(GWの旅行記の続き) 素晴らしかったアイルランドの3日間。オーストリア→イギリス→アイルランドと楽しんできたGWの旅行は、最後の国ドイツへと移動します。ダブリンからフランクフルトにフライトで飛んで、スーツケースをホテルに預け、真っ先に向かったのはフランクフルトが誇る美術館、シュテーデル美術館です。

 

ここはフランクフルトの銀行家、シュテーデルの寄附によって設立された絵画館で、中世から現代までのドイツ、イタリア、オランダ、フランスなどの絵画を広範囲に集めています。久しぶりに観に行きましたが、特に印象に残った絵は以下の通りです。

 

 

 

 

(写真)Pieter Janssens ElingaInterior with Painter, Woman Reading and Maid Sweeping, 1665-70

 

フェルメールに似ていますが、より広い空間の絵。床は市松模様でなく四角の組み合わせ。壁には風景画や肖像画が沢山。この家の娘さんと思われる女性が窓の明るい光を頼りに本を読んでいて、メイドさんがそばで掃除をしています。この時代のオランダの日常を切り取った絵のようです。

 

 

 

(写真)Gerard Ter BorchLady with Wine Glass, 1656/57

 

フェルメールの絵にも出てくる女性がワインを飲む絵に似ていますが、男性はいなくて、女性が自らワインを飲む絵。しかも左手にワイングラス、右手にカラフェを持って飲んでいる、非常に珍しいシーンです。

 

テーブルには手紙とペンとインクがあるので、男性に打ち明ける手紙を書く勇気をワインから得ているのでしょうか?いえいえ、黒い被りものの衣装から、不幸があってワインから慰めを得ている場面なのかも知れません。

 

 

 

(写真)Johannes VermeerThe Geographer, 1669

 

そしてフェルメールの地理学者の絵です!前にもここで観たことがありますが、久しぶりに観た地理学者。日本の着物がアイデアとも言われる青と赤の服、地図を広げ、コンパスと本を手にして、考え事をしている表情が素晴らしい。未来を切り開く気概に満ちた表情で、何かを閃いた表情にも見えます。

 

手前にはフェルメールによくある黄色地に青の織物。床にも大きな本。背景に緑と黄色の椅子が半分だけ描かれているのがユニーク。壁にはシンプルな世界地図。背景の壁も窓もシンプルなのは仕事の部屋だからでしょうか?棚の上には地球儀と本。細部まで見応えのある絵。

 

 

 

 

(写真)Lucas van ValckenborchWinter Landscape with Snowfall near Antwerp, 1575

 

ブリューゲルの雪遊びの絵とは、また違った魅力を持つ絵。より人々の描写が柔らかく、遊んでいるのではなく、仕事にいそしんでいたり、雪の中でも生活感を感じる絵。

 

 

 

 

(写真)Claude MonetThe Lunchcon, 1868

 

モネの絵では珍しい、室内で家族がランチを取っている絵。パンやポテト、卵、ぶどうが見え、とても豊かな食事のシーンのようにも見えますが、奥の女性二人は黒い衣装で悲しみの表情に見えます。旦那さんが亡くなり、残された赤ちゃんの行く末を心配している場面なのでしょうか?

 

 

 

 

(写真)Arnold BoecklinVIlla by the Sea, 1871-74

 

うわ~、何か雰囲気ある絵!と思ったらベックリンでした。海沿いのヴィラ、ピンクと水色の夕焼けに妖しく照らされています。海辺に黒い修道女の衣装の女性。これはあの死の島にも出てきた女性では?あたかも死の島に行った後、海辺で祈りを捧げているような絵でした。糸杉も描かれているので、この場所自体が死の島と同様に神聖な場所なのかも知れません。

 

 

 

 

(写真)Edvard MunchJealousy, 1913

 

