素晴らしかった3月26日のクラウス・フロリアン・フォークトさんのハイドン・ブラームス・マーラー・R.シュトラウスのリサイタル。ローエングリンも非常に良かったようですね。私はもう1つのプログラムのリサイタルを聴きに行きました。

 

(参考)2018.3.26 クラウス・フロリアン・フォークトさんのテノール・リサイタルその1

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12363503472.html

 

 

 

東京春祭 歌曲シリーズvol.24

クラウス・フロリアン・フォークト(テノール)Ⅱ

~ シルヴィア・クルーガー(ソプラノ)を迎えて

 

テノール:クラウス・フロリアン・フォークト

ソプラノ:シルヴィア・クルーガー

ピアノ:イェンドリック・シュプリンガー

 

ブラームス/

 太陽はもう照らない

 かわいい恋人よ、素足で来ないで

 日曜日op.47-3

 眠りの精

シューベルト/《美しき水車屋の娘》D795より

 とまれ

 水車屋の花

 いらだち

ブラームス/

 ああ、お母さん、欲しいものがあるの

 お姉さん、私たちはいつ家に帰るの

 甲斐なきセレナーデop.84-4

カールマン/燕のデュエット(喜歌劇《チャールダーシュ侯爵夫人》より)

 

モーツァルト/なんと美しい絵姿(歌劇 《魔笛》K.620より)

プッチーニ/私のいとしいお父さん(歌劇 《ジャンニ・スキッキ》 より)

レハール/

 君はわが心のすべて(喜歌劇 《ほほえみの国》 より)

 愛は地上の天国(喜歌劇 《パガニーニ》 より)

 だれも私ほどおまえを愛した者はいない(喜歌劇 《パガニーニ》 より)

ロイド=ウェバー/スィンク・オブ・ミー(ミュージカル 《オペラ座の怪人》 より)

バーンスタイン:ミュージカル 《ウェスト・サイド物語》 より

 マリア

 トゥナイト

 

(アンコール)

ブラームス/谷の底から

レハール/友よ、人生は生きる価値がある(喜歌劇《ジュティッタ》より)

ブラームス/子守唄

 
 


今日は前半がブラームスとシューベルト、後半がオペレッタとミュージカルの歌のリサイタルです。私のプログをご覧いただいている方にはバレバレですが、(前半も素敵ですが)後半を非常に楽しみにして聴きに行きました。特にレハールとバーンスタインがめっちゃ楽しみです!

 

 
 

最初はブラームス4曲。歌詞の内容に比べて軽快な音楽の「太陽はもう照らない」、貧しい女中の身分違いの恋が実る、という解説の一方、音楽には暗い影が差し、長調になり切らない「かわいい恋人よ、素足で来ないで」、素直に恋に憧れる気持ちが音楽に表れた「日曜日」、クルーガーさんが身振り手振りで子供を寝かしつける「眠りの精」、フォークトさんとクルーガーさんによる素敵な導入です。

 

次はシューベルトの「美しき水車屋の娘」。ここは全てフォークトさんが歌います。水車が回る姿が見えてくるような「とまれ」。ピアノの左手が即興曲op.90-3の和声進行を思わせて、シューベルトは本当に痺れますね!次は「水車屋の花」。この曲は聴いたことあります。フォークトさん、しっとりと歌って素晴らしい!もう夢見心地になります。

 

ピアノが短く刻む「いらだち」。どうしてブラームス→シューベルト→ブラームスなのかな?と思いましたが、「眠りの精」で眠りについて、シューベルトの夢のような世界、「いらだち」で夢から覚めてしまい、再びブラームスに、なのかな?と思いました。ちょっと無理があるか?(笑)

 

シューベルトの後のブラームス。クルーガーさんが母親と娘の2役を歌い分ける「ああ、お母さん、欲しいものがあるの」。クルーガーさんは歌もそうですが、演技がとても素晴らしい!お母さんがたしなめる表情、娘が泣いたり、笑ったりの表情。もの凄い表現力です。これはオペレッタで鍛えられているんでしょうね!泣く表情は、「こうもり」第1幕のアデーレの嘘泣きが練習台?(笑)。

 

「お姉さん、私たちはいつ家に帰るの」は一夜の恋に破れたお姉さんとまだ幼い弟のやりとりをクルーガーさんとフォークトさんが歌います。2人の掛け合いがだんだん重くなっていき、最後クルーガーさんが「ベッドに寝かせてね…墓の下ならもっとすてきなんだけど!」と歌った後、2人の深刻な表情が印象的でした。

 

「甲斐なきセレナーデ」は3月26日のフォークトさんだけのリサイタルでも歌われましたが、今日はクルーガーさんと2人で歌います。こういうのは洒落ていて、本当にいいですね!求愛するフォークトさんをクルーガーさんが袖にするコミカルな歌。私生活でフラれたことはないのではないか?と思わせるフォークトさん、最後、フラれて呆気にとられた表情、頑張っていました(笑)。可愛い美人のクルーガーさん、こちらは袖にする演技はお手のもののような気も?(笑)

 

いや~、素晴らしい前半!と思っていたら、てっきり後半だと思っていたカールマンが始まりました!何と「燕のデュエット」までが前半だったのです。男女の結婚観の違いを歌う楽しい2重唱。ここにカールマンを持ってきたのは、ブラームスの音楽とのつながりを意識させるとともに、それまでの真面目な恋愛の歌から、行き着いたところの、肩の力を抜いた男女の姿を示した感じで、とても考えられたプログラミングだと思いました。

 

 

 

