ペーザロ・ロッシーニ音楽祭2日目。この日はロッシーニの隠れたファルサの傑作、アディーナを観に行きました。
ROSSINI OPERA FESTIVAL
ROSSINI
ADINA
(Teatro Rossini)
Direttore: DIEGO MATHEUZ
Regia: ROSETTA CUCCHI
Scene: TIZIANO SANTI
Costumi: CLAUDIA PERNIGOTTI
Luci: DANIELE NALDI
Califo: VITO PRIANTE
Adina: LISETTE OROPESA
Selimo: LEVY SEKGAPANE
Alì: MATTEO MACCHIONI
Mustafà: DAVIDE GIANGREGORIO
CORO DEL TEATRO DELLA FORTUNA M. AGOSTINI
Maestro del Coro: MIRCA ROSCIANI
ORCHESTRA SINFONICA G. ROSSINI
(写真)アディーナのプログラム
(写真)会場のテアトロ・ロッシーニ
アディーナのストーリーは明快です。バグダッドの王様カリーフォは後宮で育ったアディーナと結婚する予定。しかしアディーナの前に、死んだと思っていた恋人セリーモが突如現れます。アディーナは結婚を迷い、カリーフォに結婚式の一日延期を申し出ます。当惑するカリーフォ。
その夜、セリーモはアディーナと逃亡を企てますが、カリーフォたちに捕まります。死刑を宣告されるセリーモ。アディーナは命乞いしますが、カリーフォは拒絶し、アディーナは失神。カリーフォが介抱すると、身に付けているものから、何とアディーナが実の娘であることが発覚!(笑) アディーナはカリーフォと親子の対面、セリーモとハッピーエンドとなる物語です。
なお、このアディーナの予習にも、日本ロッシーニ協会のウェブサイトが非常に参考になりました。お礼の気持ちを伝えられればと思います。
会場はテアトロ・ロッシーニ。ペーザロの鉄道駅とポポロ広場の間にある、まちなかの小さな歌劇場です。座席数は850なので、新国立劇場の中劇場とほぼ同じ。しかし、造りは5階まである本格的な歌劇場で、装飾などは本当に見事。小さな珠玉の歌劇場、と言った感じです。
始まる前から大きな金管楽器の役者さんが客席をドタバタで横切って行って(笑)早くも楽しい予感。幕にはアディーナ&カリーフォ、結婚おめでとう、の文字。幕が開くと、巨大な3段重ねの水色のケーキの家がど~んと鎮座するとても楽しそうな舞台です。
序曲が始まりました。序曲からいろいろな演技が付いていて楽しい!カリーフォの早口言葉の歌。ロッシーニ得意の早口言葉の歌きた~!それに合わせて、舞台の全員が2拍子のコミカルな演技をして、超楽しい舞台です!
アディーナは女優風、カヴァティーナ「幸運のいちご」は最初から難しい歌なのにリセッテ・オロペサさんの素晴らしい歌!アディーナにはピンク色の2人の付き人が付きますが、コミカルな演技がとても楽しいです。途中ケーキの上のいちごが空中浮遊する演出も魅せますね。
アディーナとカリーフォの2重唱はしっとり聴かせます。その後のカリーフォのアリアは、ヴィート・プリアンテさんによる深々とした歌が素晴らしかったです。
セリーモのアディーナを想う歌は超絶技巧。途中にハイFが入りました!Levy Sekgapaneさんはググっても日本語が出てこない(笑)くらいの新進の方ですが、昨日のゾライデが超絶素晴らしかったプリティ・イェンデさんといい、ここにきて南アフリカから凄い歌手が出てきています。
アディーナがケーキの家の2階から地上へ脱出する場面は、最初少ない荷物がだんだん増えて、付き人がその重さにワナワナ震えたり、最後に巨大な荷物が出てきて客席から「あー!」と歓声が上がったり、結局その巨大な荷物からはショール1枚しか出てこなかったり(笑)、もう楽しいのなんの!
逃亡を図ったセリーモとアディーナが捕まってしまった後の4重唱も4者とも見事。セリーモの絞首刑をイメージさせる場面では、舞台の上空でロープを使ってのアクロバティックな演出が付きました。
アリによる女の人を揶揄するアリアは、見た目といい、演技といい、雰囲気が画家のサルヴァドーレ・ダリに似ています。そう言えば、このケーキの家の舞台は、あたかもスペインのフィゲラスにあるダリ美術館から出てきたかのようです。
最後のアディーナの喜びを歌う長いアリアも、リセッテ・オロペサさん見事に決めていました!幕が降りると冒頭と同じ幕が降りてきましたが、文言がアディーナ&カリーフォのままなので、黙り役の方が気付いて剥ぎ取ると、結婚おめでとう!アディーナ&セリーモの文字が出てきました!最後まで楽しい舞台!
最高に楽しい公演にテアトロ・ロッシーニはやんやの喝采!昨日のセリアも素晴らしかったですが、今日のファルサもロッシーニを観る喜び!歌に演技に音楽に舞台に、めっちゃ楽しい公演でした!!!
さて、アディーナは1時間半の短いオペラ。終演後にご飯を食べに行く時間があったので、ペーザロで定評のあるリストランテに繰り出しました。
(写真)シャコのグリーンソースとヴェルディッキオ
シャコは美味しかったですが、もう少し量が欲しかったかも…。このリストランテのヴェルディッキオはコクや苦味が十分あって美味しい!
(写真)牛肉のフィレ ロッシーニ風
ロッシーニを観た後に食べるロッシーニ風のステーキ。これもロッシーニ・イヤーのいい記念になりました。ややパサッとした牛肉にフォアグラが乗ってセオリー通り。赤ワインと合って、非常に美味しかったです。