ムンクの「嫉妬」と題された絵。1人の白い服の女性の両側に、黒い服の2人の男性。左側の男性がもの凄い形相!女性はしらばっくれた表情、右側の男性は視線を下に落として、めっちゃ気まずそうな表情(笑)。きっと左側の男性は妻に裏切られた憤怒の表情なのでしょう。きゃー、怖い~!今年1月にも東京都美術館で沢山の作品を観たムンクの絵。その絵のオーラに圧倒されます。

 

(参考)2019.1.19 ムンク展-共鳴する魂の叫び(東京都美術館)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12434168641.html

 

 

 

 

(写真)TizianMadonna and Child, St Catherine and a Shepherd, 1530

 

私がシュテーデル美術館に行った時は、タイミングよくティツィアーノの企画展をやっていましたが、その中から1枚。「うさぎの聖母」とて有名な絵です。うさぎは多産の象徴、その白さは聖母の処女性を表わしている絵ということですが、何よりマリア様がうさぎを掴まえているのが愛しすぎて(笑)。うさぎのキョトンとした表情がまたいい!素敵な絵に出逢えました。

 

 

 

その他、絵葉書はありませんでしたが、以下の絵が印象的でした。

 

 

Giovanni SegantiniAlpine Landscape at Sunset, 1895-98

ヨーロッパを旅する楽しみの一つ、セガンティーニの絵。一見してセガンティーニと分かる、アルプスの自然の素晴らしさや厳しさを伝える印象的な絵です。緑の草原、白に様々な色が入り夕焼けに照らされる山々、小さな池と岩。現場で観ると絵が圧倒的なオーラで迫ってきます。

 

Rembrandt Harmensz van RijnThe Blinding of Samson, 1636

サムソンがデリラに髪を切られた後、兵士に襲われ目を潰される絵。サムソンとデリラの絵はたまに見かけますが、その後のシーンを非常に具体的に描いたショッキングな絵。デリラは得意気なような、寂しさを感じているような、何とも言えない表情に見えました。

 

Max LiebermanSamson and Delilah, 1902

もう1枚、サムソンとデリラの絵。デリラがサムソンの髪を切って、「切ったわよ!」と高らかに髪を掲げている絵。デリラにすがり打ちひしがれているサムソンと白い肌のデリラが印象的。

 

Gerard DavidThe Annunciation, 1509

私のテーマの絵、受胎告知の絵です。茶色と黒の部屋で、深い緑の服をまとったマリアさまが、青い天使からのお告げを神妙に受けている絵。マリアさまのすぐ頭上に光る鳩が現れて印象的。

 

Massimo StanzioneSusanna and the Elders, 1630-35

有名なスザンナと老人の絵。美しいスザンナの白い肌、二人の老人の姑息感がよく出ている絵。

 

Hans HolbeinSunday view of Frankfurt Dominican Alterpiece, 1501

キリストの7つの場面と最後の晩餐の場面を描いた大きな絵。フランクフルトでこの絵を観るのは感慨を持ちます。

 

 

 

フランクフルトは何度も来ていて、シュテーデル美術館はこれで少なくとも3回目になると思いますが、何度観ても素晴らしい絵画の数々に魅了されます。フランクフルト中央駅から近くて、さっと寄れるのもいいですね。マイン川を渡るアプローチも素晴らしい。

 

 

 

(写真)マイン川にかかる橋の上から見たシュテーデル美術館

 

 

 

(写真)マイン川。左岸奥に見える塔は大聖堂

 

 

 

(写真)マイン川沿いは散策ができます。立派な木があってとてもいい雰囲気。

 

 

 

さて、まだまちを見て周りたいところですが、今晩は今回の旅行で最も楽しみにしていたオペラを観るので、ぐっと我慢。ホテルでしっかり2時間仮眠を取って、集中力120%で観に行きました。

 

おそらく日本で観ることはないと思われる隠れた傑作オペラ。大いなる感動に包まれました!次の記事で!