小泉和裕さんが都響を振る、ドヴォルザークとグラズノフのコンサートを聴きに行きました。アレクサンドラ・スムさんのヴァイオリンも楽しみです!

 

 

東京都交響楽団第856回定期演奏会Aser.

(東京文化会館大ホール)

 

指揮:小泉和裕

ヴァイオリン:アレクサンドラ・スム

 

ドヴォルザーク/序曲《謝肉祭》

グラズノフ/ヴァイオリン協奏曲イ短調

ドヴォルザーク/交響曲第7番ニ短調

 

 

このコンサートはドヴォルザークの7番が大好きなこと、久しぶりにグラズノフのヴァイオリン協奏曲を聴きたくなったこと、そしてプログラムのまとまり感がとてもいいことからチケットを取りました。

 

 

1曲目はドヴォルザークの謝肉祭。冒頭、弾(はじ)けるような都響の鳴りがとても良くて、グイグイ引き込まれます。長調から短調に変わる、スラヴ舞曲を彷彿とさせるような音楽がとてもいい。ゆっくりになったところのチェロの刻みにも魅了されます。後半、1音ずつ上がっていくところの迫力。最後は走って、都響には珍しく土俗的な響き、あたかもチェコ・フィルのラストの追い込みを聴いているかのようでした!

 

何より、小泉和裕さんの指揮がとてもいい!都響もかなり乗っている印象。7番も非常に期待できます。

 

 

2曲目はグラズノフのヴァイオリン協奏曲。最初のヴァイオリンの旋律はレーガー「ベックリンによる4つの音詩」の第1曲「ヴァイオリンを弾く隠者」に似ていて、しっとり聴かせます。その後の魔法のような眩い音楽はグラズノフならでは。続くヴァイオリンの長い旋律も、アレクサンドラ・スムさん、たっぷり歌っていて魅了されました。短い旋律を木管がリレーする瞬間に痺れます。カデンツァはとても繊細な音楽。

 

そして、後半はワクワクする有名な旋律。途中、ロシアの田舎の踊りを思わせるような音楽が続いて、本当に楽しい!なお、ニュース映像の刷り込みというのは恐ろしく、脳裏に浮かぶロシアの田舎の踊りの情景では、踊っている民族衣装の女性がザギトワさんに、そして、その周りを戯れるワンコが秋田犬のマサルに見えてしまいました(笑)。グロッケンシュピールが緩やかに加速するのがいい!最後も盛り上がって終わりました。

 

 

 

後半はドヴォルザークの7番。ドヴォルザークの交響曲の中で、名曲の9番「新世界」を差し置いて、個人的に一番好きな曲です。プログラムの解説に「ロマン的な交響曲様式と民族表現とが内的に融合」「少し前の1883年に書かれた管弦楽のための愛国的な序曲《フス教徒》に連なる特質が、この第7番では円熟期の確かな筆遣いと音楽的深みのもとに表し出されている」とありましたが、正にそういう印象を持ちます。

 

 

第1楽章。冒頭からの低弦の充実の響き!深く重い響きにゾクゾクきます。第2主題では美しい木管の移ろいにときめきます。小泉さんは旋律を短めに切って、アタックを強くして、雰囲気を出していました。途中のフルートのトリルからのヴァイオリンの高まりが素晴らしい!

 

そして、1音ずつ音を上げながら重厚に進んで行くところに痺れた後、最後の方、高まって長調が短調になり、アッチェレランドをかける場面!都響の充実の響きにもう涙涙…。最後もたっぷりと余韻を持って終わりました。この時点で大いなる感動!何と言う名曲、充実の演奏!

 

第2楽章。冒頭の明朗な音楽の後、すぐさま現れる美しい旋律に魅了されます。ブラームスから「奴のくずかごをあされば交響曲が書ける」と言われたドヴォルザークの面目躍如。息の長い旋律をクラリネット→フルート→ヴァイオリンとつないで、さらに弦がリズムを刻む場面にうっとり。ドヴォルザーク、天才というしかありません!

 

シ~ドシラ、ラソファソ、ソラソファ、ファミレミ、ソファミレ…♪の「ド」をたっぷり強調して、小泉さん、痒いところに手の届く素晴らしい指揮。終わりの鎮まるオーボエの駄目押しの旋律にめちゃ感動…。第2楽章がいかに素晴らしいか、思い知らされた演奏でした!

