鈴木雅明さん率いるバッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)のコンサートを聴きに行きました。曲目はいつものバッハではなく、何と!ベートーベン/交響曲第9番です!

 

 

バッハ・コレギウム・ジャパン ベートーベン《第九》

(東京オペラシティ コンサートホール)

 

指揮:鈴木雅明

 

ソプラノ:アン=ヘレン・モーエン

アルト:マリアンネ・ベアーテ・キーラント

テノール:アラン・クレイトン

バス:ニール・デイヴィス

 

合唱&管弦楽:バッハ・コレギウム・ジャパン

 

ベートーベン/交響曲第9番ニ短調《合唱付き》

 

 

 

ベートーベンの第九は日本の年末の風物詩ですが、私はこれまで年末に第九を聴きに行ったことがありません(笑)。どちらかと言うと、普段クラシックを聴きに行かない方々が、クラシックを聴くいいきっかけとなるイベント、という印象を持っているからです。コンサートは盛況でだいたい満席になると聞きますからね。第九を聴いて感動されたら、次は定期演奏会など、他のコンサートにもぜひぜひ足を運ばれてみてください!

 

それと、同じ曲をあまり頻繁に聴き過ぎると、感動が薄れてしまうから、というのも一つの理由です。2013年にクリスティアン・ティーレマン/ウィーン・フィルの怒濤の名演を聴くことができたので、第九は何か特別な時に、ここぞとばかりに聴きに行く曲、という位置づけです。

 

(参考)2013.11.17 クリスティアン・ティーレマン/ウィーン・フィルのベートーベン8番・9番

https://ameblo.jp/franz2013/entry-11699919385.html

 

ということで、第九は頻繁には聴きに行かない曲ですが、鈴木雅明/バッハ・コレギウム・ジャパンの第九となると話は違ってきます。昨年9月に聴いたご子息の鈴木優人さんのモーツァルト/レクイエムも非常に素晴らしかったですが、近年、バッハ以外の領域にも踏み出し、名演を繰り広げているBCJの第九がいったいどんな風になるのか?大いなる期待を持って、聴きに行きました。

 

 

会場に行くと、東京オペラシティのコンサートホールはものの見事な満席。風邪やインフルの流行る時期ですが、ここまでピッチリ埋まって、空いている座席が見当たらないコンサートというのもなかなか珍しい。みなBCJの第九に大いに期待している雰囲気をひしひしと感じます。

 

 

さて、演奏ですが、冒頭の空虚5度の和音からBCJの古(いにしえ)の音色に惹き込まれた第1楽章。BCJらしいキレとメリハリの利いた演奏に魅了された第2楽章。BCJの宗教的な至福の響きにうっとりした第3楽章。さすがの合唱と素晴らしいソリストのみなさんの歌声に唸った第4楽章。BCJならではの独特な魅力に溢れた、異次元の第九でした!

 

私は第九の曲想には、宇宙の生成から人類誕生までのストーリーを連想することがあります。宇宙ができる前の虚無の状態から、ビッグバンを経て、物質が形づくられていく第1楽章。星たちの運行と展開を思わせる第2楽章。地球の生成からコアセルベートを経てゆっくり生き物が形づくられる第3楽章。そしていよいよ人類が誕生して歌声を響かせる第4楽章。

 

今日のBCJの厳粛でどこか懐かしい音色の演奏を聴くと、これらのことを思わずにはいられません。鈴木雅明さんの指揮は比較的速めのテンポで、表現付けとしてはオーソドックスなものに思われましたが、上記のような壮大な曲想を思わせる、内的なスケールが半端なく大きい指揮&演奏でした!

 

 

鈴木雅明さんとBCJの第九、期待通りの素晴らしい演奏でした!やはりバッハの演奏で鍛えられたBCJによるキレとメリハリの利いた演奏は一味違いますね。終演後は、また一つ、特別なコンサートを聴くことのできた喜びでいっぱい。鈴木雅明さん、ソリストのみなさん、BCJのオケと合唱のみなさん、本当にありがとうございました!!!

 

 

(写真)ウィーンのコンツェルトハウスの近くにあるベートーベン像。やはりベートーベンの音楽には特別なものがあります。