今年が生誕350周年となるフランソワ・クープラン、同じく生誕200周年となるシャルル・グノーの名曲を中心とした、フランスの香り豊かなコンサートを聴きに行きました。

 

 

モーリス・ブルグ(Oboe)を迎えて

~フランスのエスプリ―生誕350 年のクープランと生誕200 年のグノーを中心に~

(東京藝術大学奏楽堂)

 

第1部:ヴェルサイユのクープラン

 

フランソワ・クープラン

《趣味の融合 コンセール第7番》

オーボエ:モーリス・ブルグ ヴィオラ・ダ・ガンバ:櫻井

クラヴサン:桒形 亜樹子

 

《クラヴサン曲集 第3巻》第16オルドルより

〈類稀なる気品、またはコンティ〉〈ヒュメン(婚姻の神) 愛〉

〈愛想のよいテレーズ〉〈うわの空〉〈 レティヴィル〉

クラヴサン:桒形 亜樹子

 

《諸国の人々》第1オルドル〈フランス人〉

オーボエ:モーリス・ブルグ ヴァイオリン:二村 裕美

ヴィオラ・ダ・ガンバ:櫻井 茂 ファゴット:水谷 上総

クラヴサン:桒形 亜樹子

 

第2部:フランス管楽器の新たな開花

 

ヴァンサン・ダンディ/シャンソンとダンス

フルート:高木 綾子 オーボエ:荒木 奏美

クラリネット:伊藤 圭 瀧本 千晶 ホルン:信末 碩才 

ファゴット:水谷 上総 渡邊 眞理愛

 

シャルル・グノー/《小交響曲》変ロ長調

フルート:高木 綾子

オーボエ:モーリス・ブルグ 荒木 奏美 

クラリネット:伊藤 圭 瀧本 千晶

ホルン:信末 碩才 鈴木 悠弘 

ファゴット:水谷 上総 渡邊 眞理愛

 

 

このコンサートは4月に他のコンサート会場のチラシで見つけて、特にオペラで親しみのあるグノーの小交響曲を聴きたいと思い、チケットを取ったものです。それと、昨年12月にラモーのチェンバロのコンサートを聴いた際に、アメブロで交流のあるHaruさんからクラヴサン曲集をよく聴いたと伺って、クラヴサン曲集という言葉に興味があったのも1つの理由です。(なお、このコンサートの解説で、クラヴサンとはチェンバロのことであるのを初めて知りました、笑)

 

(参考)2018.12.8 ピエール・アンタイ&スキップ・センペ チェンバロ・デュオ・リサイタル

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12334865698.html

 

 

このコンサートのタイトルになっているモーリス・ブルグさんはフランスのオーボエ奏者。往年の名指揮者シャルル・ミュンシュさんが、1967年設立されたパリ管弦楽団初代音楽監督に就任した際に、首席オーボエ奏者として招いた実力者です。多くのオーボエ奏者を育てた教育者でもあります。

 

ホールに入るとそのモーリス・ブルグさんのプレトークをやっていました。最後の方だけしか聞けませんでしたが、モダン楽器でバロックを演奏することを躊躇しないでほしい、バロック音楽は現代の音楽の基礎になる重要なものだ、とおっしゃっていたのが印象的でした。先週のペルセフォーヌに続いて聞いた、フランス語の響きがとても心地良い。

 

 

そして開演までプログラムを眺めていたら見覚えのあるお顔が!何と、4月に東響のロッシーニ/「絹のはしご」序曲のキレキレのオーボエに魅了された、東響のオーボエのお姉さんこと荒木奏美さんが出演するのです!私がどれだけ荒木奏美さんのレレレレレレレ、シーラソファミレド♪に魅了されたのかは、以下の記事にて。併せて、そのフレーズの動画(練習動画)も見つけました。

 

(参考)2018.4.22 ジョナサン・ノット/福井蔵/東響のロッシーニ&シューベルト

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12370675109.html

 

(参考)上記のコンサートの練習動画。オーボエの手前が荒木奏美さん。2本のオーボエが揃って旋回しながらレレレレレレレ、シーラソファミレド♪を奏でるめちゃめちゃ楽しい光景。これこそ、音楽の喜びに他なりません。

https://twitter.com/Tokyo_Symphony/status/987220244950216704 (21秒)

※東京交響楽団の公式ツイッターより

 

 

前半1曲目は《趣味の融合 コンセール第7番》。オーボエ、ヴィオラ・ダ・ガンバ、クラヴサンにより醸し出される落ち着いた音楽が印象的です。軽快なアルマンド、引きずり感のあるサラバンド、快活なフュゲットが良かったです。フュゲットは「小さなフーガ」の意味。解説に「最終場面では11度の上行音階の応酬という大見得を切るに至る」とありました。う~ん、左手が3オクターヴとか平気で動くスクリャービンを聴き慣れていると、どの辺りが大見得だったのか、よく分からず(笑)。

