今年はレナード・バーンスタイン生誕100周年。数々のコンサートを楽しんできましたが、東京藝術大学に、レニーに関するレクチャー付きのコンサートを聴きに行きました。

 

 

東京藝術大学 演奏藝術センター企画

レナード・バーンスタイン生誕100

藝大プロジェクト2018 「バーンスタインのアメリカ」

作曲家・バーンスタイン

(東京藝術大学奏楽堂)

 

 

(写真)レクチャー&コンサートのプログラム

 

 

 

(1)レクチャー「バーンスタインと/のアメリカ」  

講師:福中 冬子(東京藝術大学音楽学部楽理科教授)

 

まず、東京藝術大学の福中先生によるバーンスタインのレクチャーです。作曲家としてのバーンスタインを振り返る、というよりは、一時期、共産主義に傾倒したバーンスタインとその時代のアメリカ社会、という内容のお話でした。

 

特に気になったお話の概要は以下の通りです。(なお、スピーディなお話だったので、必ずしも言葉通りに起こし切れている訳ではないこと、ご承知おきください。)

 

 

◯バーンスタインが敬愛するアーロン・コープランドの80歳のお祝いのコンサートで、バーンスタインがコープランド/リンカーンの肖像を振った時の映像の紹介(レニーが感極まって泣いている)

◯ニューヨークのリンカーンセンターの起工式で、バーンスタインがコープランド/市民のためのファンファーレを振った時の映像の紹介(粛々と振って、その後の演説もレニーにしては珍しく紙を見ながら淡々と)

→同じ「リンカーン」なのに、どうしてこんなに違うのか?

 

◯バーンスタインはもともとコープランド、セルゲイ・クーセヴィツキー、ジェローム・ロビンス、リリアン・フェルマン、マーク・ブリッツスタインなど、赤狩りの対象となった芸術分野の著名人と近かった。

◯1950年、バーンスタインは右派系雑誌「レッド・チャンネル」で「共産主義のシンパ」としてリスト化された。NYフィルとつながりのあるCBSテレビの報道でもリストに挙がった。

◯バーンスタインは1951年から1956年まで、NYフィルを演奏していない。バーンスタインは作曲で忙しかったから、と言っているが?(フランツ注:私も作曲で忙しかったから、と理解していました。)

◯バーンスタインはジャズが白人のものになろうとする中、ハーバード大学の卒論で、キューバやメキシコ、南米に言及して黒人音楽を評価したり、ウエスト・サイド・ストーリーではマンボ、チャチャ、ブルースを取り上げて、アメリカの多様な文化を表現した。

◯リンカーンセンターは、センターができる前は「NY最悪のスラム街」と言われた場所だったが、ジャズ・クラブがあったり、著名なジャズマンが生まれ育ったり、独自の文化を持っていた。公営住宅の移転に絡んで反対運動も起こった。

 

◯バーンスタインがリンカーンセンターの起工式の指揮や演説でやる気を見せなかったのは、上記のような理念や背景があったと考えられる。

 

 

私はレニーが大好きですが、専らCDで熱く感動的な演奏を聴いて、また佐渡裕さんの本を始め、数々のエピソードを見て聞いてという感じで、必ずしもレニーの生涯を描いた著作をいろいろ読んでいる訳ではありません。

 

それでも、一時期レニーが共産主義に傾倒していたことはもちろん知っていましたが、今日の福中先生のお話は、新しい情報もあり、いろいろ参考になりました。(ただし、赤狩り自体には様々な評価があり、行き過ぎがあったり、必ずしも正しい活動ばかりではなかったようなので、その点は注意が必要だと思います。)

 

 

そしてお話を聞いて、私はますますレニーに惹かれました。

 

何と魅力的な人物なんだろう!!!

 

 

実はレニーの伝記本はかなり以前から何冊も購入だけはしてありますが、まだ一冊も読んでいません(笑)。忙しくて読む暇がないから、ということもありますが、レニーの演奏を聴けば、それだけで十分ではないか?、という思いもあるからです。

 

ただ、レニーの生誕100周年の今年、指揮者バーンスタインとは別に、作曲家バーンスタインとして、レニーの曲を沢山聴いたので、よりレニーのことを知ってみたい、実感してみたい、という思いがここに来て強くなってきました。

 

今年の12月後半は、都内で聴きに行くコンサートの予定が全くなく、時間が取れると思うので、レニーに関する本をいろいろ読んでみようと思います。

 

 

 

(2)コンサート

 

指揮:山下 一史

ソプラノ:西口 彰子

東京藝大シンフォニーオーケストラ

 

レナード・バ-ンスタイン/

《キャンディード》序曲

《キャンディード》より〈美しく着飾って〉

《ウエスト・サイド・ストーリー》より〈シンフォニック・ダンス〉

 

 

後半は東京藝術シンフォニーオーケストラによるレニーのお馴染みの曲の演奏。弾けるキャンディード序曲、西口彰子さんの小芝居付きの歌が素敵だったクネゴンデのアリア、パーカッションや金管が活躍して大迫力だったウエスト・サイド・ストーリーと、非常に楽しめた演奏でした!

 

ウエスト・サイド・ストーリーでは、最初の方のサムウェアと最後のアイ・ハヴ・ア・ラヴで、感動の涙が溢れてきます…。お約束を超えて、もはや伝統芸能の域かも(笑)。アイ・ハヴ・ア・ラヴ、改めて貼っておきますね。

 

(参考)レナード・バーンスタイン/ウェスト・サイド・ストーリーより「ア・ボーイ・ライク・ザット」「アイ・ハヴ・ア・ラヴ」

https://www.youtube.com/watch?v=UEqM5tsbgzg

Gabrielle Howarthさんの公式動画より。3:03からが私の大好きな「アイ・ハヴ・ア・ラヴ」。高校生の公演とは思えない感動的な映像。5:31のシーンは本当にやばい!今回、改めて見返してボロ泣き…。

 

 

ところで今回聴いた東京藝術シンフォニーオーケストラは、東京藝術大学の音楽学部の2~4年生を主体とした、学生さんたちのオーケストラです。あれ!?そうすると、今まで2回聴いた藝大フィル(藝大フィルハーモニア管弦楽団)は?と思ったら、藝大フィルは学生さんもいらっしゃるのかも知れませんが、どうやらOBとOGを主体にしたオーケストラのようです。

 

私、学生さんたちが中心のオーケストラだと思っていましたが(笑)。どおりでクオリティが非常に高い訳です。一方、学生さんたちのオーケストラも、まだ勉強中の学生さんたちということで、粗削りな部分があるのは致し方ありませんが、躍動感溢れる演奏に、とても心洗われました。いずれプロのオーケストラなどで活躍されるようになっても、自分はバーンスタイン生誕100周年にキャンディードとウエスト・サイド・ストーリーを演奏したんだ、と思い出として語れるのは本当にいいですね。

 

 

レニーのレクチャーとコンサートの企画、レニーに関する新たな情報があり、若い学生さんたちの素敵な演奏があり、非常に楽しめました!バーンスタイン生誕100周年は残り2ヶ月半ですが、まだまだ楽しんでいければと思います。

 

 

 

(参考)2018.8.25 レナード・バーンスタイン生誕100周年(レニーの誕生日)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12400333561.html