アストル・ピアソラの生涯を追ったドキュメンタリー映画「ピアソラ 永遠のリベルタンゴ」の公開が始まったので、さっそく観に行きました。

 

 

 

ピアソラ 永遠のリベルタンゴ

~ アストル・ピアソラ没後25周年記念作品 ~

 

出演:アストル・ピアソラ、ダニエル・ピアソラ、ディアナ・ピアソラ

監督・脚本:ダニエル・ローゼンフェルド

音楽:アストル・ピアソラ

撮影:ラミロ・シビタ

編集:アレハンドロ・ペノピ

サウンド・デザイン:ガスパル・シュウエル、ディエゴ・マルティネス

プロデューサー:フランソワーズ・ガジオ、ダニエル・ローゼンフェルド

製作総指揮:ピエール=オリヴィエ・バルデ、マキシ・デュボワ

共同製作総指揮:マリアノ・ナンテ、ダニエル・ローゼンフェルド

 

(参考)映画の公式サイト

https://piazzolla-movie.jp/

※冒頭に2分の予告編の映像が出てきます。

 

 

 

アストル・ピアソラ(1921-1992)はアルゼンチンの作曲家・バンドネオン奏者。南米の作曲家ではヴィラ=ロボス、ヒナステラなどは聴いたことがあり、特に2009年に東京オペラシティ・コンサートホールがヴィラ=ロボス没後50年記念の企画として、代表作「ブラジル風バッハ」9曲全曲のコンサートを敢行してくれた時には狂喜乱舞して聴きに行き、大いなる感動に包まれました。

 

ピアソラもクラシックのコンサートのプログラムでもたまに見かけることがありますが、これまでなぜか一度も意識して聴いたことがありません?ピアソラの音楽や生涯を体感できる非常にいい機会、ということで観に行ったものです。

 

 

これがピアソラの音楽や生き様を十二分に堪能できる、素晴らしいドキュメンタリー映画!

 

 

ストーリーは、ピアソラの息子のダニエル・ピアソラと娘のディアナ・ピアソラが父親の思い出を辿る形で進みます。ピアソラがバンドネオンを演奏する映像や家族の映像がふんだんに出てきて、非常に見応え、聴き応えがありました! 

 

 

公開が始まったばかりなので詳しい感想は控えますが、いくつか、大きく印象に残ったシーンを。

 

 

まずはサメ釣りのシーン。ピアソラは趣味がサメ釣りだったようで、映画の中で何度か出てきます。この映画の原題も”PIAZZOLLA: The Years of the Shark”。これはピアソラ自体をサメに見立てていて、時代を鋭い歯で切り拓いていって、戦いながら新しい音楽を作っていく、あるいは、周りから理解されない寂しい魚、という印象を持ちました。

 

後年に演奏活動を一時休止して、ゆっくり休養を取るシーン。1日はサメを釣って、1日は作曲した。他の釣り人は私に決して声を掛けなかった。なぜなら、私はサメ釣りをしながら、明日の作曲のことで頭が一杯だったからだ。というようなナレーションが入り、さもありなん(笑)と思いました。

 

 

続いて、パリに留学中、ナディア・ブーランジェに作曲を師事していた時の話。ナディア・ブーランジェはフランスの高名な女性の作曲家・教師です。先月11月のN響定期Cプロではコープランド/オルガン協奏曲が演奏されましたが、ブーランジェはコープランドも教えていて、オルガン協奏曲の初演でオルガンも弾いています。

 

(参考)2018.11.25 広上淳一/鈴木優人/N響のバーバー&コープランド&アイヴズ

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12421585090.html

 

ピアソラが交響曲を作曲して、ブーランジェに見せますが、「いいけど、ピアソラらしさがない。」と。そしてピアソラが実はバンドネオン奏者であることを白状したら、ブーランジェは「タンゴを弾いてみて」とリクエスト。そしてピアソラの弾くバンドネオンを聴いて…、「これこそピアソラよ!タンゴを書きなさい!」とブーランジェは言ったそうです。一時期、タンゴの音楽を捨てようと思っていたピアソラの、作曲の方向性が定まった瞬間でした。

 

 

さて、コンサートでピアソラを意識して聴いたことがなく、真っさらな状態で映画を観に行った私は、ピアソラの名曲の数々に感動しまくりましたが、特にこの1曲にはもうビビビビビッと来ました!それはアディオス・ノニーノ!こんな名曲を今まで知らなくて、本当にゴメンナサイ!と全力で懺悔するレベル(笑)。

 

逆に言えば、映画の中で、ピアソラの父親が亡くなって、父親へ捧げる曲として作曲する流れを観ながら初めて聴けたので、突き抜ける感動、涙ボロボロでした!なお、ピアソラ自身が、どうやってこのような曲を書けたのか全く分らない、と言っていました。

 

(参考)アストル・ピアソラ/アディオス・ノニーノ

https://www.youtube.com/watch?v=RwGObBcXtP8 (9分)

※Fugata Quintetの公式動画より。

 

 

 

アストル・ピアソラのドキュメンタリー映画、大いに感動した映画でした!作曲家の人生はベートーベンやワーグナー(笑)を始め、激動で面白い人生である場合が多いですが、ピアソラの人生も極めて興味深い。アルゼンチンやタンゴが好きな方、バンドネオンやアコーディオンが好きな方はもとより、ジャズやクラシックが好きな方は、とても楽しめる映画だと思います!