ユーリ・テミルカーノフさんが読響に客演するコンサートを聴きに行きました。メインは大好きなショスタコーヴィチの13番、大変楽しみです!

 

 

読売日本交響楽団第592回定期演奏会

(サントリーホール)

 

指揮:ユーリ・テミルカーノフ

バス:ピョートル・ミグノフ

男性合唱:新国立劇場合唱団

 

ハイドン/交響曲第94番ト長調「驚愕」

ショスタコーヴィチ/交響曲第13番変ロ短調「バビ・ヤール」

 

 

 

テミルカーノフさんと言えば、昨年のサンクトペテルブルク・フィルの来日公演では、当初、指揮者として予定されていましたが、ご家族にご不幸があったことが理由でキャンセルされました。今回、元気になられて、無事に復帰されて本当に喜ばしい限りです。

 

(参考)2018.11.11 アレクセーエフ/ルガンスキー/サンクトペテルブルク・フィルのロシア・プロ。代役のニコライ・アレクセーエフさんの指揮も素晴らしかったです!

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12418380192.html

 

 

 

前半はハイドン。壮麗な第1楽章、しっとりとした第2楽章、エレガントな第3楽章、快活な第4楽章。テミルカーノフさんのハイドンは何というか恰幅の良いハイドン。昨年のジョヴァンニ・アントニーニさんの指揮で聴いたハイドンとは、まるで別のオケのようでした。いろいろなハイドンを楽しめますね。

 

「驚愕」は第2楽章途中の突然の最強音「ジャン!」で付いた副題ですが、昨日都響で聴いたマルク・ミンコフスキさんの「驚愕」は、1回目は「ジャン!」を鳴らさず指揮を空振り、2回目はオケのメンバーが叫んで驚き、そのまま音楽を続けて、ミンコフスキさんが観客の方を向いてニヤニヤする、というのが得意技です。

 

私はそのミンコフスキさんの演奏に親しんでいるので、テミルカーノフさんの普通の「ジャン!」に逆に驚きました(笑)。

 

 

 

後半はショスタコーヴィチ。この13番は私が15曲あるショスタコーヴィチの交響曲の中で一番好きな曲、ショスタコーヴィチの最高傑作だと思っています。ユーモアや皮肉によって投げ掛けられるメッセージが何と痛烈なことか!この複雑な精神構造の作曲家の真骨頂の音楽だと思います。

 

テミルカーノフさんの13番は、2006年のショスタコーヴィチ生誕100周年のサンクトペテルブルク・フィルとの来日公演が最高の思い出になっています。独唱はセルゲイ・レイフェルクスさん。来日公演でよくぞバビ・ヤールをやってくれた!という画期的な公演!なお、この時は、別プログラムでショスタコーヴィチ/森の歌も演奏され、13番との対比(笑)が凄かったです。

 

 

第1楽章「バビ・ヤール」。アイロニカルな冒頭の旋律を聴いて、「ああ!また13番を聴ける!」と大いなる喜びが。ピョートル・ミグノフさんのバスは情感が込められていて抜群にいい!第2主題は走らず、じっくり聴かせる指揮でした。テミルカーノフさんが振ると、読響は見事にロシアの雰囲気の音色になりますね。最後は迫力の合唱とオケ。

 

第2楽章「ユーモア」。一転、速いテンポでリズミカルな演奏に。ここもミグノフさんは声を裏返さんばかりに上ずったり、めっちゃ雰囲気のある歌!素っ頓狂な木管が雰囲気たっぷりにこだまして皮肉感が満載!途中のコンマスのソロは日下紗矢子さん、ビシッと決めてさすが!

 

新国立劇場合唱団のロシア語も見事です。私、仕事を引退したらロシア語を勉強して、この第2楽章の合唱を歌いたいくらいに大好きな歌。ユーモアは不滅だ!!!テミルカーノフさん、最後の方の金管がブラスバンドを吹くような場面の前で大きく溜めていました。読響は各パート、このリズミカルな音楽をピタッと決めてお見事でした!

 

第3楽章「商店にて」。冒頭からの低弦が充実の響きで魅了されます。「女たちの釣り銭や目方をごまかすのは罪だ」の歌の後の、スペクタクルな音楽も迫力ありました!第4楽章「恐怖」。冒頭の低弦と太鼓の上で吹かれるテューバのソロが本当に見事!途中の不気味な弦楽の音楽も非常に雰囲気ありました。この辺りはほとんど現代音楽ですね。

 

第5楽章「立身出世」。一転、明るい長調のフルートで始まる何とも言えないユニークな曲。おどけた感じのファゴットですが、諦めの境地のよう。最後のチェレスタを聴くと何とも言えない心境になりますね。ラストの鐘の音の余韻に浸りました。

 

 

ユーリ・テミルカーノフさんとピュートル・ミグノフさんと新国立劇場合唱団と読響のバビ・ヤール、もう素晴らしかったです!テミルカーノフさんはそこまでテンポをいじらず、見得を切るような場面もなく、あたかも辿り着いた境地の音楽。低弦を活かして土臭くこの曲の魅力を引き出していたように思いました。ミグノフさんのバスは歌役者という印象すら持つ見事なもの!新国立劇場合唱団もさすがの歌でした!カーテンコールで最後、鳴り止まぬ拍手にテミルカーノフさんが一人で出てきて、ショスタコーヴィチのスコアを高く掲げたのは感動的でした!

 

 

今日のコンサートは、ユーモアに溢れた2曲をリレーする素敵なコンサートですが、ユーモアは幸せな中で人を驚かすこともあれば、虐げられた中で権力に対抗する手段にもなったり、いろいろなシチュエーションで登場して人の力になります。ユーモアの価値を改めて認識できた好企画でしたが、できれば前者の方がいいですよね。

 

ユーモア、笑い、遊び心。どんな時に忘れないようにしたいものです。