尾高忠明さんと大フィルの東京公演を聴きに行きました。大好きな神尾真由子さんのブルッフ、そして尾高忠明さん伝家の宝刀のエルガー、非常に楽しみです!

 

 

大阪フィルハーモニー交響楽団第51回東京定期演奏会

(サントリーホール)

 

指揮:尾高忠明

ヴァイオリン:神尾真由子

 

武満徹/トゥイル・バイ・トワイライト~モートン・フェルドマンの追憶に

ブルッフ/ヴァイオリン協奏曲第1番ト短調

エルガー/交響曲第1番変イ長調

 

 

1曲目は武満徹。武満さんの音楽と言えば、ヴィブラフォンが印象的な夢のような響き、ボヤーンとした音楽で、仕事の後で疲れている平日夜に聴くのは非常に危険です。(過去に意識が飛んだことが何度か、笑)

 

ところがこの曲は曖昧な調性というよりは、ハッキリとした不協和音も聴かれる、どちらかと言うと明晰な音楽でした。金管が目立っていたのも印象的。モートン・フェルドマンの追憶で書かれた曲ということなので、そのうちモートン・フェルドマンも聴いてみよう。

 

 

2曲目はお目当ての神尾真由子さんのブルッフ。第1楽章。冒頭のソロの旋律から惹き込まれます。何という雰囲気のあるヴァイオリン!随所に上気味の大きなヴィブラートを見せて、否が応にも感情の高まりを呼び起こすヴァイオリン。オケも神尾真由子さんに呼応してか迫力の演奏。聴き応え十分の第1楽章!

 

第2楽章。出だしの神尾真由子さんのヴァイオリンはオケともども弱音でたっぷり溜めて、吸い込まれそうな響き!優しさ、儚さ、いじらしさ、様々な感情を呼び起こします。途中の低音は逆に凄みを見せて圧巻のヴァイオリン!R.シュトラウス/アルプス交響曲の山頂の場面に似ている旋律もいいですね。

 

第3楽章。重音による有名な旋律は伸びやかに。この楽章は比較的ストレートな音程、勢いを重視したヴァイオリンでした。楽章によって表現の違いを見せて本当に見事。オケも熱演、分厚い音で盛り上げていました。素晴らしいブルッフ!

 

 

アンコールはパガニーニ/24のカプリースより24番。これもヴィブラートで聴かせるところ、伸びやかなところ、弾けるところ、神尾真由子さんの表現力の多様さ、神気迫るヴァイオリンに大いに唸ったアンコールでした!

 

 

やはり神尾真由子さんのヴァイオリンは特別!時に半音くらい上にヴィブラートをかけるので、振幅の幅が本当に大きくて感動的。これをおそらく、その時のインスピレーションで即興でやっているのではないでしょうか?音程の正確さだけを求めた演奏では決して味わえない情感の込められたヴァイオリン。そして音程の決まっているピアノには残念ながらできない表現。ヴァイオリンの魅力、表現の幅を存分に味わえる、素晴らしいヴァイオリンでした!

 

 

 

後半は2つ目のお目当てのエルガー。交響曲第1番はエルガーの作品の中でも特に好きな曲。何より大英帝国の格調の高さや堂々たる雰囲気を感じます。かの大指揮者ハンス・リヒターが練習の際に「最も偉大な交響曲」と言ったことでも有名ですね。

 

これまで実演で何度も聴いて、毎回感動してきましたが、特に1995年の尾高忠明/BBCウェールズ響の来日公演と、2008年の尾高忠明/N響には大いに感動した思い出があります。そうです!尾高忠明さんがいらっしゃるおかげで、私たちは最高のエルガーを日本で聴くことができるのです!

 

(参考)2017.9.30 尾高忠明/山崎伸子/新日フィルのグレイス・ウィリアムズ&エルガー&ウォルトン

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12316062233.html

※エルガー/交響曲第1番の記事はありませんが、同じくイギリスの傑作交響曲のウォルトン1番を尾高さんで聴いて超感動した記事

 

 

第1楽章。冒頭からのヴィオラが印象的な主題。尾高さんのニュアンスに溢れる指揮にさっそく魅了されます。賑やかで夢のある第1主題。ハープからは早くも第4楽章の主題。すっと引けて何事もなかったように冒頭の主題に戻るところもいいですね。

 

弦の旋律をずり下げたり、低音を強調したり、尾高さんの指揮がピタピタッとはまります。最後、冒頭の主題が帰ってきての盛り上がりは本当に感動的!

 

第2楽章。一転して風雲急を告げる激しい楽章。途中のタータッ、タータッ、タータッ、タン、タン!タン、タン!ここはたっぷり溜めてくれて心揺さぶられます。ツェムリンスキー/人魚姫をも連想させる瑞々しい第2主題。大フィルのきらめきの響きの演奏が素晴らしい。

 

トロンボーンのアクロバティックな合いの手にも痺れます。最後の方では早々と第3楽章の主題が出現。この曲は主題が楽章を超えてあちこち出てくるのが楽しい曲ですね。

 

そして感動の極致の第3楽章。この楽章はもう涙なしでは聴けません…。優しさ、つましさ、凜とした佇まい、いろいろな感情が沸き上がります。エルガー/エニグマ変奏曲のニムロッドと双璧。尾高さんの第1主題はブルッフの第2楽章のようにたっぷりではなく、あっさり目。逆にそれだからこそより一層感じる曲の美しさ。正に至芸!

 

第2主題も美しい!そして切ない。サントリーホールに響く感動の音楽。最後の金管は抑え目で、はるか遠く彼方で鳴っているかのよう。ごく懐かしい響き。至福の時間でした!

 

(参考)エルガー/交響曲第1番変イ長調第3楽章

https://www.youtube.com/watch?v=mzp1dZb_EtM (12分)

※ユーゲント・フィルハーモニカーの公式動画より。

 

第4楽章。第3楽章後半にも出ていた第1主題に始まり、様々な主題が出現しては交錯する複雑な曲。非常に聴き応えがあります。印象的なハープを伴って第1主題が戻ってきた後に、再び第1楽章冒頭の主題が金管の咆吼を引き連れて回帰!その後のめくるめく展開!

 

尾高さんは熱狂だけではなく、格調の高さを感じさせる絶妙のアッチェレランド!最後はたっぷりと鳴らして締めてくれました。素晴らしいエルガー!

 

 

この曲を聴くとかつて旅したイギリスの記憶がよみがえります。王室を抱く格調の高さだったり、ロマンティックな趣きだったり、賑やかなまちなみだったり。イギリスの良いところをギューっと濃縮したような曲のように思います。威風堂々、コックニー、そしてこの交響曲第1番。

 

コンサート後はまるでロンドンを旅したような気分。尾高さん、イギリス音楽の第一人者、さすがの指揮でした!大フィルは初めて聴きましたが、いいオケですね。でかぽめさん、来年1月に尾高さんとスティーヴン・イッサーリスさんとでエルガー/チェロ協奏曲をやるそうなので、聴きに行ってみるといいですよ~!

 

 

 

 

(写真)ロンドンを旅した気分、ということでロンドンでの1ショット。18世紀の建物のクラシックなパブ。古き良きロンドンの趣き。