毎回毎回、素晴らしいバッハを聴かせていただける、バッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)のコンサートを聴きに行きました。今回は「マリアの賛歌」と題して、マニフィカトを中心としたプログラムです!

 

 

バッハ・コレギウム・ジャパン第133回定期演奏会

(東京オペラシティ・コンサートーホール)

 

指揮:鈴木 優人

ソプラノ:松井 亜希

カウンターテナー:テリー・ウェイ

テノール:櫻田 亮

バス:加耒 徹

オルガン:鈴木 雅明

 

合唱と管弦楽:バッハ・コレギウム・ジャパン

 

 

ブクステフーデ/第一旋法によるマニフィカトBuxWV203

J.S.バッハ/前奏曲、トリオとフーガ ハ長調BWV545/1,529/2,545/2

J.S.バッハ/カンタータ第147番《心と口と行いと生涯をもて》BWV147

 

J.S.バッハ/カンタータ第37番《信じて洗礼を受ける者は》BWV37

J.S.バッハ/マニフィカト ニ長調BWV243

 

 

 

1曲目のブクステフーデと2曲目のバッハは、鈴木雅明さんのオルガン独奏となります。ブクステフーデは重厚なフーガが印象的、様々なストップによる音が聴こえて、皆が入れ替わり立ち代りマリアさまを祝福するかのよう。

 

バッハは冒頭から晴れやかな曲。これがミサの後奏に流れたら即座に昇天してしまいそう。右手、左手、足の3つのパートが複層的に絡み合う場面など、大変聴き応えのある演奏でした!

 

 

前半最後はバッハ/カンタータ第147番。冒頭のナチュラル・トランペットが晴れやかさ出します。オーボエ・ダモーレとオーボエ・ダ・カッチャの音色は本当にいいですね。ヴァイオリンが奏でる3練符が三位一体を表わしたり、本当によくできた曲です。

 

そして、第1部と第2部の最後に出てくるコラール!このコラールはあの「主よ、人の望みの喜びよ」の旋律なんです!第2部の最後の第10曲の「イエスは変わることなきわが喜び」の”Jesus bleibet meine Freude”のドイツ語が英語の”Jesu, joy of man's desiring”となり、上の日本語に訳されたものです。

 

単曲で聴く時よりも、鈴木優人さんは速めのテンポで聴かせますが、BCJの素晴らしい合唱とオケで聴いて極めて感動的!もう涙涙…。この曲は私もピアノのレパートリーにしていますが、今度弾く時はより一層、信仰心と感動もて弾けそうな気がします。

 

(参考)J.S.バッハ/カンタータ第147番より第10曲コラール

https://www.youtube.com/watch?v=drdd5xxZ_eE (3分)

※Bengiamin Applさんの公式動画より。コンチェルト・ケルンの伴奏。

 

実はこの曲はイエスを身ごもったマリアが親戚のエリサベトの家に行って挨拶した「マリア訪問の祝日」のために書かれた曲ですが、今年は一昨日の5月31日がそれに当たるそうです。時節を踏まえた、よく考えられた選曲ですね!

 

 

 

後半はバッハのカンタータ第37番。この曲はキリスト昇天祭のためのカンタータですが、復活祭の40日後なので、今年は5月30日となり、3日前となります。BCJさすがの選曲です!

 

そして、この曲は第2曲のヴァイオリン・パートが失われたそうですが、鈴木優人さんがヴァイオリン・パートを復元されたそうです!しかも今回ではなく過去のカンタータ全曲演奏会の時なので、18歳の時とのこと!実際に聴いてみると、ただ合わせるだけでなく、新しさも感じる旋律で、やはり鈴木優人さん、ただ者ではありません。バスのレチタティーヴォからアリア、最後の合唱も素晴らしい曲でした。

 

 

最後の曲はマニフィカト。実はこの曲は昨年12月にトーマス・ヘンゲルブロック/バルタザール・ノイマン合唱団/N響で聴いています。その時はクリスマス用挿入曲つきでしたが、今日はカンタータのみの演奏です。

 

(参考)2018.12.7 トーマス・ヘンゲルブロック/バルタザール・ノイマン合唱団/N響のオール・バッハ・プロ

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12424532222.html

 

冒頭から3本のトランペットが晴れ晴れしい!オーボエ・ダモーレのしっとり感や鋭く登場する合唱も見事です。途中の短調の旋律はあたかもマタイ受難曲を先取りしているかのように思わせます。N響の時に聴いてほっこりした第9曲は、フルートは物語を進める雰囲気で、鈴木雅明さんのチェンバロがリズムを作っていました。やはり演奏によって受ける印象が違いますね。

 

最後のコラールも聴かせました。素晴らしいマニフィカト!爽やかな気候の中でこの曲を聴く晴れ晴れしさ!N響のマニフィカトも現代オケがいい味出していて、クリスマス付きで楽しかったですが、BCJのマニフィカトはやはり究極!トランペットが輝かしかく響くように変ホ長調からニ長調に移調されたこともよく分りました。

 

 

 

いや~、やはりBCJはいつ聴いても素晴らしい!実はこの日は鈴木優人さんが指揮者で鈴木雅明さんが通奏低音(オルガン)を弾くという、いつもと逆のパターンでした。素晴らしい指揮者に成長された鈴木優人さん。今後はこのパターンが増えてくるものと思われます。

 

鈴木優人さんは「父は楽しそうに通奏低音を奏でて」なんておっしゃっていましたが、世界的なバッハの権威の前で指揮をしなければならないのは、めっちゃプレッシャーですよね(笑)。しかし、いつものBCJと変わらぬクオリティ、さすがの指揮でした。今月末の調布国際音楽祭でも獅子奮迅の働きぶりですが、ますますのご活躍を祈っております!

 

 

 

ところで、BCJのコンサートは音楽を聴くだけでなく、楽しみなのがプログラム。特に鈴木雅明さんの6ページに渡る巻頭言は、マニフィカトについて、聖書やバッハの楽曲の様々な場面を引用した詳しい解説があり、非常に読み応えがありました。演奏される各曲についてもとても詳しい解説が載っていて、プログラムを見ながら実際に演奏を聴くと、バッハへの理解が深まります。

 

ちなみに、GWの旅行でウィーン・フィルの定期演奏会を聴きましたが、ウィーン・フィルの定期演奏会のプログラムもBCJ同様に詳しいもので、ブルックナー/交響曲第2番だけで5ページもの解説が付いていて、さらに、かのウィーン楽友協会資料館館長のオットー・ビーバさんによる作曲家クリスチャン・メイソンさんやオーケストラと楽団員についての非常に示唆に富んだ記事までありました。私も意見交換をして、大いに唸ったことがありましたが、これらがウィーンの聴衆の高い知見の源になっていることは想像に難くありません。

 

言うまでもなく、プログラムはクラシック音楽の初心者の方がコンサートを楽しめるよう、大きな拠りどころや助けになるだけでなく、聴き込んだ愛好家にも最新の知見をもたらしてくれる大切な情報源です。他のオーケストラを含め、今後とも充実した内容を期待します!

 

 

 

(写真)今日のBCJのプログラム。だんだんBCJのプログラムが増えてきたので、何もないお休みの日に、お気に入りのカフェに持ち込んで、まとめてゆっくり読み返してみようと思います。