上岡敏之音楽監督の指揮する新日フィルの定期、モーツァルトとブルックナーという魅力的なプログラムを聴きに行きました。アンヌ・ケフェレックさんのピアノもとても楽しみです!

 

 

新日本フィルハーモニー交響楽団定期演奏会

(サントリーホール)

 

指揮:上岡敏之

ピアノ:アンヌ・ケフェレック

 

モーツァルト/ピアノ協奏曲第24番ハ短調

(アンコール)

ヘンデル(ケンプ編曲)/メヌエット ト短調

 

ブルックナー/交響曲第6番イ長調

(アンコール)

モーツァルト/交響曲第29番イ長調第4楽章

 

 

上岡敏之さんは大胆な表現付けをする指揮者、大好きなタイプです。2007年の手兵のヴッパータール交響楽団との来日公演でのモーツァルト/ピアノ協奏曲第23番イ長調の素晴らしい弾き振り、そして演奏時間90分!(笑)というトンデモ演奏のブルックナー/交響曲第7番ホ長調が懐かしいです。新日フィルの音楽監督に就任されてから、他のコンサートと重なったり、仕事で行けなかったり、なかなか聴きに行きませんでしたが、ようやく実現しました。

 

 

前半はモーツァルトのピアノ協奏曲第24番ハ短調。ご存じモーツァルトの2つの短調のピアノ協奏曲のうちの1つです。アンヌ・ケフェレックさんの、しっとりとした非常に雰囲気のあるピアノ!パリの方ですが、ウィーンで研鑽を積まれていることもあり、こういう素敵なモーツァルトになるのかな?と思いました。

 

この曲はベートーベン的で、デモーニッシュな演奏もありますが、ケフェレックさんのピアノで聴くと、他の長調のピアノ協奏曲と同じ世界観、という印象を持ちます。そして、上岡さんと新日フィルの伴奏がしっくり馴染んでとてもいい!上岡さんご自身ピアノの名手で、前述のようにモーツァルトのピアノ協奏曲も弾かれるので、ツボを押えた、万全のサポートだと思いました。とにかく、終演後にお2人が非常に親密にされていたのが印象的でした。ケフェレックさんの可愛いこと!

 

それにしても、週も後半のクタクタの木曜の夜に聴く、極上のモーツァルトのピアノ協奏曲。仕事の疲れを労ってくれて、明日もう一頑張りしよう、と大いなる癒やしになります。モーツァルトって本当に凄い!

 

 

そして、アンコールはヘンデル(ケンプ編曲)/メヌエット ト短調。これまた絶品のピアノ!聴きながら思ったのは、今さらですが、ピアノという楽器はそこまで強く弾かなくても、大きなサントリーホールでも十分響くんだな、ということです。私はどちらかと言うと、ガンガン弾くピアノなので…、大いに参考になりました。

 

 
 

後半はブルックナーの交響曲第6番。ブルックナーはどの曲も大好きですが、今は0番・1番・2番・6番辺り、比較的マイナーな交響曲にとても惹かれます(特に2番が一番好きかも)。6番は前回聴いたのは2014年のムーティ/ウィーン・フィルの美しい名演。今日は珍しいヴェス編曲版ということですが、上岡さん、どんな風に聴かせるのでしょうか?

 

(参考)2014.8.17 リッカルド・ムーティ/ウィーン・フィルのブルックナー6番(ザルツブルク音楽祭)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-11918024782.html

 

 

第1楽章。もう聴こえないくらいの弱音から入り、上岡さん、冒頭から、やる気満々です(笑)。第1楽章はブルックナーのスイスの汽車旅行の影響の指摘もあるリズミカルな音楽ですが、上岡さん、強弱だったり、溜めたり、随所で上岡節の演奏です。

 

プログラムには、ヴェス編曲版はノヴァーク版に比べると、速度標語や表情の指示がふんだんに記されており、強弱記号やクレッシェンドの位置などにも数多くの差異がある、とありました。ヴェス編曲版を聴かせる、という趣旨では、そもそも上岡さんの指揮は相応しくないように思います。というのも、積極的に表情付けをされる指揮者なので、どこがヴェス編曲版でどこが上岡さんの味付けなのか、よく分からないからです(笑)。

 

う~ん、第1楽章はいろいろと表情付けがなされていたのは分かりますが、それが正直、感動には結び付きませんでした…。第1楽章はそもそも劇的な音楽として書かれているので、そこまでいじらなくても、感動できるからです。却って、細かい表現が、少し小賢しく感じました。

 

第2楽章。この楽章は大きな息づかいで、かなりしっとりとした演奏でした。第2主題の前の音楽を弱音でゆっくり沈めて、めちゃめちゃ感動的!ムーティ/ウィーン・フィルはひたすら美しい音楽でしたが、今日の演奏は美しさとともに、どこかしら諦念も感じました。

 

第3楽章。ヴェス編曲版がノヴァーク版と最も異なるのは、トリオで反復を入れるところですが、そんなに印象は変わりませんでした。この楽章も雰囲気があっていい感じ。

 

第4楽章。冒頭からかなりゆっくりなテンポです。今まで聴いた第4楽章でおそらく最遅。ゆっくりしたテンポから紡ぎ出される音楽の1つ1つが心に迫ってきて、それが何かは差し控えますが、いろいろな情景を思い浮かべて、非常に感動的な演奏!上岡マジックきた~!

 

特に、中間部で木管が悲しげな音楽を吹いた後、第2楽章の主題が回想され、長調から短調になる場面。人の一生、そして宗教。さまざまな想いが交錯して、感動の嵐、今日はここの音楽で涙涙でした…。ラストはスクロヴァチェフスキさんの大伽藍も大好きでしたが、上岡さんは大きく溜めつつ、ティンパニのリズムを工夫して、一味違う終わり方でした。

 

 

いや~、やっぱり上岡さんの指揮はスリリング、めっちゃ楽しめました!第1楽章は正直工夫し過ぎでうるさく感じましたが、第2楽章以降が素晴らしく、特に第4楽章は独特の世界に大いに感動。これだから、上岡さんの指揮は聴き逃せません!(だったら、もっと聴きに行け~、笑)

 

 

そして、ブルックナーの後にも関わらず、アンコールが!モーツァルトの交響曲第29番のフィナーレ。モーツァルトとブルックナーの組み合わせは最高ですね。素晴らしいアンコールでした!(でも、第1楽章にかけて、ハイドンの交響曲第88番のフィナーレという奥の手もありますよ~、笑)

 

 

(写真)私はブルックナー/交響曲6番イ長調からはスイスの自然の息吹を随所に感じます。というか、第1楽章などは、スイスの汽車旅行の印象を、そのまま音楽にしたもの、とすら感じることがあります。写真はジュネーヴからベルンに列車で移動中の一風景。手前がレマン湖、奥がアルプスの山々です。スイスを列車で旅すると、こんな風景が次から次へと出てきます。ブルックナーもスイス旅行できっと大いに魅了されたことでしょう。