クリスティアン・ティーレマン/ウィーン・フィルの最高のブルックナーを聴いた後ですが、この日のイベントはこれで終わりではありませんでした。

 

ウィーンで絶賛上演中のミュージカル、I AM FROM AUSTRIAを観に行きました!

 

 

I AM FROM AUSTRIA

Das Musical mit den Hits von Rainhard Fendrich

Raimund Theater

 

Creative

Musik und Liedtexte: Rainhard Fendrich

Buch: Titus Hoffmann & Christian Struppeck

Regie: Andreas Gergen

Musikalische Leitung: Michael Roemer

Orchestrierung: Roy Moore & Michael Reed

Lichtdesign: Andrew Voller

Sounddesign: Thomas Strebel

Videodesign: Soenke Feick

Buehnenbild: Stephan Prattes

Kostuembild: Uta Loher & Conny Lueders

Musical Arrangements und Supervision: Michael Reed

Choreographie: Kim Duddy

 

Cast

Emma Carter: Cornelia Mooswalder

Josi Edler: Oliver Arno

Romy Edler: Ariane Swoboda

Wolfgang Edler: Andreas Steppan

Richard Rattinger: Martin Bermoser

Elfie Schratt: Dolores Schmidinger

Felix Moser: Matthias Trattner

Pablo Garcia: Karim ben Mansur

Rainer Berger: Martin Berger

 

Orchester der Vereinigten Buehnen Wien

 

 

 

(写真)I AM FROM AUSTRIAのプログラム

 

 

(写真)ライムント劇場。のぼり旗が沢山立って、登場人物の写真もあって、とても雰囲気がありました。

 

 

 

あらすじをごく簡単に。ハリウッド女優のエマは両親の故郷のオーストリアを初めて訪れ、歴史ある4つ星のエドラーホテルに宿泊します。ハリウッド女優の多忙で窮屈な生活に疲れたエマは、ホテルのオーナー夫妻の息子のジョズィと親しくなり、オーストリアの自然に触れて自分のルーツを再確認します。互いに惹かれるも立場の全く違う2人の恋の行方は、果たしてどうなるのでしょうか?

 

 

 

前半。舞台は3段重ねの可愛らしいケーキの舞台。これは!?昨年ペーザロのロッシーニ音楽祭で観たロッシーニ/アディーナの舞台に似ています(笑)。ハリウッド女優のエマが、マネージャーのリヒャルトにケーキの2階の部屋に閉じ込められるところなど、アディーナとシチュエーションがそっくり(笑)。もしかするとアディーナはこのミュージカルの舞台にインスパイアされたのかも知れません。

 

(参考)2018.8.12 ロッシーニ/アディーナ(ペーザロ・ロッシーニ音楽祭)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12401575846.html

 

ボーイのフェリックスがハリウッド女優であるエマがホテルに来ることを無邪気にツイッターで広めてしまい、お忍びの旅だったのに、多くのマスコミがホテルに来てしまいます。マスコミが集まっていて立腹するエマ。

 

ホテルのオーナー夫妻の息子ジョズィは有名なサッカー選手をホテルのフィットネスのオープニングに招待して、ホテルの知名度を上げる作戦を考えます。一方エマの方は、自由がほしい、私のホームはどこ?の歌が素敵。

 

ジョズィはホテルを変えたいと言い張るエマを、ホテル名物のエドラートルテを献上して、一発で機嫌を戻しました。ジョズィが落としてしまったトルテをこっそり指ですくって味見するエマが可愛い!女性と喧嘩した時には甘いものが効果的、ということを再確認(笑)。

 

そしてエマはジョズィの案内でケーキ工房を見学しに行きますが、ひょんなことから冷蔵庫に閉じ込められてしまいます。寒さに震える2人ですが、ジョズィが上着でエマを温めたりしていい感じ。

 