 

2曲目はクラヴサンのみによる演奏で、《クラヴサン曲集 第3巻》第16オルドルより。どの曲もタイトルと音楽の雰囲気が合っていて、とても魅了されました!「コンティ」の気品、「婚姻の神」の後半の賑やかさ、「うわの空」の楽しさ、「レティヴィル」の充実ぶり。中でも、「愛想のよいテレーズ」は優しさや楽しさ、寂しさなど、いろいろな感情が認められる中、少しミステリアスなところもある音楽でとても魅了されました。

 

3曲目は《諸国の人々》第1オルドル〈フランス人〉。サラバンド→ジーグ→シャコンヌの流れに非常に魅了されました。解説に聴きどころのシャコンヌについて、「シャコンヌまたはパッサカイユ(パッサカリア)」とありました。この「パッサカリア」という単語を見ると、私は即座にブラームス/交響曲第4番第4楽章のことを連想しますが、もとはこの古い時代の音楽です。シャコンヌとパッサカリアは厳密には違いがありますが、かなり混同されてもいるそうです。

 

 

後半1曲目はダンディの《シャンソンとダンス》。最初のシャンソンはパリのシャンソンでなく、風光明媚な地方の歌、という印象。正に、ダンディの代表作、フランスの山人の歌による交響曲と同じ雰囲気を持つ曲、というイメージです。後半のダンスは地方の楽しいダンスの曲かな?と思いましたが、意外にも悲しげな雰囲気の曲でした。タラー、タラーという旋律が印象的。最後は、祈りのように温かくゆっくりと高まって終わって感動的。

 

最後は楽しみにしていたグノー/小交響曲。グノーはこれまでオペラで親しんできて、ファウスト、ロメオとジュリエット、ミレイユを観たことがあります。バーンスタイン(生誕100周年)、ドビュッシー(没後100周年)、ロッシーニ(没後150周年)ばかり意識していて、今年がグノーの生誕200周年というのはノーマークでしたが、今年1月には森麻季さんのリサイタルで、あの有名なアヴェ・マリア含め3曲聴いています。実はいい記念になっていたんですね。

 

(参考)2018.1.31 森麻季さんのソプラノ・リサイタル(アヴェ・マリア&フランス歌曲)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12349038365.html

 

第1楽章。宗教的な雰囲気ですらある温かい調べです。この曲は浸(ひた)っているだけで、本当に心地の良い音楽。第2楽章はフルートの高木綾子さんがほとんどオペラのアリアのような旋律を奏でます。ああ、グノーのオペラを聴きたい!(フラグ?笑) 第4楽章はモーツァルトかハイドンか、というくらいの素朴でウキウキのフィナーレ。みなさんノリノリで演奏されていて、とても楽しめました!

 

 

注目の荒木奏美さんは特にダンディの方で大活躍。ロッシーニに引き続き、活き活きとした素晴らしいオーボエに魅了されますが、吹かれている姿を拝見すると、この方、ほとんど音楽の化身のように思います。愛くるしいルックスも魅力。まだ東京藝術大学大学院修士課程に在籍されている若さですが、これから非常に楽しみ。今後、東響を聴きに行く予定が沢山あります。とても楽しみにしています!

 

 

(追伸)このコンサートのプログラムの前半の解説はクラヴサンを弾かれた、東京藝術大学音楽学部非常勤講師も務められている桒形亜樹子さんによるもの。クープランの曲の解説が、実際に弾かれている印象も含めて非常に面白い。桒形亜樹子さん、演奏は非常に雰囲気のあるクラヴサン、モーリス・ブルグさんのプレトークでは見事なフランス語の逐次通訳もされていて、ただ者ではありません。

 

さて、プログラムの解説の冒頭と、とある生徒(笑)の反応。

 

「去年、『没後400年』ということで日本ではかつて考えられないほど多くのモンテヴェルディの演奏会が行われたのは記憶に新しい。」

⇒は~い、先生!それに便乗して(笑)、昨年モンテヴェルディのコンサートとオペラ3つ聴きに行って、モンテヴェルディの魅力に目覚めることができました!

 

「今日演奏される2人の作曲家、生誕350年のクープランと生誕200年のグノーも、これを機会に新たなファンが増えてくれることを願っている。」

⇒は~い、先生!グノーはもともと好きでしたが、今日の素晴らしいクープランを聴いて、速攻で(笑)クープランもファンになりました!他のクラヴサン曲集の曲も、いろいろ聴いてみようと思います!