ベルトラン・ド・ビリーさんが新日フィルに客演するコンサートを聴きに行きました。栗友会合唱団とのオール・ブラームスの合唱曲、とても楽しみです!

 

 

新日本フィルハーモニー交響楽団第607回定期演奏会

(サントリーホール)

 

指揮:ベルトラン・ド・ビリー

ソプラノ:高橋 絵里

バリトン:与那城 敬

合唱:栗友会合唱団

 

ブラームス/運命の歌

ブラームス/哀悼の歌

ブラームス/ドイツ・レクイエム

 

 

 

まずは運命の歌。初めて聴きますが、冒頭からの魅力的な旋律にうっとり!ブラームスの歌曲って凄い!そして繊細に歌われる合唱が素晴らしい!“heilige”(聖なる)を歌う時の合唱の飛翔感たるや!「楽を奏でる女性の指が 聖なる弦を揺らすがごとくに」のヘルダーリンの歌詞もいいですね。

 

人間の苦悩を描く短調の後、オケだけで長調になって安息の音楽で終わるのがまたいい。この曲は相当な名曲だと感じました。ドイツ・レクイエムに似て、ティンパニが利いていましたね。

 

 

続いて哀悼の歌。こちらも初めて聴きますが素敵な合唱曲。哀悼の歌とは言っても短調になるのはほんの一瞬で、ポジティブな内容。神話の中で亡くなったものたちを讃える歌です。あの明るさに満ちたピアノ協奏曲第2番と同じ時期に書かれた曲と聞いて、なるほど!と思いました。こちらも栗友会合唱団による合唱が見事。

 

 

 

後半はドイツ・レクイエム。有名な曲ですが、私はなぜか長らく縁がなく、昨年GWの旅行のドレスデンで初めて実演を聴きました。この時は名曲をドレスデン国立歌劇場合唱団の創設200周年の記念コンサートで聴いて、突き抜ける感動を覚えました!今日はどうでしょうか?

 

(参考)2018.5.1 クリスティアン・ティーレマン/シュターツカペレ・ドレスデン/ドレスデン国立歌劇場合唱団のブラームス/ドイツ・レクイエム

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12384006081.html

 

 

第1曲。低弦とオルガンのブレンドされた絶妙な音楽から。静かに“Selig sind”と歌われる歌い出しが素敵。やはりドイツ・レクイエムはいい!次の“Die mit Tränen säen”の旋律の展開には痺れます。オーボエの旋律もいいですね~。

 

第2曲。最初の低音はよく聴くと、ドン・カルロのフィリポ2世と宗教裁判長の場面に似ている気が?短調の旋律が高らかに歌われてオルガンが鳴り響く場面の感動!そして勢い良く長調に転じて、大好きなティンパニに導かれた“ewige Freude”(永遠の喜び)の場面。ティンパニは程よく叩かれ寄り添い、優しく安堵感を感じる盛り上がりで終わりました。

 

第3曲。与那城敬さんによるバリトンの素敵な歌声。そしてこの曲の一番の聴きどころと思われる最後のフーガ!ティーレマンさんの時には思い切り踏み込み、超弩級に盛り上げたフーガでしたが、ド・ビリーさんは透明感のある合唱を活かした、救済の喜びを感じるフーガ!

 

この場面はドレスデンの時の記事で「バッハを超えたバッハ」と書きましたが、雰囲気をよく表していて、自分でもなかなかいい言葉を思い付いたような気がします。プログラムに「低音に終始、ニ長調の主音であるレの音が保続されており、絶大な効果を上げている。」とありましたが、聴きながら正にその通りだと思いました。

 

心地良い第4曲に続いて、第5曲。ソプラノによる慈愛に満ちた歌。チラシでよく拝見する高橋絵里さんは初めて聴きましたが、透明感だけでなくしっとりとした歌声で、歌詞の内容によく合っていました。

 

第6曲。ここは「怒りの日」「最後の審判」の場面ですが、“Hölle, wo ist dein Sieg?”(地獄よ、お目の勝利はどこにあるのか?)のフーガから、その後長調に転じての主を讃える晴れ晴れとしたフーガ!ここは本当に清々しい思いがします。今日もとても盛り上がりました!そして、穏やかな第7曲でしみじみ終わりました。

 

 

栗友会合唱団の繊細で透明感のある合唱を活かしたドイツ・レクイエム、感動的な演奏でした!ティーレマンさんの時は振幅の激しい指揮に大いに感動して号泣ものでしたが、今日は歌詞の内容を噛みしめての優しさに溢れた崇高な演奏に、知らず知らずに涙が流れていた、という感じ。いずれにしても感動的な演奏、感動的な曲です。

 

運命の歌→哀悼の歌→ドイツ・レクイエムの流れの中での統一感も見事。歌とオケのバランスも良く、さすがはオペラも得意としているベルトラン・ド・ビリーさんだなと思いました。新日フィルも好演でしたね。サントリーホールならではのオルガンも大変効果的でした。

 

 

ドイツ・レクイエムはブラームスの出世作。初演に感激したクララ・シューマンは「その予言は今日果たされました」と日記に書いています。「予言」とは有名なロベルト・シューマンの「新しい道」で「その彼がやって来たのだ」とブラームスを紹介したエッセイのことです。

 

今日は演奏もとても良かったですが、そもそも曲が歌詞と相まって非常に素晴らしく書かれている、という印象を改めて持ちました。遅まきながら(笑)、その魅力に触れましたが、今後また、聴く機会が本当に楽しみです!

 

 

 

(写真)朝に行ったので逆光ですが、ブラームス/ドイツ・レクイエムが初演されたブレーメンの大聖堂。人々は冒頭の合唱「幸いなるかな」を聴いた段階で早くも涙を流した、と言われています。

 

 

(写真)そしてブレーメンと言えば、お約束のこちら!(笑)