 

第3楽章。ボヘミアの民族舞曲フリアントの音楽。弾むリズムにウキウキする一方、悲しみもたたえた音楽です。第2主題辺りの弦のぶわっとした膨らみ感が印象的。都響の素晴らしい演奏にひたすら魅了されつつ、ここで気付いたのは、このドヴォルザークの7番は、東京文化会館大ホールの響きに非常に合っているのではないか?ということでした。

 

GWの旅行で、ムジークフェライン(大ホール)でシューベルトの7番「未完成」を聴いて、ものの見事にピッタリ合っていて魅了されましたが、それと同じ感覚。サントリーホールの響きはもちろん素晴らしいですが、ドヴォルザークの7番には残響が豊か過ぎて、旋律がぼやけるかも?東京文化会館大ホールとドヴォルザーク7番。いい組み合わせを見つけました。

 

第4楽章。冒頭からの深刻な響き、それが盛り上がって短調から長調に転換する瞬間の感動!その後、都響の弦が1音1音見得を切って下降するスリリングな瞬間!もう痺れまくります!そして大好きな第2主題。私、ここの旋律の後半のターラララッタッ♪が大好きで、後ろの「ラッタッ」に少しリタルダンドをかけて奏でられるとキュン死します(笑)。今日も無事に計4回キュン死できました。

 

(参考)ドヴォルザーク/交響曲第7番ニ短調。なお、私がキュン死するのは30:56や35:23の「ラッタッ」です。

https://www.youtube.com/watch?v=YwD7JcpRe0w

※hr交響楽団の公式動画より。

 

そして、弦が加速していき、長調から短調に変わった後の摩訶不思議な和声の上下する音楽。それがペースダウンして、クライマックスに突入。ザクザクと弦が派手に刻んだ後、ラストはフランクを思わせる宗教的な調べに。タ~ラ~ラ~♪小泉さん、ここの弦に目一杯力こぶ入れて、その後を壮大なスケール感で描いて、最高のフィナーレでした!もう涙でボロボロです…。

 

 

キタ~!!最高の7番!!

 

 

いや~!めちゃめちゃ感動的な演奏!都響はいつもながらに素晴らしかったですが、小泉和裕さんの骨太で本格派の指揮!心の底から感動しました!都響が非常によく鳴っていて、相性の良さを強く感じました。1991年に聴いたヴァーツラフ・ノイマン/チェコ・フィルの来日公演の7番の演奏を思い起こします。会場からは温かい雰囲気の拍手、ブラヴォーも沢山飛んでいましたね!

 

小泉和裕さんは若い頃、都響の定期会員だった頃によく聴きました。1995年のオール・バルトーク・プロなど、良かった記憶があります。久しぶりに聴きましたが、大きくスケールアップされた印象。こうして欲しい、というところでしっかり表情付けをしていただいて、骨太の本格派の指揮、非常に魅了されました!(いつの間にか、都響の終身名誉指揮者になられていました。)

 

 

現在進行中のGWの旅行の記事では、今後、凄い公演の記事がどんどん出てくる予定です(ほとんど究極とすら言えるコンサートを含む)。しかし、ウィーンまで行かなくても、ここ生まれ育った東京で、昔から親しんできたオーケストラで、日常生活の中で聴きに行くことのできるコンサートで、ここまで素晴らしいコンサートが聴けるのは本当にありがたいことですし、それに素直に感動できることに、大いなる喜びと幸せを感じました。

 

小泉和裕さん、アレクサンドラ・スムさん、そして大熱演の都響のみなさま、本当にありがとうございました!

 

 

 

(写真)アルフォンス・ムハ/ヴィートコフ山の戦いの後

昨年のミュシャ展(国立新美術館)で購入した絵葉書より

 

ドヴォルザークの7番を聴いて、昨年感激したミュシャ展のスラヴ叙事詩の中で、この絵のことを思い出しました。フス派の英雄、ヤン・ジシュカが戦いの後に神に祈りを捧げている場面。もちろん、ムハの絵が違う方向性であることは承知の上ですが、ほどよく第4楽章ラストとシンクロします。

 

(参考)2017.3.24 ミュシャ展 ―スラヴ叙事詩―(国立新美術館)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12259492543.html

 

(参考)2017.5.13 ミュシャ展 ―スラヴ叙事詩―(国立新美術館)(2回目)