今月もシベリウスにブルックナーにと楽しんできた、パーヴォ・ヤルヴィさんがN響を振る定期演奏会。最後、オール・ストラヴィンスキー・プロのコンサートを聴きに行きました。

 

 

NHK交響楽団第1887回定期演奏会Bpro.

(サントリ-ホール)

 

指揮:パーヴォ・ヤルヴィ

 

ストラヴィンスキー/バレエ音楽「ミューズの神を率いるアポロ」

ストラヴィンスキー/バレエ音楽「カルタ遊び」

ストラヴィンスキー/3楽章の交響曲

 

 

先週土曜にアレクサンドル・ラザレフ/日フィルでストラヴィンキー/ペルセフォーヌを聴いて、今日は再びストラヴィンスキーの新古典主義の曲3連発。先週今週と、ちょっとしたストラヴィンスキー祭(笑)となりました。

 

(参考)2018.5.19 アレクサンドル・ラザレフ/日フィルのストラヴィンスキー/ペルセフォーヌ

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12377460110.html

 

 

ところが、その時の記事にも書きましたが、私は「火の鳥」「ペトルーシュカ」「春の祭典」以外のストラヴィンスキーの曲に、今ひとつピンと来ません…。ペルセフォーヌはラザレフ/日フィルの素晴らしい演奏もあり、かなり楽しめたので、その勢いをかって今日の3曲を予習しましたが、何度聴いても曲が全然入って来なくて、全く覚えられません…(泣)。難解な現代音楽もそんなに苦にしていないのにどうして?もしかすると、一番苦手な音楽かも知れません…。開き直って、一発勝負のつもりで聴きに行きました。

 

 

前半は「ミューズの神を率いるアポロ」。私、実はこの曲のバレエをパリ・オペラ座(ガルニエ)で観たことがあります。ジョージ・バランシンの振付。その時は、白を基調とした牧歌的・祝祭的な雰囲気で、シンプルな音楽と踊りがマッチして、とても良かった思い出があります。しかし、それでも音楽の旋律などはよく覚えておらず(笑)。

 

この曲は弦楽だけで演奏されます。冒頭から明朗な調性のシンプルな音楽が続く中、ところどころバルトークやニールセンの和声に行きそうになっては、「や~めた!」と言わんばかりに行かない(笑)。何とも寸止め感満載の音楽です。最後はアポロが3人のミューズたちを率いてパルナッソス山の階梯を上って終わるシーンですが、非常に神妙な音楽で静かに終わり、何ともミステリアスです。

 

聴きながら、ストラヴィンスキーは「春の祭典」を書いた後、もう「春の祭典」の方向で超える曲は書けない、書いたとしても大スキャンダルになってしまった無理解な聴衆が待っている、ということで、この路線に舵を切ったのかな?と感じました。そして、解説に「ロシア民謡に拠らないメロディの探求」とありましたが、逆に、なのであまり心を打たない音楽のように思ってしまいます。いずれにしても、やはりバレエと一緒に聴きたい音楽、という印象を強く持ちました。(すみません、この辺りはストラヴィンスキーの伝記などを読んだことがないので、全くの自由な感想です。)

 

パーヴォさんの指揮は、弦をたっぷり響かせ、ところどころ意味深長な進行が聴かれて(曲が入っていなくても伝わってくる)、さすがだと思いました。音楽は相変わらずピンと来ませんが、よく響くサントリーホールでN響の弦に30分間たっぷり浸れて、非常に心地良いものがありました。

 

 

後半1曲目は「カルタ遊び」。この曲はフル・オーケストラということで、アポロよりは動的な音楽となります。かなり集中して聴きましたが、やはり心に入って来ません…。アポロと同じくバレエが欲しくなります。最後、ロッシーニ/セビリアの理髪師の序曲の音楽が見え隠れするシーンが出てきました。ロッシーニ・イヤーにこの曲を採り上げるのは、パーヴォさんならではのユーモアでしょうか?(笑)

 

最後は「3楽章の交響曲」。冒頭から新古典主義って何?という感じの迫力のある音楽。バルトーク/弦チェレの第2楽章のようなリズミカルなピアノが印象的です。第2楽章はハープと木管の掛け合いがいい感じ。第3楽章は激しい音楽、バーンスタインがよく使うフレーズが垣間見られるような気もしたり。最後は短調で盛り上がった後、急にパッと長調になって終わります。この曲は、動的・劇的な要素があり、とても楽しめました。バレエのために書かれた曲ではなく、交響曲だからかも知れません。

 

 

パーヴォさんとN響のストラヴィンスキー、演奏はいつもながらに素晴らしかったですが、感動した!というよりは、珍しいプログラムを聴けた!というのが正直な感想です。でも、毎回毎回大いなる感動でなく、こういう回があってもいいように思います。

 

N響のBpro.は以前は通好みのプログラムが多く、曲を開拓したり、勉強したりするのにいい機会でしたが、最近はApro.とBpro.とCpro.の区別がそんなにない印象です。席数数が他より少なく、満席がほぼ約束されているサントリーホールのBpro.でこそ、今日のようなプログラムをどんどんやってほしいです。(昨年9月のオール・バルトーク・プロもめちゃめちゃ良かった!)

 

(参考)2017.9.27 パーヴォ・ヤルヴィ/N響のオール・バルトーク・プロ

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12315485089.html

 

 

そして、Bpo.の今後のスケジュールを見ると、来年2月に再びパーヴォさんが指揮するオール・ストラヴィンスキー・プロが!しかも作品番号が若い曲ばかりで、最後が「春の祭典」なので、劇的な音楽を書いていた頃の作品で固められている印象です。今日のプログラムと好対照、対をなす、ということですね!こういうのは本当に魅力的な企画。とても楽しみです!