そしてジョズィと打ち解けたエマは、本名はアデーレ・ヴァルトフォーゲルであること、ブロンドの女性役に抜擢されハリウッドでチャンスを掴んだことなどを打ち明けます。その歌の途中、15個くらいのホールのエドラートルテが「ブロンド!」と口パク付きで合いの手をいれるのが可愛い!(笑)

 

(ちなみに私は徹頭徹尾、黒髪の日本人女性が世界で一番美しいと思っていますが、一方、エマのようにオーストリアの女性のブロンドの髪と真っ赤な口紅は、反則なくらいに美しいとも。)

 

このミュージカルで抜群に受けを取っていたのは、ホテルの女性のコンシェルジュのエルフィ。もうお客さんがバンバン湧いていました(笑)。オーストリアで有名なコメディアンなのかも知れません。

 

エルフィは途中からどんどんおおげさな物言いになってきて、何と昔、ヨハン・シュトラウスと踊ったと発言!どちらの?と聞かれて、意味がよく分からず一瞬ひるむも、両方との答え(笑)。このような適当力って、生きて行く上で大切です。

 

しかも自分の母親はカタリーナ・シュラットと言い張り、誰それ?知らない?と言われたら、グーグルで調べろ、のオチ(笑)。(※カタリーナ・シュラットとは、皇帝フランツ・ヨーゼフの恋人だったブルク劇場の女優です。)

 

有名なサッカー選手の(ユニフォームからするとアルゼンチン)パブロが登場。サッカーの踊りも楽しく、キレキレの踊りのダンサーたちが素晴らしい。

 

有能な経営者である母親ロミーに大して、ジョズィの父親ウォルフガングはいささかさえない雰囲気ですが、好きな女性に対しては辛抱強く頑張れ、と息子を励まします。

 

その歌のシーンでは、男女のエロティックな踊りも入りましたが、これに大いに受ける観客の笑い声は男性ではなく女性のみなさんでした。私はオーストリアの女性のこういうおおらかなところが大好き。歌が終わった後の拍手にも力がこもっていて、男性にはへこたれないでもっと頑張ってほしい、という期待が込められていたと感じました。

 

ジョズィがエマをまちに案内するシーンはまるで映画「ローマの休日」のよう。しかし周りの人々から有名なハリウッド女優のエマと分かってしまい、追いかけられて逃亡。ジョズィは浮浪者に配給をするボランティアをしている友人のところに逃げ込みます。そこでエマが社会の現実を知るとともに、浮浪者に食べ物を配給するシーンはとても感動的。ここで前半が終わりました。

 

 

 

休憩時間、ライムント劇場は初めて、ということで、劇場内を見学。エメリッヒ・カールマンとローベルト・シュトルツの胸像がありました。ポスターや写真もエリーザベト(日本公演の写真も!)、ルドルフ、モーツァルト、レベッカ、ヴァンパイアなど、ブロードウェイとはラインナップが異なる印象でした。

 

 

 

後半。結局、その夜はボーイのフェリックスの部屋に泊めてもらったジョズィとエマ。エマは女優としてのインタビューを、ジョズィはフィットネスのオープニングをすっぽかしてしまいましたが、逆に解放感を喜ぶ2人(笑)。

 

一方、フィットネスのオープニングの取材に来たマスコミは、ジョズィが来ないのに焦れますが、それをエルフィとパブロが面白おかしく間を持たせます。いろいろなスポーツや筋トレの踊りが出てきて、スポーツが好きなお国柄が分かります。ジョズィが戻ってオープニングは成功。

 

そして、ジョズィとエマはライムント劇場からヘリコプターで飛んで空中デート!シェーンブルン宮殿、シュテファン大聖堂、デュルンシュタイン、メルク修道院が出てきて、最後はオーストリア最高峰(3797m)のグロースグロックナーとおぼしき山頂にヘリが着陸!切り立った山の山頂に十字架、そばにはアルプスカモシカも見えます。そこでエマがオーストリアの大自然に自分のルーツを再確認し、感動して歌う主題歌、I AM FROM AUSTRIAがめちゃめちゃ感動的!