後半はモーツァルト/魔笛「なんと美しい絵姿」から。もうフォークトさんの美しすぎるタミーノ!先週土曜に観たベルリン・コーミッシェ・オーパーのタミーノのタンセル・アクセイベクさんも良かったですが、フォークトさんの歌はやはり特別です。コーミッシェ・オーパーの映像は、恋をして火が燃えて煙が飛び交うような映像でしたが、私はその抽象的な曲線が沢山出てきた映像に、女性への憧れの気持ちを感じました。

 

(参考)2018.4.7 モーツァルト/魔笛(ベルリン・コーミッシェ・オーパー)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12366730001.html

 

次はラウレッタのアリア。クルーガーさんはオペラのアリアも素晴らしい!高音も軽々出して、とても綺麗で情感の込められた歌でした。

 

そして今晩、最も楽しみにしていた、と言っても過言でない、レハール/ほほえみの国の「君はわが心のすべて」。この歌の場合、もっと低く太い声で、内に秘めた情熱を感じさせる歌の方が合うのかもしれませんが、フォークトさんで聴く「君はわが心のすべて」、圧倒的に素晴らしかったです!いや~、いいもの聴けた!なお、今日は歌はありませんでしたが、歌といい、容姿といい、クルーガーさんのリーザはきっと絶品だと思います。

 

(参考)レハール/ほほえみの国より「君はわが心のすべて」

https://www.youtube.com/watch?v=Ajx2-Wwjsj0 (4分)

※テノール歌手Gerard Schneiderさんの公式動画より。ちょっと渋めの独特な歌声、スー・チョンの切ない雰囲気がよく出ていると思います。

 

レハールが続き、次はパガニーニから「愛は地上の天国」。もうクルーガーさんの歌が絶品でした!素晴らしいワルツの歌!最後は愛を力強く歌い上げて感動の嵐!今日はここで涙涙でした…。ワルツって本当にいいものですね。

 

(参考)レハール/パガニーニより「愛は地上の天国」

https://www.youtube.com/watch?v=R06J5UB9Fwg (3分)

※ソプラノ歌手Nina Bernsteinerさんの公式動画より。とても雰囲気のある歌、身振り手振りや笑顔がとてもいいですね。私が涙したワルツは1:11からです

 

なお、「愛は地上の天国」のワルツの歌詞がとてもいいので、以下にご紹介します。

 

愛 それは地上の天国 永遠に続いてほしい!

愛 それは最高の夢 決して消え失せないで!

愛が 私の人生を やさしく包んでほしい

愛こそが 人生を 意味あるものにしてくれるの!

 

愛 それは地上の天国 永遠に続いてほしい!

愛 それは最高の夢 決して消え失せないで!

愛は あらゆる喜びを 贈ってくれる

愛は あらゆる苦悩を 癒やしてくれる

だれの心も 愛の力には 逆らえないの!

 

 

続いてパガニーニの2重唱「だれも私ほどおまえを愛した者はいない」。男女の小粋な掛け合いが楽しい歌です。ほほえみの国はウィーン・フォルクスオーパーで観たことがありますが、パガニーニは残念ながら、まだ実演を観たことがありません。ウィーン、バート・イシュル、メルビッシュ。いずれかの地でいつか必ず観たいと思います。

 

続いて、ミュージカル「オペラ座の怪人」から「スィンク・オブ・ミー」。クルーガーさんはミュージカルの歌も素晴らしい!かなり歌い慣れている印象です。最後のコロラトゥーラもばっちり。珍しいドイツ語の歌詞も結構いい感じでした。

 

そして最後はバーンスタイン/ウエスト・サイド物語からマリアとトゥナイト。マリアは音域的に必ずしもフォークトさんに合っているとは思いませんでしたが(最初に低音が続く)、後半の高音になってのマリアの連呼はさすがでした!何より、フォークトさんのマリアを聴ける喜び!

 

そしてトゥナイト。フォークトさんのトニー、クルーガーさんのマリアという嬉しいコンビの歌!ピアノが最後にサムウェアの旋律を強調して奏でていました。ここまで敢えて書きませんでしたが、実はクルーガーさんはフォークトさんの奥さんなんです!実際のご夫妻によりトゥナイトが歌われて、最後にサムウェアが流れて。希望が遂に実現した、そんな感動の心持ちとなりました!

 

 

アンコールは爽やかで心洗われるブラームス/谷の底では、の後、フォークトさんが2曲目に選んだのは、レハール/ジュディッタより「友よ、人生は生きる価値がある」。ジュディッタきた~!フォークトさん、レハール本当に好きなんですね!妖しい調性が魅力の迫力の歌が本当に素晴らしい!最後は2人によるブラームス/子守唄で優しく締めました。

 

 

フォークトさんのリサイタル、というよりは、クルーガーさんという、もう一人の素晴らしい歌手のお披露目を思わせるリサイタルでした。クルーガーさんはオペレッタの経験の積んで、現在では、オペラ、コンサート、ミュージカルで活躍されているそうですが、オペレッタのキャリアが、歌にしろ、演技にしろ、非常に活きていると思いました。

 

そして、フォークトさんが今は舞台で歌っていないオペレッタを聴けたのも非常に貴重でした。フォークトさんは今日は実は体調が万全ではなさそうでしたが、こうしてキャンセルせずに歌っていただいたのが本当に嬉しい。3月26日より痩せた印象だったので、ローエングリンを2回歌うのは、それだけ過酷なんでしょうね…。そして最後のマリアとトゥナイト。バーンスタイン生誕100周年の今年、また思い出に残るイベントとなりました。

 

 


(写真)会場で購入したフォークトさんの最新のCDはオペレッタとミュージカル。レハールのオペレッタが6曲入っています。フォークトさん、どんだけレハール好きなんでしょう?(笑)そして嬉しいことに、バーンスタイン/ウエスト・サイド・ストーリーは、今日のマリアに加えて、大好きなサムウェアも入っていました!聴くのがとても楽しみです!