セバスティアン・ヴァイグレさんが読響の第10代常任指揮者に就任する定期演奏会を聴きに行きました。

 

 

読売日本交響楽団第588回定期演奏会

《第10代常任指揮者就任披露演奏会》

(サントリーホール)

 

指揮:セバスティアン・ヴァイグレ

 

ヘンツェ/7つのボレロ

ブルックナー/交響曲第9番ニ短調(ノヴァーク版)

 

 

 

先日の先出し記事の通り、GWの旅行で、セバスティアン・ヴァイグレさんが指揮するフランクフルト歌劇場でのフランツ・シュレーカー/はるかなる響きの公演を観ました。非常に複雑なスコア、音の饗宴をしっかり形にして、シュレーカーの陶酔的で官能的な音楽を見事に聴かせていた印象を持ちました。

 

(参考)2019.5.4 フランツ・シュレーカー/はるかなる響き(フランクフルト歌劇場)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12459039979.html

※現地で少し書いた先出し記事。詳しい感想記事は後日に。

 

長らくフランクフルト歌劇場の音楽監督を務められているように、ヴァイグレさんはオペラがメインの指揮者、という印象です。コンサートをどう振るのか、興味津々です。

 

 

前半はヘンツェ/7つのボレロ。まず先日フランクフルトで見たばかりのヴァイグレさんが、サントリーホールの指揮台の上に立つのを見て感動!このヘンツェの曲は1998年作曲ですが、非常に聴きやすい現代曲。第2曲「賛歌」には、R.シュトラウス/ばらの騎士の第3幕の雰囲気を、第3曲「期待」にはラヴェル/ラ・ヴァルスの旋律を、それぞれ覚えたくらいです。

 

7曲の中では、特に第4曲の「王のクジャク」が大変聴き応えがありました。ヴァイグレさんの振る読響はバランスがよく大変充実の響き。打楽器が沢山登場する曲なので、まるで前の常任指揮者のシルヴァン・カンブルランさんの歴史的な公演だった、あのメシアン/アッシジの聖フランチェスコを、ドイツの作曲家を充てて引き取ったかのようにも感じました。

 

 

 

後半はブルックナー9番。私の東京でのブルックナー体験は、全交響曲の実演を聴いた、スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ/読響の数々のコンサートが燦然と輝いています。サントリーホールで読響のブルックナーを聴くのは、それ自体が特別なコンサートという印象も。さあ、ヴァイグレさんの指揮はどうでしょうか?

 

 

第1楽章。冒頭の弱音の弦楽から何か新しい響き、そして充実の音楽。第1主題は最後のティンパニを強調。第2主題はゆっくりと進めて、繰り返しはたっぷり間を取っていました。この時点で早くも大いなる感動!ブルックナーの音楽、何と美しいことか!

 

聴き進めると、ヴァイグレさんは弱音をとても有効に使っている印象です。ブルックナーが合唱の指揮の際にピアニッシモを大切にして、何度かやり直しになった後、合唱が示し合わせて歌わずに黙っていたら、「今度はよい」と言った逸話を思い出しました。2回目の第2主題の前の弦楽の音楽、読響の弦が何と美しいこと!最後は大きく盛り上げて終わりました。充実の第1楽章!

 

第2楽章。第1主題は冒頭からザッハリッヒに鋭くキッパリとしたリズム。マイルドだった第1楽章と対照的です。潤いのない厳しい岩山の風景を感じます。

 

一方、第2主題は小気味よく、チャーミングですらある雰囲気!何と言うか、天使がわんさか登場するかような印象です(笑)。フレーズの最後をグリッサンドっぽく演奏する音が聴こえましたが、まるで天使が斜面をつるんと滑って遊んでいるかのよう。ヴァイグレさんの指揮だといろいろイメージが湧いてきますね。

 

第3楽章。冒頭からややあっさり目の進行。地平を開くような壮大な金管もたっぷりというよりは、端正な印象です。しかし、それが鎮まって、弦楽による深~い響きのパートになると、チェロがたっぷりで充実の響き!めくるめくブルックナーの深遠な世界に惹き込まれます。

 

最後の一歩手前の、オケが張り裂けるようなトゥッティが強烈!ほとんど最後の審判を思わせました。そして訪れる浄化の音楽。最後も余韻はさほど残さず、あたかも、これが終わりでなく、後に続きのある音楽のように聴こえました!

 

 

私はどちらかと言うとゆっくりたっぷりの第3楽章の方が好きですが、ヴァイグレさんと読響の、いわゆる聴きどころはややあっさり目、途中の弦楽をゆったり深~くした演奏にも大いに惹かれました!スクロヴァチェフスキさんのブルックナーとは異なる世界観のように思います。

 

 

そして、ブルックナーを聴き終えて思ったのは、ヘンツェとブルックナーを配した今日のプログラムは、読響の常任指揮者だったゲルト・アルブレヒトさん(第7代)とスタニスラフ・スクロヴァチェフスキさん(第8代)とシルヴァン・カンブルランさん(第9代)の業績や歴史を受け継いで、それを発展させていく、そんな意図があるような印象を持ちました。そう考えると、どうして最初に9番を持ってきたのかがよく分ります。

 

 

 

セバスティアン・ヴァイグレさんの読響の就任公演、とても幸先の良いスタートとなりました!印象としては、プログラムに記事が寄せられていたように、正に「ドイツ本格派」、そしてカペルマイスターという雰囲気。バランスがよく充実の響き、随所に工夫が見られますが、コンサート指揮者ほどは角が尖っていない指揮、という印象です。

 

5月の残りの2つのプログラムのみならず、今シーズンは読響の常任指揮者として、楽しみなプログラムが沢山待っています。この後も楽しみに聴きに行ければと思います。セバスティアン・ヴァイグレさん、読響のみなさま、素晴らしいスタート、おめでとうございます!

 

 

 

 

(写真)セバスティアン・ヴァイグレさんが2008年から音楽総監督を務めるフランクフルト歌劇場。2015年と2018年には「オーパンヴェルト」誌で「年間最優秀歌劇場」となったそうです。

 

5月4日にヴァイグレさんが指揮した素晴らしいフランツ・シュレーカー/はるかなる響きの詳しい感想記事は、旅行記で後日(おそらく6月末くらい)に出てくる予定です。お楽しみに!