バッハの大家トン・コープマンさんが手兵のアムステルダム・バロック管弦楽団&合唱団と来日された公演、バッハの大曲、ミサ曲ロ短調のコンサートを聴きに行きました。

 

 

アムステルダム・バロック管弦楽団&合唱団

(すみだトリフォニーホール)

 

指揮・オルガン:トン・コープマン

ソプラノ:マルタ・ボス

カウンターテナー:マルテン・エンゲルチェズ

テナー:ティルマン・リヒディ

バス:クラウス・メルテンス

アムステルダム・バロック管弦楽団

アムステルダム・バロック合唱団

 

J.S.バッハ/フーガ ト短調BWV578《小フーガ》

J.S.バッハ/ミサ曲ロ短調BWV232

 

 

トン・コープマンさんとアムステルダム・バロック管弦楽団の演奏はこれまで何度も聴いています。初めて聴いたのは来日公演でのバッハ/ブランデンブルグ協奏曲全曲。その熱いバッハに非常に魅了された公演でした。

 

そして、強く思い出に残っているのは、2009年にオーストリアのアイゼンシュタットで聴いたハイドンの交響曲の数々。85、87、95、96、97、98番。その活き活きとしたハイドンに大いに唸った3つのコンサートでした。

 

今日はバッハの宗教音楽の大曲、ミサ曲ロ短調。もう楽しみしかないコンサートです。

 

 

まずはトン・コープマンさんによるオルガンの演奏がありました。小フーガBWV578。7月にミューザで聴いたコープマンさんのオルガン・リサイタルでも取り上げられた有名な曲です。7月の時と変わらず、大変勢いが良く、弾きっぷりの良い演奏。

 

(参考)2018.7.13 トン・コープマンさんのパイプオルガン・リサイタル

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12390739156.html

 

 

プログラムにはコープマンさんの言葉として、「お客さまはオルガンの音で日常の雑事から離れられます。(中略)一度笑顔になっていただき、それからミサ曲」、とありました。しかし、私はそのストップの音色の選択から、トリフォニーホールを教会に見立ててもらうように、敢えて入れたオルガンの演奏のように感じました。真相は、コープマンさんがトリフォニーホールのオルガンを弾きたかっただけだったりして(笑)。

 

 

そしてミサ曲ですが、演奏前に、コープマンさんからご挨拶が。台風や地震など日本の災害の被害に対するお悔やみの言葉や、札幌公演が中止になってとても残念に思っている、とお話がありました。

 

 

 

第1部「ミサ曲」。キリエ。アムステルダム・バロック管弦楽団は古楽のオケですが、古楽独特の音色を持ちつつも、歯切れよく透明感のある素晴らしい演奏。ソプラノとカウンターテナーの2重唱、合唱と続いてバッハの世界に引き込まれました。

 

第2部「ニケーア信条」。クレード。しばらく合唱や重唱が続いた後、キリストの生涯を簡潔に振り返ります。「(キリストが)埋葬されました」の静かな音楽の後に、「そして三日目によみがえられました」の喜びの音楽!プログラムにも書いてありましたが、素晴らしい対比です。終曲のフーガも晴れやかで大いに魅了されました。

 

第3部「サンクトゥス」。ここも晴れやかな音楽で、特に合唱の高音のきらめきと、G線上のアリアのような伴奏を刻む低弦との対比に聴き惚れました。

 

第4部。オザンナは弾けるような合唱。ベネディクトゥスは味わい深いフルートが魅せました。テノールのしっとりとした歌声にフルートとチェロが呼応して素晴らしいひと時。そして再び続くオザンナの爆発する喜びとのコントラストも見事。

 

アニュス・デイはカウンターテノールがしんみりとしたオルガンをバックに切々と歌われて感動的。最後はドナ・ノーヴィス・パーチェムが優しく穏やかに歌われて終わりました。素晴らしいバッハ!

 

 

 

トン・コープマンさんとアムステルダム・バロック管弦楽団&合唱団のミサ曲ロ短調、それはそれは素晴らしい公演でした!私はバッハの宗教曲の大曲を苦手にしていて、マタイ受難曲もまだ十分親しめている訳ではありませんが、今日のミサ曲ロ短調はかなり楽しめました。

 

 

ご存じの通り、東京ではバッハ・コレギウム・ジャパンの海外でも定評のある素晴らしいバッハを定期的に聴くことができますが、これに加えて、今回のアムステルダム・バロック管弦楽団や10月のフライブルク・バロック・オーケストラなど、素晴らしいバッハ演奏の楽団が度々来られます。

 

東京は世界的に見ても、バッハの最高の演奏を聴くことのできる、とてもいい環境にあるように思います。個人的に必ずしも得意ではないバッハですが、これからもこういった機会をしっかり捉えて、バッハの世界をより楽しんで行ければいいなと思いました。

 

 

最後に、このバッハ/ミサ曲ロ短調は、コープマンさんが冒頭のご挨拶で惜しまれていたように、今回の来日公演では札幌で演奏される機会は残念ながらなくなりました。それでも、今日のこの東京の演奏での平和への祈りが、北海道で今も大変な思いをされている方々に届き、一日も早い復旧が実現するよう、お祈りしたいと思います。

 

 

「そして地には、善意の人々に平和がありますように。」

(バッハ/ミサ曲ロ短調の歌詞より)