(NY旅行記の続き)パンケーキと素晴らしい絵画で既にホクホクな気分の中、この旅で2つ目のミュージカルを観に行きました。2017年のトニー賞で、作品賞、オリジナル楽曲賞、主演男優賞など6部門を受賞した、未だに人気沸騰のミュージカル、DEAR EVAN HANSENです!
DEAR EVAN HANSEN
(Music Box Theater)
(Creative)
Book: Steven Levenson
Music and Lyrics: Benj Pasek and Justin Paul
Director: Michael Greif
Choreographer: Danny Mefford
Set Designer: David Korins
Costume Designer: Emily Rebholz
Lighting Designer: Japhy Weideman
Sound Designer: Nevin Steinberg
Projection Designer: Peter Nigrini
Orchestrations: Alex Lacamoire
Musical Director: Ben Cohn
(Cast)
Zoe Murphy: Mallory Bechtel
Alana Beck: Diamond Essence White
Connor Murphy: Alex Boniello
Heidi Hansen: Lisa Brescia
Jared Kleinman: Sky Lakota-Lynch
Larry Murphy: Michael Park
Cynthia Murphy: Garrett Long
Evan Hansen: Michael Lee Brown
(写真)DEAR EVAN HANSENのプログラム
(写真)Music Box Theater。ブロードウェイはタイムズスクエアのすぐそば、45th St.にあります。
まず、あらすじをごく簡単に。主人公のエヴァン・ハンセンは人と接するのが不器用で、友達のいない17歳の高校生。木から落ちて骨折してしまったものの、ギブスに誰からもメッセージを書いてもらえません(最初の写真参照・アメリカでは友人からメッセージを書いてもらうのが一般的とのこと)。セラピストからの示唆で自分自身への手紙を書きますが(このミュージカルのタイトル)、この手紙がもとで、自殺した同級生の両親との交流が始まり、物語は意外な展開を迎えます。
母子家庭で対人恐怖症の主人公設定、子供を自殺で失った両親の葛藤、ネットやSNSという近年の事象を取り扱ったタイムリーさと、大いに魅了されたミュージカル。さすがは2017年のトニー賞を席巻しただけのことがある、素晴らしい作品でした!特に印象的だったのは以下の通りです。
◯まずは冒頭の舞台。エヴァンの部屋ですが、ベッドの上にPC、背景は大きなスマホのスクリーンがいくつも並んで、その画面が次々とスクロール。電子音もいろいろ鳴って、エヴァンはネット空間で暮らしている印象です。
このミュージカルでは後半、嘘の作り話をSNSで流したことが発覚して大問題となりますが、最近ネットやSNSとの距離感やバランスで、かなり思うところのある私には、こういうことは、このミュージカルほどではなくとも、いろいろなレベルであり得ること(つまりネットは便利な一方で、偽りや的外れ、恣意的な情報も多い)なので、非常に得るところの多いミュージカルでした。
◯最初のエヴァンとコナーの両親とのやりとり。エヴァンは自殺した同級生のコナーの両親を喜ばせたくて、流れでコナーの親友だったと嘘を付きますが(いきさつがあって、コナーがエヴァンが自分あてに書いた手紙を持っていたため)、喜ぶ両親を見て、さらに嘘を広げていきます。
見た感じでは、エヴァンに非があるというよりは、両親に迫られて仕方なく嘘を付いた、という印象を持ちました。コナーの母親から大いに感謝されるエヴァン。嘘がいけないことは分かっていますが、ここは心温まるシーンでした。
◯エヴァンがコナーの妹ゾーイに、自分の思いを話さなかったコナーが、妹のことをどんな風に思っていたかを伝えるシーン。エヴァンは実はゾーイのことが好きなので、コナーから聞いていたことにして、さりげなくゾーイのチャームポイントを言っていきます。嘘を重ねるエヴァンですが、話される内容自体はエヴァンの真の気持ち、という不思議なシーン。最後はいい雰囲気になるも、この段階では結ばれないエヴァン。なお、ゾーイ役の役者さんがめっちゃ可愛かった件(笑)。
◯エヴァンはコナーが人びとから忘れられないように、仲間2人とともにコナー・プロジェクトを立ち上げます。そしてコナーへの想いのスピーチをSNSで流したところ、多くの支持を得て、エヴァンは時のひとになります。スピーチは最初は紙を見ながらでたどたどしかったですが、途中から紙なしで自分の言葉でスピーチしたところ、逆に感動的。嘘ではあっても、人とやりとりするのが不器用なエヴァンの成長には、何か心温まるものを感じます。
◯その後は嘘が破綻して、実はコナーの友人ではなかったと嘘を自ら告白して、コナーの両親とも断絶し、コナー・プロジェクトも世間から非難を浴びます。しかし、最後は喧嘩した母親との和解と告白、嘘を付かないで素直に自分らしく生きることの素晴らしさを理解、コナー・プロジェクトで植えられた若い木(嘘の逸話から)を、それを理解した上でコナーの家族が見に来ていることを知り、ゾーイともわずかばかりの希望を残して終わりました。
嘘で固めた世界から、結局は元に戻ってしまいますが、エヴァンが成長したり、コナーの家族にもコナーを失った悲しみから変化が訪れたり、大切な教訓が得られたり、随所にトニー賞の楽曲賞を受賞した素晴らしい音楽(ポップス中心・特に第2曲目が素晴らしかった!)もあり、非常に見応えのあるミュージカルでした!
(参考)DEAR EVAN HANSENのダイジェスト
https://www.youtube.com/watch?v=jEmPrKxN3vk (2分)
※Broadwaycomの公式動画より
さすが大人気のミュージカル、特に若者たちに非常に受けていてみなノリノリ、そして共感。エヴァン・ハンセン人形を持って観劇に来ていたお兄さんまでいました。私の前のお姉さんに至っては、ジョークがツボにはまったようで、信じられないくらいの大笑いをかましていました!(笑) ブロードウェイで観るミュージカルは、観客のリアクションも含めてめっちゃ楽しいです!
(参考)2018.12.27 ブロードウェイ・ミュージカル/ONCE ON THIS ISLAND