 

そして山を裏返したセットが秀逸な山小屋の中で、遂に結ばれるジョズィとエマ。エマはスキーに行きたい!と覚醒したオーストリア人の血が全開!(笑) 私はオーストリアのスキーの英雄ヘルマン・マイヤー(1998年の長野オリンピックでスーパー大回転と大回転で金メダル)のことを思い浮かべました。

 

しかし、なぜか山奥の山小屋にパパラッチが集結?ホテルに戻ったエマに、ハリウッドスターは政治だ、お前は踊らされていればいい、とマネージャーのリヒャルトが歌う怪しい歌。何とパパラッチはマネージャーの仕業でした!

 

その後、リヒャルトに妨害されてなかなか会えない2人。ようやくケーキ工場で再会でき、ジョズィは愛を歌います。エマは共感するも、置かれている立場の違いを話します。「エマ・カーターはブランドなの」というセリフが印象的。お互い惹かれるも寂しく別れる二人…。

 

最後のオペラ舞踏会のシーンは、まんまウィーン国立歌劇場の赤絨毯の階段。踊る人たちの中には人型のパネルで、リッカルド・ムーティ、シシィにモーツァルトまで登場!(笑)。リヒャルトはエマとパブロの婚約発表を仕組んで、エマをさらに売り出そうと画策します。ハリウッド女優を続けるため、仕方なく従ってパブロと2人、発表の場に向かうエマ。


しかし、ラストは意外な展開に!エマは会場にジョズィがいることを認めると、I AM FROM AUSTRIAを歌って、ジョズィとの愛を貫くことをマスコミの前で表明します!喜んで抱き合う2人。ここはプログラムの英語の解説にもなかったので、ああ…悲哀で終わるのかな?と思っていたので、めちゃめちゃ感動しました!

 

一方、そうなると宙ぶらりんになってしまうのはスターサッカー選手のパブロですが、思い詰めて十字を切って何かを決心した表情の後に、自分がゲイであることをカミングアウト!そして故郷の男性の恋人に告白しました!もの凄い感動的な展開!そして、エルダーホテルも念願の5つ星になった報告が届き、万事メデタシメデタシで終わりました!

 

何このめちゃめちゃ感動的なミュージカル!歌に踊りに笑いにトルテにスポーツに自然に山にと、オーストリアてんこ盛りの素晴らしいミュージカル!もう涙溢れて止まりません…。

 

 

(参考)ミュージカル/I AM FROM AUSTRIAの紹介動画

https://www.youtube.com/watch?v=RWhaWtWtTvs (2分)

※musicalviennaVBWの公式動画より。最後の方に出てくる初老の男性はおそらくメルビッシュ湖上音楽祭のハラルド・セラフィンさんでは?声がそっくり。

 

 

実はこの時間帯は、今回の旅行で「どうしようか?」と最後まで悩んで検討していた枠でした。同時刻に、ウィーン国立歌劇場ではバレエのトリプルビル(イリ・キリアン振付のストラヴィンスキー/詩篇交響曲など)、アン・デア・ウィーン劇場ではヘンデル/リナルド(演奏会形式)の公演があったからです。そりゃ悩みますよね(笑)。ウィーンって本当に凄い!

 

しかし、冬の旅行のニューヨークのブロードウェイでミュージカルを9本観て、東京で劇団四季のパリのアメリカ人も2回観て、今年の流れは完全にミュージカル。ぜひウィーンでもミュージカルを観よう!と、このミュージカルを選択したものでした。これがもう大当たり!

 

結局この日は、最高のウィーン・フィルに、最高のI AM FROM AUSTRIA!素晴らし過ぎるぞ、ウィーン!素晴らし過ぎるぞ、オーストリア!

 

 

 

(写真)ミュージカル観劇のお土産はエドラートルテのマグネット(笑)。こういう関連グッズを作ってしまうセンスが本当に好き。

 

(写真)最寄りの地下鉄駅にもI AM FROM AUSTRIAのポスターが!