望を残して幕を閉じましたが…。

 

 

 

第2幕。序曲の重々しいトロンボーンがチャイコフスキーらしくていい。捕えられたコチュベイの魂の歌はもの凄い迫力!スタニスラフ・トロフィモフさんの素晴らしいバス!

 

コチュベイが「そうだ、お前たちは間違っていない」と自分の3つの宝について歌う場面。素朴で気骨ある歌がとてもいい感じ。1つ目の宝の歌ではヴァイオリンとチェロを思いっきり強調!ゲルギエフさんの自由自在の指揮に魅了されます。この辺り、もう涙涙…。コチュベイへの拷問を示すオケの響きが悲しい…。最後に再びトロンボーンが重厚に響いて終わりました。

 

 

第2場。予習の時点で一番好きだった場面です。マゼッパは前奏曲で苦悩する演技、オルリクにコチュベイたちの処刑の執行を命じた後にも、迷う演技が付いていました。

 

マゼッパが「おお、マリア、マリア!」とマリアへの愛を大いに歌うマゼッパのアリオーソ。憧れの気持ちを表わすチャイコフスキーの音楽が素晴らしい!前奏のたっぷりの木管にも痺れました。

 

その後のマゼッパとマリアのやりとりの場面で、マゼッパがマリアを諭す歌は、素朴な雰囲気で温かみと広がり感のある音楽が何と魅力的なことか!

 

まだまだマゼッパとマリアのやりとりが続きます。マゼッパから王座をと言われて喜ぶマリア。「父と夫とどちらが大切だ?」と問われ、マリアは逡巡の上で「私はあなたの為に覚悟ができています」と歌います。ここで出てくるクラリネットの、まるで覚悟を決めたような旋律には、ほとんどキュン死しそうになるくらいに魅了されます!このオペラではマリアの心境をクラリネットがよく表わしていると思いました。

 

マリアと忍び込んできたリュボフの場面。「あなた一人が、残虐な行為を和らげることができるのです。」と、リュボフがマリアにコチュベイを助けるように懇願する歌は、ヴェルディ/運命の力に似た、だんだん上がっていく旋律がとても印象的。アンナ・キクナーゼさんのリュボフの魂の歌!

 

そしてリュボフが何度か懇願して、最後マリアがその旋律を呼応して歌う瞬間!大いに痺れます!もう涙止まりません…。しかし、マリアの歌詞は助けるものではなく、自分を責めるばかり。既におかしくなってしまっているんですね…。


 

処刑の群衆の場面に酔いどれコサック兵が乱入。このシリアスな場面に挟まれるコミカルな歌は、ボロディン/イーゴリ公のクドーク弾きを思わせます。バンダも含めた金管が大盛り上がりでスペクタクル!

 

最後、死にゆくコチュベイとイスクラの懺悔の祈りの歌、それを引き継ぐ合唱が非常に感動的。その合唱の途中に厳しく差し込む金管群、そして悲劇の音楽。最後、懺悔の祈りの旋律がトランペットで高らかに鳴らされるのは2人の魂が安らかに天に昇ったことを示しているのでしょう。大いなる感動に包まれる場面!

 

 

 

第3幕。ポルタワの戦いでまたしてもスペクタクルに盛り上がるオケが素晴らしい!ロシアの勝利を伝える旋律が高らかに鳴らされました。
 

戦いに敗れて敗走するマゼッパが、おかしくなってしまったマリアと再開するシーンは何と悲しいことか…。コンミズの素晴らしいヴァイオリン・ソロが、悲しいシーンを引き立てます。難しい場面ですが、‘マリア’・バヤンキナさんのマリアの迫真の歌と演技に魅了されます。

 

最後、瀕死のアンドレイがマリアに優しく語りかけるように歌う長調の歌が何と美しいことか!それに答えるマリアの子守歌が悲しい…。アンドレイとは分からなくても、マリアに懐かしさだけは届いた感動的なシーン。ハープがよく利いていた静かな音楽ですが、トリスタンとイゾルデのラストに並び得る、魂の浄化の音楽に思いました。

 

 

 

何この超絶に素晴らしい公演!!!マゼッパ最高!!!マリインスキー最高!!!

 

 

 

いや~、とてつもない公演に当たりました!指揮者・歌手・合唱・オケと揃いも揃って最高!そして実際に実演を聴いて、何よりも「マゼッパ」という作品が凄すぎる!これはもう、チャイコフスキーの最高傑作と断言できるレベル!

 

 

 

ゲルギエフさんはインタビューで、マゼッパのオペラでの来日公演を実現させたい、と話されていました。今回の公演も、歌手の方たちにはバッチリ演技が付いていたので、ほとんどセミ・ステージ形式でしたが、いつかオペラ公演があれば絶対に観に行きたいです!終演後は観客が熱狂的な反応だったので、ゲルギエフさんは手応えを感じられたのではないでしょうか?

 

 

 

ということで、最高のマゼッパの公演でした!今回のマリインスキー歌劇場の来日公演、私はスペードの女王とマゼッパを観て終わりです。最高の公演に当たって本当に嬉しい限り。準備もしっかりできたので、自分GJ!でも、この後のチャイコフスキーの交響曲のコンサートもきっと素晴らしいことでしょう。聴きに行かれる方はどうかお楽しみに!